Record China 2020年8月1日(土) 5時20分
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中國経済に詳しい中尾武彥?前アジア開発銀行総裁(元財務官)が日本記者クラブで會見し、中國の行動について「國益を前面に出し自己主張を強める姿勢は中國のためにもならない」と指摘した。寫真は會見する同氏。
2020年7月30日、中尾武彥?前アジア開発銀行(ADB)総裁(元財務官、現みずほ総合研究所理事長)が日本記者クラブで會見し、中國について「南シナ海での海洋進出、香港國家安全維持法制定など國益を前面に出し國際社會で自己主張を強める姿勢は、他國や國際社會に問題を投げかけるばかりでなく中國のためにもならない」と指摘。中國と米國などとの分斷が大きくなれば、雙方向の貿易や投資、教育や研究活動を通じて各國と密接な関係を築いてきた中國の発展は阻害されると予想した。
中尾氏はアジアと中國経済に詳しく、このほど『アジア経済はどう変わったか―アジア開発銀行総裁日記』(中央公論新社、2613円)を刊行した。記者會見の要旨は次の通り。
アジアの多くの國がここ數十年に目覚ましい発展を遂げた。その成長の要因として、インフラへの投資、教育や保健など人的資本への投資、マクロ経済の安定、開放的な貿易?投資體制、政府のガバナンス(統(tǒng)治)、政治や治安の安定などの條件が満たされたことなどがあげられる?!弗偿恁梳帷工猊ⅴ弗ⅳ纬砷Lはさらに拡大する。
特に中國の経済力、技術力、全般的な國力の伸長の速度は多くの予想をはるかに上回るものだ。私権の制限のハードルが低く、プライバシー、環(huán)境、安全などの規(guī)制が緩い中國のシステムは、新技術の開発、データの収集、自國企業(yè)の育成などの點で、より分権的な市場経済のシステムより強力であるように見える。
國家主導と結びつけられがちな現在の中國のシステムをどう見ればよいのか。中國は、文化大革命のあと1970年代末に市場経済を活用する改革開放路線を採用し、2001年にはWTO(世界貿易機関)にも加盟して、開放的な貿易?投資體制、グローバル化や高度技術の発展から大きな利益を受けてきた。1992年にトウ小平が改革開放の継続を説いた翌年の1993年には、憲法に「社會主義市場経済」を盛り込んだ。
習近平體制になって1年後に資源配分において「市場が主導的な役割を果たす」ということが明記され、政治面でもより分権的なシステムへ移行するとの期待が持たれた。しかし、その後、政治、経済、社會のあらゆる面で黨の指導性を強化するという方針が明確に出てくるようになり、企業(yè)経営への黨の影響力や國有企業(yè)の合併による強化策などが市場の役割と背反するのではないかという見方が広がっている。
さらに、2015年5月に発表された「中國製造2025」では、次世代情報技術、ロボット、宇宙産業(yè)など10の分野を選んで製造業(yè)の高度化を目指すとされ、國の支援で他國の企業(yè)を上回る競爭力を目指すのはないかという懸念を生んだ。
私は2017年秋、アジア開発銀行総裁としてある中國の高官と意見交換をした際、黨や國家が主導性を強める最近の動きは、市場機能と個々のプレーヤーの自主性を生かして成長してきた中國経済の効率性を損ねることになるのではないか、また、政治體制が他の先進國と異なることもあって、他國の警戒を招き、これも中國経済が成長の基盤としてきたグローバルな貿易や投資の関係を悪化させるのではないかと問いかけたことがある。しかし中國がまだ発展の途上にあるという前提に立っているせいか、あまり深刻に考えていないようにも見えた。
國家主導の色合いが強い経済システムはうまく行くのか。短期的にうまく行くように見えても、長期的には難しいと考える。改革開放以降の中國の発展は、基本的に、市場機能の活用、自由な経済活動に基づくものであった。それらは自由な発想や情報の共有に支えられなければならない。
米國と中國の摩擦が激化し、世界のデカップリング(分離)まで起きている。中國は経済、技術、軍事をはじめ歴然たる大國に成長し、米國に迫っている。こうした中で、南シナ海での海洋進出、香港國家安全維持法制定など國益を前面に出し國際社會で自己主張を強める姿勢は、他國や國際社會に問題を投げかけるばかりでなく中國のためにもならない。中國と米國など他の先進國との間に分斷が大きくなると、雙方向の貿易や投資、教育や研究活動を通じて各國と密接な関係を築いてきた中國の発展は阻害されることになるだろう。(八牧浩行)
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