■新農(nóng)村建設(shè)

【その他の寫真】

2006年に國土資源部は、都市農(nóng)村建設(shè)用地増減リンク制度を試行し始めます。これは農(nóng)村の土地を土地建設(shè)用地にした場合、どこか別の場所に農(nóng)地を用意して、建設(shè)用地の増加と農(nóng)地の減少のバランスをとるというものです。

足らない都市建設(shè)用地をどのようにかき集め、農(nóng)業(yè)用地をどのように維持するのでしょうか？その答えが新農(nóng)村建設(shè)にあります。簡単に言ってしまうと、城鎮(zhèn)（村）レベルで進められる新農(nóng)村建設(shè)とは、農(nóng)民を新しく開発したマンションという一部の地域に移住させ、分散していた農(nóng)民の宅地や行政機関を耕地に転換していくという政策です。

都市化率70％に向けて、不足する2．57平方キロメートルの土地は新農(nóng)村建設(shè)によって生み出す必要があります。農(nóng)民1人當たりの建設(shè)用地が200平方メートルとして計算すると、1．28億人を新農(nóng)村建設(shè)で移住させる必要があります。中國の行政村1つあたりの人口は900人ですので、約14萬村（村莊）にあたる広さになります。中國には現(xiàn)在69．2萬の行政村がありますので、約1/5が新農(nóng)村建設(shè)を積極的に進めないといけないことになります。別の言い方をすると、約1/5の行政村が都市化で消える（小都市に生まれ変わる）運命にあるということです（推計は同じく、葉2013）。

■成都の事例

2007年に成都は都市農(nóng)村一體化総合改革試験區(qū)に指定されました。成都は、土地増減リンク、都市化を市場経済化、民主化したやり方で比較的成功した事例を提供しています（Ye，Yumin and Richard LeGates，Coordinating Urban and Rural Development in China：Learning from Chengdu，Edward Elgar，2013）。

成都の土地増減リンク、都市農(nóng)村一體化の手順は、農(nóng)村で土地の財産権を確定し、それを農(nóng)村財産権取引市場で売買する、というものです。

新農(nóng)村建設(shè)にあたっても、農(nóng)民が財産権をどうするかは農(nóng)民自身に委ねられています。新しくできた街の中心部のマンションに移転することを希望する場合、財産権を取引市場で販売し、現(xiàn)金に変えて移動することが可能です。農(nóng)業(yè)に殘る場合、財産権を販売せずむしろ他の農(nóng)民が売る財産権を購入して、農(nóng)業(yè)の大規(guī)?；蛐肖Δ长趣饪赡埭扦?。

成都の財産権売買と重慶の地票取引の違いは、財産権（重慶の場合は開発権）取引にあたっては、農(nóng)民自らが取引市場に參加できるかです。成都の場合、小規(guī)模な土地であっても農(nóng)民が財産権売買を行うことができます。重慶の場合は、土地區(qū)畫の整理、販売、購入、すべてが國有企業(yè)によって行われ、農(nóng)民が參畫する余地が限られています。したがって、重慶には土地の収容、販売にあたって強制的、強権的になされる可能性が殘っています。成都の場合は、農(nóng)民の意思決定が尊重される形となります。

柳街鎮(zhèn)では、農(nóng)民の意見を聞きながら、鎮(zhèn)の中心部を再開発することになりました。企業(yè)が9800萬元（約16億6000萬円）を投資して、土地整理と新型社區(qū)の建設(shè)に乗り出します。これにより約208ムー（約13．9ヘクタール）の集団建設(shè)用地指標を節(jié)約することができました。その節(jié)約した指標分だけ都市建設(shè)用地が生まれます。鎮(zhèn)中心部の開発が進み、周辺部は現(xiàn)代農(nóng)業(yè)用地として開発されました。

■成都の事例は全國に展開可能か？

2013年11月に開催された第18期三中全會では、農(nóng)村の財産権取引を進めると明記されました。成都の事例を全國に広げる形です。葉裕民によれば、土地増減リンクと都市農(nóng)村一體化で重要なのは基層レベルの民主的意思決定だそうです。

他地域では、國土資源部の指標にしたがって、土地を強制収容し、都市建設(shè)を進める基層政府が多く、これが土地問題と都市化を複雑にしています。直接の原因は基層政府幹部の成績評価が（1）耕地面積は減少させない、（2）建設(shè)用地は増加させない、という二項目が入っているために、政府自らが土地増減リンクと都市農(nóng)村一體化を進めるというインセンティブになっています。農(nóng)民の生活要求を満たすことを考えずに都市化を進めてしまう結(jié)果になります。

結(jié)局、中國の都市化は限られた空間を効率的に利用すること（土地増減リンク）、それにあたっては市場経済化による農(nóng)民の民主的な意思決定の尊重が必要ということになりそうです。

◆筆者プロフィール：岡本信広（おかもと?のぶひろ）

大東文化大學國際関係學部教授。1967年徳島県生まれ。著書に『中國?奇跡的発展の「原則」』アジア経済研究所、『中國の地域経済?空間構(gòu)造と相互依存』日本評論社がある。