Record China 2020年9月21日(月) 15時20分
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「なんともスゴい書籍が刊行されたものだ」――。と、これが第一印象。書名は「デスメタルチャイナ:中國メタル大全(世界過激音楽)」。著者は田辺寛氏、版元は「パブリブ」だ。
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「なんともスゴい書籍が刊行されたものだ」――。と、これが第一印象。書名は「デスメタルチャイナ:中國メタル大全(世界過激音楽)」。著者は田辺寛氏、版元は「パブリブ」だ。中國各地に存在している、あるいは存在していたメタルバンドの狀況を1990年ごろにまでさかのぼって、可能な限り丁寧な仕事をして調(diào)査している。その結(jié)果として世に出ることになった。執(zhí)念の1冊と言ってもよいだろう。
【その他の寫真】
本書によれば、「中國ロック史」には、その初期において日本のバンドやミュージシャンが大きく関係している。まず、中國で「ロックの演奏」を最初に始めたのは1970年代末頃に登場した外國人によるアマチュアバンドだった。さらに大きな刺激を與えたのは1980年代初頭のアリスやゴダイゴの中國公演だった。
中國人による中國ロックの生誕年は1986年とされている。崔?。ㄖ袊恁氓螗愆`ル創(chuàng)始者の一人)が多くの歌手が出演する國際平和年の記念コンサートで「一無所有」を初めて披露した年だ。中國人バンドも次々に登場したが、1989年の「天安門事件」で、いったんは火が消えたような狀況になった。その後、中國ロックは1992年ごろから復(fù)活し始めたが、その背景にはファンキー末吉の活動などの影響もあった。
決定的だったのは1997年ごろからのネットの普及だった。2000年を過ぎるとメタルを含めて無數(shù)のバンドが登場する。その流れが現(xiàn)在にも続いているわけだが、比較的短期間に活動しただけで、SNSに情報が殘っているだけのバンドもあり、確認(rèn)作業(yè)は困難を極めるようになったという。
本書の著作に當(dāng)たって、作者は「可能な限り丁寧な仕事をした」と言ってよいだろう。例えば、紹介する各バンドについて活動開始都市を付記している。中國ではこれまでの経緯などによりメタルを含めてのロックの活動が圧倒的に盛んなのは北京とのことだが、本書ではその他の地域のバンドも可能な限り取り上げている。そのことで、見えてくることも多い。
例えば內(nèi)モンゴル自治區(qū)では、モンゴル族によるバンドが「モンゴル色」を取り入れた演奏などを発表している場合が多いという。そして、北部の都市のハイラル市で活動を始めたバンドが、自治區(qū)の中心都市であるフフホトのバンドに匹敵するぐらい多い。2都市の経済や社會活動の規(guī)模を考えれば、特異な現(xiàn)象と言ってよい。ちなみにハイラル市は「モンゴル的な雰囲気」が特に強(qiáng)く殘る地域の一つだ。
バンドへのインタビューをかなり多く収録していることも、本書の特色だ。手際よくまとめられているので、アーティストの肉聲を聞いているような感じすら覚える。
周知のとおり、中國は1980年代初頭ごろから、経済発展の実現(xiàn)を國家運(yùn)営の中核に據(jù)えた。経済が発展すれば、人々の音楽などに対する求めも多様化する。また、経済基盤の充実は多種多様な音楽活動を可能にする。かつての中國の音楽シーンは、政治が管理する「歌舞団」などに獨(dú)占されてきたが、改革開放と同時期にスタートした中國ロックは、民間が一貫して主導(dǎo)してきた。つまりロックの定著は「新たな音楽ジャンルが一つ加わった」以上の意味を持っている。
さて、読者の皆さんは、「中國発の世界のロックスター」が誕生するかどうかについて、どう思われるだろう?!袱ⅳ蓼辚豫螭趣长胜ぁ工人激θ摔啶い猡筏欷胜?。だが、考えてみてほしい。例えばスポーツの世界では、五輪大會などで中國人選手はすでに、メダル獲得の「常連」だ。もちろんスポーツ選手は國家が育成に力を入れている。だから「世界に通用する選手」が登場しやすいことは事実だろう。
一方で、ロックなどのミュージシャンは、民間の世界で市場に「揉まれ」ながら爪を研いでいる。スポーツの世界では、1位、2位と順序が決められていくわけだが、音楽の世界はもっと複雑だ。聴衆(zhòng)の好みは多様で、演奏側(cè)の個性も多様だ。そんな多様な世界で、より多くの人々の心をつかんだ存在が「スター」になっていくわけだ。
中國社會はもとより多様だ。世界からの情報を入手することも、以前に比べればずっと容易になった。ミュージシャンが獨(dú)自の個性を獲得していく條件は整ってきた。ましてや、中國ほどの人口があれば、優(yōu)秀な才能を持つ人材には事欠かないはずだ。つまり、「中國発の世界のスター」が登場してもおかしくない狀況になっていると思うのだが、どうだろう。
そんな「スター」が登場することになれば、この1冊は「なるほど、この人が大成功したのか」などと、中國のロックシーンを改めて概観するために、最高の手引きになるに違いない。(如月隼人)
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