<コラム>HSBCショックに揺れる香港市民投資家

野上和月    2020年10月6日(火) 7時(shí)50分

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「まるで米中対立に巻き込まれて翻弄されている香港人のようだ」「今は買うチャンスなのか?」。最近、香港市民の間で、英系金融大手、HSBCホールディングスの株式を巡って、こんな話題で持ちきりだ。

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「まるで米中対立に巻き込まれて翻弄されている香港人のようだ」「今は買うチャンスなのか?」。最近、香港市民の間で、香港株式市場に上場している英系金融大手、HSBCホールディングス(5)の株式を巡って、こんな話題で持ちきりだ。市民投資家にとって長年魅力的だったこの株が、英國の金融政策や激化する米中冷戦などに巻き込まれ、株価が25年ぶりの安値水準(zhǔn)まで落ち込んだことは、人ごとではないからだ。

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HSBCは今でこそ本社を英國に置くが、そのルーツは1865年に香港で設(shè)立した香港上海銀行だ。多角化と國際化を進(jìn)める中で92年に持ち株會(huì)社化して、HSBCとなり、本社を香港からロンドンに移した。

香港株式市場には、ロンドン市場とともに1991年に上場。以來、株式投資好きな香港市民の間で、高配當(dāng)で安定した香港ゆかりの超優(yōu)良株として愛されてきた。老後の年金がわりに同社の株を保有する市民も少なくない。それほど市民生活と密接だ。

しかし、今年に入って狀況は一転。世界的な新型コロナウイルス流行による景気後退のみならず、英米―中國間の香港問題をめぐる対立や、米中冷戦といった政治的対立に巻き込まれて、株価は続落の一途だ。年初は60香港ドル(約814円)前後だった株価が、先月には遂に30香港ドル(約407円)を割り込み、27.5香港ドル(約373円)まで落ち込んだ。香港市民の間で、HSBCショックが走り、怒りや失望、憂いなどが渦巻いている。

 

同社は、本社がロンドンにあるから英イングランド銀行(中央銀行)の金融政策に従わねばならない。進(jìn)出國?地域の金融規(guī)則も遵守しなければならない。一方、同社の収益の半分以上は香港と中國本土によるものだから、中國政府の意向も無視できない。こうした中、板挾み狀態(tài)に陥り、売り圧力にさらされているのだ。

4月、配當(dāng)を支払う直前に、英中央銀行から株主還元に待ったをかけられた。新型コロナによる不良債権の増加などを警戒して備えを厚くするよう英系銀行が一斉に要請(qǐng)されたもので、同社も年內(nèi)の配當(dāng)を中止した。投資家の怒りと失望売りが殺到し、株価は約11年ぶりの安値まで落ち込んだ。

5月に入ると今度は、中國政府の政策のあおりを受けた。中國政府が打ち出した、反體制活動(dòng)を取り締まる「香港國家安全維持法」の法制化に、香港の財(cái)閥企業(yè)らが次々と賛同すると、HSBCも意思表示を迫られる格好となり、香港人トップが街頭で、法案支持に署名した。すると、この法制化に反対する英米から、強(qiáng)く非難され、政治的に板挾みとなったのだ。

さらに9月には米中からパンチを受ける。米中冷戦が一段とエスカレートする中で、中國政府が國家安全保障を損なう外國企業(yè)や個(gè)人に制裁を科すリストにHSBCが入る可能性があると、中國メディアが伝えた。これとほぼ同時(shí)期に、米國では、財(cái)務(wù)省の內(nèi)部文書が流出し、違法なマネーロンダリング(資金洗浄)に利用されていた大手金融機(jī)関の一社として同社の名前も挙がったのだ。

HSBCは、外資系金融機(jī)関として初めて中國國內(nèi)で人民元業(yè)務(wù)を認(rèn)められるなど、以前は中國政府と良好な関係だった。しかし、同社が中國の通信機(jī)器最大手「華為技術(shù)(ファーウェイ)」に関する情報(bào)を米當(dāng)局に提出したことから関係が悪化。中國政府は、同社が「悪意を持って」関與したことが孟晩舟?副會(huì)長兼最高財(cái)務(wù)責(zé)任者(CFO)の逮捕に繋がったと強(qiáng)く非難している。もし、情報(bào)通り、同社が中國の制裁リストに入れば、中國ビジネスで計(jì)り知れないダメージを受けることになる。

一方、マネロンに関しては、ポンジ?スキームと言われる投資詐欺と知りつつ巨額の資金移転をした疑いで調(diào)査されている最中で、場合によっては罰金を科される可能性があるという。

この2つのニュースで、株式は一段と売られ、香港市民が大きな目安にしていた28香港ドル(約380円)を割り込んだ。

翌日の地元紙はHSBC一色となり、香港人の友人たちも「買値の半分以下となったが、HSBCを信じて今は我慢する」、「配當(dāng)が再開すれば株価は戻るだろう」とか、「もはや將來性がない」、「見切り売りした」など、この話題で持ち切りだった。

その後、中國の大手保険會(huì)社、平安保険(2318)傘下の平安資産管理が、約3億香港ドル(約41億円)を投じて株式を買い増し、持ち株比率8%で筆頭株主になったことが明らかになると、株価は31香港ドル(約421円)臺(tái)まで反発した。今は30香港ドル前後で推移している。

ちまたでは、HSBCはこの難局を乗り越えるために、再び本社を香港に戻すべきだとか、香港?中國事業(yè)を分社化してはどうか、といった聲も聞かれる。目の前に積みあがる危機(jī)を、同社はどう乗り切るのか。機(jī)関投資家のみならず、香港市民も大いに注視している。(了)

■筆者プロフィール:野上和月

1995年から香港在住。日本で産業(yè)経済紙記者、香港で在港邦人向け出版社の副編集長を経て、金融機(jī)関に勤務(wù)。1987年に中國と香港を旅行し、西洋文化と中國文化が共存する香港の魅力に取りつかれ、中國返還を見たくて來港した。新聞や雑誌に香港に関するコラムを執(zhí)筆。読売新聞の衛(wèi)星版(アジア圏向け紙面)では約20年間、寫真付きコラムを掲載した。2022年に電子書籍「香港街角ノート 日常から見つめた返還後25年の記録」(幻冬舎ルネッサンス刊)を出版。

ブログ:香港時(shí)間
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