バングラデシュ名物と言えばリキシャだ。この名稱はもちろん日本の人力車に由來(lái)している。三輪の自転車に、人や荷物を載せられる座席がついている構(gòu)造だ。座席の後部にはリキシャアートと呼ばれるユニークな絵畫(huà)が描かれている。

【その他の寫(xiě)真】

■最近の若い者は…甘酸っぱいリキシャ?デート

大人ふたりが一般的な乗り方だが、コツを覚えれば三人乗りはあたりまえ。最大4人は乗れる。

若い男女がデートにつかう。座席が小さいのでぴったりくっついて座ることになり密著感を楽しめる。さらに幌をかければ二人きりの空間を楽しむことができる（本當(dāng)は前からみればがら空きなのだがそんなことは気にしない）。

そもそもイスラム社會(huì)では結(jié)婚前の男女がリキシャに二人で乗るなどはもっての外という文化があった。最近の若者は実にけしからん?。à铯筏馊簸r(shí)にやりたかったぞ）などというオッサンたちのつぶやきもなきにしもあらず、である。

■リキシャ、その恐るべき性能

このリキシャ、ただの自転車に座席をつけただけと侮るべからず。推定耐荷重能力はなんと500kgに達(dá)する。というのもリキシャ専用の強(qiáng)靱なタイヤが販売されているほか、車體も鉄フレームの補(bǔ)強(qiáng)がいたる所に入っているのだ。

米や野菜の荷運(yùn)びはもちろん、パンクした小型のバイクを運(yùn)ぶことまである。マイクとアンプとのせれば小型宣伝カーのできあがり。イベントの集客などに使う。

似たような車両としてバンガリと呼ばれるものもある。こちらは座席がついていない、臺(tái)車だけの構(gòu)造だ。貨物専門で最大荷重1トンはあると思われる。

■リキシャワラ、地方出稼ぎ労働者の収入源に

リキシャ運(yùn)転手はベンガル語(yǔ)でリキシャワラと呼ばれている。首都ダッカでリキシャワラは主に地方の出稼ぎ者の仕事だ。彼らは著の身著のままダッカにやってきてリキシャを借りて働くのだが、出身地域別にリキシャ貸し屋がいて胴元的な存在となっている。車を貸すだけではなく、出稼ぎ者に飯とベッドも供給する。

リキシャワラは昔から農(nóng)閑期の出稼ぎ労働者の受け皿として機(jī)能していた。特にスキルを持っていなくても手っ取り早く現(xiàn)金収入を得られる。稼ぎの悪い職業(yè)の代表選手のように思われているが、本人の頑張り次第で日雇いの建設(shè)現(xiàn)場(chǎng)仕事より稼ぐこともできる。

バングラデシュの雇用を支え、生活文化を擔(dān)っているリキシャであるにもかかわらず、交通渋滯の元兇と言われるなどぞんざいな扱いをうけている。もちろん、渋滯の原因を社會(huì)的弱者である彼らに押し付けている一面はある。

■リキシャワラのファッション

リキシャワラの格好は、だいたいルンギとよばれる一枚布のスカートに何日も著替えをしていないよれよれの襟付きシャツ。ルンギの下はノーパン。リキシャにまたがって乗るときにルンギがめくれるのでポロッとみえはしないかとハラハラさせられるが、今のところみえたことはない。

貧乏なリキシャワラは著替えの服をもっていないので同じ服を著たきり。汗ジミに加えてマダラ模様のカビがはえている。しかも暑い中の肉體労働で汗だくなのでリキシャワラの背中からかなりキツイ體臭が漂ってくることもしばしば。彼らの背中から座席まで1メートル程度しかないので逃げ場(chǎng)なしの體臭が襲ってくる。

雨の日にはビニール袋をアタマにかぶって仕事する。全身びしょ濡れでもアタマさえ守っていれば平気らしい。

■リキシャワラに見(jiàn)るバングラデシュの変化

ところが、リキシャワラを取り巻く環(huán)境に最近変化が見(jiàn)える。

リキシャのなり手が減ってきていると最近のリキシャ?オーナーたちが言うのである。労働市場(chǎng)の多様化が進(jìn)んでいて、より條件のいい仕事が選べるようになってきているらしい。

ルンギを著ていないリキシャワラが出現(xiàn)してきている。既製服産業(yè)が盛んなバングラデシュでは何らかの理由で出荷できなかった外國(guó)向け衣料のアウトレット市場(chǎng)があり、そこでかなり安く服が買える。一方、ルンギの価格は高騰し続けていてルンギよりも既製服のほうが安く手に入るようになってきている。

以前はサンダルを買う金もないハダシのリキシャワラがいたが、最近は見(jiàn)かけなくなった。農(nóng)村では10歳に満たないような子どもが、足がペダルに屆かないので三角こぎでリキシャをやっていたりするのを見(jiàn)かけたが、それも見(jiàn)かけなくなった。

清潔なシャツにジーンズ姿で仕事をするリキシャワラを見(jiàn)かけると、何だか違和感を覚えるのだが、その數(shù)は確実に増加してきている。

■イノベーション！電動(dòng)リキシャの登場(chǎng)

さらに、電動(dòng)リキシャの登場(chǎng)である。これまでのリキシャにモーター駆動(dòng)システムをつけたものが2009年頃から出回りだしたのである。通常リキシャを新車で買うと2萬(wàn)5000円程度なのだが、電動(dòng)リキシャは7萬(wàn)円程度で買える。

座席の下にバッテリーを搭載、一晩の充電でほぼ一日中走ることができるという。モーター駆動(dòng)なので低速域でも高トルクを出すことができ、これまでのリキシャの初速の遅さをカバーしている。

最大時(shí)速40kmの高速移動(dòng)が可能で、本來(lái)ならば自動(dòng)車しか走らないはずの道路を高速移動(dòng)中の電動(dòng)リキシャを見(jiàn)かけたりもする。しかし、リキシャの車體のまま最大時(shí)速が伸びているのでブレーキ能力などに問(wèn)題がある。その他にも重心バランスの高さから來(lái)る転倒の可能性など安全性の問(wèn)題は山盛りだが、これも新しいイノベーションの萌芽のサインと見(jiàn)ることもできる。

ノーベル平和賞を受賞したグラミンバンクのモハメド?ユヌスはこの國(guó)の貧困を博物館でしか見(jiàn)られないようにしたいと自伝で述べていたが、かつてのリキシャはこうだったというように博物館に飾られるようになる日が來(lái)るのも案外近いのかもしれない。

◆執(zhí)筆者プロフィール：田中秀喜

1975年生まれ。メーカー勤務(wù)、青年海外協(xié)力隊(duì)、JICA専門家を経てバングラデシュでコンサル業(yè)を起業(yè)。チャイナプラスワンとして注目されながら情報(bào)の少なさから敬遠(yuǎn)されがちなバングラデシュの情報(bào)源となるべく奮闘中。