広告業(yè)界の専門サイト「青瓜伝媒」は、2021年の「電子商務(wù)市場趨勢予測」を発表した。ネット通販界の今後を論じたレポートだが、その中に、KOL営業(yè)からKOC営業(yè)への変化、という項(xiàng)目がある。あまり聞きなれないKOCとは、一體何のことだろうか。

■KOCとは何か

KOC（Key Opinion Consumer）とは、 KOL（Key Opinion Leader）に対置する概念である。

KOLとは、もともと製薬業(yè)界で薬の採用に影響力を持つ、有力な醫(yī)師を指した。それが中華圏において、ライブコマースの発展とともに、あらゆる産業(yè)分野へ拡大した。2020年は、そのライブコマースの爆発した年だった。トップKOLはそのビジネスモデルの花形である。2020年の雙11（11月11日獨(dú)身の日セール）でも主役を張った。

現(xiàn)在は、管理強(qiáng)化政策が発動(dòng)され、著名KOLの誇大広告がやり玉に上がるなど、急成長の反動(dòng)から逆風(fēng)が吹き始めた。これもKOCが注目される理由の1つかも知れない。

KOCとは、影響力のある意見を持つ友人、ファン、消費(fèi)者らを指す。KOLに比べれば影響力は限られる。特徴は専門性が高いこと、コストのかからないことだ。KOC自身、消費(fèi)者であり、制作コンテンツは、実體験の範(fàn)囲にとどまる。しかし多くのKOCは、SNSの「微博」「微信」、短視頻の「抖音」や「快手」、複合アプリ「小紅書」動(dòng)畫視聴アプリ「bilibili」などへの投稿で、一定のファン、影響力、信頼関係を持っている。KOCの立ち位置は、KOLと一般大衆(zhòng)との間だろう。

■メディアの考える2021年のKOC

青瓜伝媒は、KOCブームを次のように分析している。

まずKOLに対する不信だ。ブランド企業(yè)から“後援”を受けているため、彼らの発する情報(bào)はストレートに信用できない。もともと中國社會(huì)は、信頼するのはまず身內(nèi)で、その意見は大きな影響力を持つ。KOCには、公正な目線での商品レビューが期待でき、信頼を寄せるKOCは、オンライン上の身內(nèi)といってよい。

例えば新しい母親は、ベビー用品を選ぶとき、両親、友人や、他の経験者にアドバイスを求める。さらに意見がほしいとき、KOCの動(dòng)畫やコメントを參考にする。KOCとその所屬コミュニティは、こうして消費(fèi)者の日常に寄り添い、その需要はますます高まっている。成功例は「完美日記」である。

■完美日記（Perfect Diary）とは

完美日記は、広州逸仙電子商務(wù)公司（2016年設(shè)立）のコスメティックスブランド名である。創(chuàng)業(yè)者の黃錦峰氏はハーバード大學(xué)出身、P＆Gに籍をおいていたエリートだ。

2017年3月、アリババに天貓旗艦店を出店、9月、小紅書に公式アカウント開設(shè)した。

2018年を通して、小紅書、WeChatを中心にプロモーションを展開“國産コスメブーム”を演出。

2019年1月、広州市に初のオフライン店舗出店。11月、雙11（11月11日獨(dú)身の日セール）売り上げ1億元（15億1000萬円）突破、海外ブランド抑えコスメ部門の売り上げトップに。

黃錦峰氏は資金調(diào)達(dá)にも辣腕をふるい、短期間に國産コスメブランドの象徴に成長した。そして2020年11月20日、広州逸仙は、ニューヨーク市場への上場を果たす。設(shè)立わずか4年後だった。

■完美日記の戦略「小紅書」

急成長の秘訣は、ダイレクト消費(fèi)者にコミュニケーションをとる手法、DTC（Direct To Consumer）にある?！感〖t書」はその中心プラットフォームだ。直近のレポートによれば、女性ユーザー比率88．4％、90后以降の若者比率は70％である。

完美日記の小紅書におけるマーケティングでは、3段階を経て、コミュニティの拡大と再生産を目指す。

1．大スターの投入により、消費(fèi)者の関心を引き、製品に関する討論を起こす。

2．トップ、ミドルのKOLを中心に、試塗りや他色との比較など、実際の色彩感を紹介し、購買に結(jié)び付ける。

3．購入後、小紅書に製品使用體験をアップしてもらい、洗練された2次コミュニティを形成する。

そして完美日記の考える最適な構(gòu)成とは、1は1人または2人、2は50～100人、3は200～300人という。KOCは3に相當(dāng)し、コミュニティ拡大再生産の要である。

■完美日記の戦略「bilibili」

bilibiliはACG（Animation Comic Game）コンテンツの供給からスタートした?，F(xiàn)在は作品の制作、クリエーターの育成に力を入れ、高品質(zhì)コンテンツのエコシステムを構(gòu)築しつつある。7000を超えるサークルで、多文化コミュニティを形成している。ユーザーの81．7％が1990～2009年生まれ、そして50％が北京、上海、広州など大都市の大學(xué)生、中高生である。

bilibiliの美容コミュニティには、數(shù)萬～數(shù)十萬のファンをもつUP主（アップローダー）が多數(shù)存在する。學(xué)生にシェアしてもらうことに喜びを感じる人も多い。完美日記は、このポイントをよく押さえ、セグメント化し、コミュニティを効率運(yùn)営している?，F(xiàn)在1000以上の完美日記の関連コミュニティがあり、KOCとして、ビューティーコンサルタントの役割を擔(dān)っている。

■ネット流行語“種草”とは

中國ネット界では“種草”というネット用語が流行している。草を植える意味だが、ここでは、特定の製品を推奨して、シェアし、他人の購入意欲を刺激することだ。若者向けの視覚的な比喩として、世相にフィット、定著した。こうしたKOCや“種草”文化形成の中心に位置したのが、完美日記、小紅書、bilibiliらであろう。

2021年は、ますますKOCと“種草”に注目が集まりそうだ。2016年以降、中國のオンラインマーケティングは、細(xì)分化、精緻化する一方だが、特にここ1～2年の変化は、眼にも止まらぬスピードだった。しかし2021年は、當(dāng)局の姿勢次第だが、ブレーキがかかることも考えられる。不確定要素が加わり、ますます、先が読めなくなった。

■筆者プロフィール：高野悠介

1956年生まれ、早稲田大學(xué)教育學(xué)部卒。ユニー株（現(xiàn)パンパシフィック）青島事務(wù)所長、上海事務(wù)所長を歴任、中國貿(mào)易の経験は四半世紀(jì)以上?，F(xiàn)在は中國人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中國最新のB2Cビジネスと中國人家族について、ディ－プな情報(bào)を提供。著書：2001年「繊維王國上?！箹|京図書出版會(huì)、2004年「新?繊維王國青島」東京図書出版會(huì)、2007年「中國の人々の中で」新風(fēng)舎、2014年「中國の一族の中で」Amazon Kindle。