<コラム?莫邦富の情報(bào)潮干狩り>二つのお弁當(dāng)で手に入れたワクチンビジネスの巨大な利権

莫邦富    2021年2月19日(金) 12時(shí)0分

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2月17日から、緊急事態(tài)宣言発令下の日本でも、新型コロナウイルスのワクチンの接種が全國の醫(yī)療機(jī)関で始まった。資料寫真。

2月17日から、緊急事態(tài)宣言発令下の日本でも、新型コロナウイルスワクチンの接種が全國の醫(yī)療機(jī)関で始まった。第一陣の対象となったおよそ4萬人の醫(yī)療従事者は、全國の100カ所の病院で先行して接種を受ける。使われるのは、日本國內(nèi)で初めて承認(rèn)されたアメリカの製薬大手ファイザーのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンで、有効率95%前後と高い予防効果を記録したという。

最近、日本のメディアを見ると、中國のワクチン関連の報(bào)道も多い。中國は武漢で新型コロナウイルスのパンデミックが起きてから、いち早くワクチンの開発に著手していた。いろいろな報(bào)道を見ると、2020年夏から、すでに世界で初めて、國民の一部にワクチンを受けさせているようだ。

現(xiàn)在、中國では開発段階にあるワクチンが16種類だが、一番先を走るのはシノヴァク?バイオテック(科興控股生物技術(shù))とシノファーム(中國醫(yī)薬集団)の2社だ。この2種類のワクチンのいずれも、無毒化したウイルスの一部を投與する不活化ワクチンだ。

ファイザーのmRNAワクチンに対し、中國製不活化ワクチンは相対的に低い有効率が報(bào)告されている。歐米の政治家からメディアまで中國製ワクチンの有効率を疑問視する聲が上がっており、その安全性評価を含めたさらなるデータ開示を中國に求めている。

メディアでも、ファイザーが代表となるmRNAワクチン陣営対中國の不活化ワクチン陣営のような対立図を描いてワクチン関連の報(bào)道を続けている傾向がある。実際のワクチンのビジネス動(dòng)向を見ると、確かにファイザーは巨大な市場であるはずの中國を避けて通るようなワクチン販売作戦を進(jìn)めている。その動(dòng)きは上述した報(bào)道傾向をさらに支持するような効果を強(qiáng)めている。

しかし、結(jié)果から言うと、ファイザーは中國市場に入ろうとしても、その中國に入ることができない。ファイザーが持っているmRNAワクチンの販売権限は大中華圏市場に及ばないからだ。この裏の事情を理解していただくには、まずmRNAワクチンの開発過程を説明しなければならない。

上海復(fù)星醫(yī)薬と獨(dú)バイオンテック

英國では、昨年12月2日にファイザーのワクチンが承認(rèn)され、8日から接種が始まった。20日までに60萬人以上が接種を受けたという。

米國では、同12月11日に、ファイザーのワクチンが米食品醫(yī)薬品局(FDA)から承認(rèn)された。米政府は同ワクチンを1億回分確保しているが、まずは290萬回分を供給する。

日本のメディアではあまり取り上げていないが、実は同12月16日、中國の大手醫(yī)薬會(huì)社?上海復(fù)星醫(yī)薬も通知を公開し、バイオベンチャーの獨(dú)バイオンテック(ドイツ語の発音では、ビオンテック)社が開発するmRNAワクチンに関する提攜プロジェクトの進(jìn)展を報(bào)告すると同時(shí)に、中國醫(yī)薬管理當(dāng)局の承認(rèn)を得た後、少なくとも1億回分のBNT162b2が中國國內(nèi)市場で使用されることと香港がすでに750萬回分近くを輸入したことを表明した。

このワクチンは実は、ファイザーのワクチンとは同一のものである。いったいどうしてこんなことが起こりうるのだろうか?時(shí)間軸を追って事のいきさつを説明しよう。

昨年1月12日、中國當(dāng)局が新型コロナウイルスのゲノム配列情報(bào)を公開した。このウイルスのゲノム配列が分かれば、すべての非伝統(tǒng)的ワクチン研究が本格的に展開できるようになる。バイオンテックはその2週間後の1月27日に、新型コロナウイルスワクチンプロジェクトをスタートさせた。

その2日後の1月29日、復(fù)星醫(yī)薬副総裁で、同社グローバル研究開発擔(dān)當(dāng)総裁でもある回愛民氏は、當(dāng)時(shí)、滯在先の米ボストンから、バイオンテックのワクチン開発チームと初めて電話で交流した。

こうして1週間後、雙方は秘密保持契約に調(diào)印し、具體的な協(xié)力について正式に協(xié)議を開始した。復(fù)星醫(yī)薬はボストンと中國國內(nèi)にそれぞれの研究開発チームを立ち上げ、24時(shí)間リレーで研究作業(yè)を行い、2日間で中國におけるmRNAワクチンの初の臨床研究開発プログラムを作成してバイオンテック側(cè)に提供した。ドイツは効率を重視する國のため、復(fù)星醫(yī)薬チームの効率は、ドイツの會(huì)社に深い印象を殘した。

そこで、復(fù)星醫(yī)薬は來る2月9日に、バイオンテックの共同創(chuàng)業(yè)者でCEOのウグル?サヒン(Ugur Sahin)氏がボストンを電撃訪問するという情報(bào)をキャッチした。サヒン氏の行程は投資家との會(huì)議だけで、復(fù)星醫(yī)薬チームとの面會(huì)は予定されておらず、雙方の協(xié)力に関する打ち合わせを行う時(shí)間的余裕はそもそもなかった。

しかし、1月29日まで、復(fù)星醫(yī)薬がバイオンテックとは何の接觸もなかったことを考え、回氏は現(xiàn)在、両社は提攜交渉を開始しているとは言え、主にビデオ會(huì)議やメールなどでやり取りをしているだけで、フェース?ツー?フェースの交流がなければこれからの交渉を進(jìn)めるのに不利だと判斷し、サヒン氏のボストン訪問を非常に貴重なチャンスとして捉え、その面會(huì)を是が非でも実現(xiàn)しようと働きかけた。

ところが、サヒン氏のスケジュールはあまりにもタイトで、時(shí)間を作ってもらえなかった。こうなると、回氏は、サヒン氏が飛行機(jī)を降りた後、一緒に食事を取りながら話をすることを提案した。その粘り強(qiáng)い働きかけで、食事時(shí)間ではない時(shí)間帯にもかかわらず、サヒン氏はホテルで回氏と會(huì)うことに同意した。

當(dāng)日、回氏はサヒン氏が泊まるホテルの近くのレストランに、夕食用の弁當(dāng)を二つ頼んだ。だが、ホテルで合流した2人は、弁當(dāng)を食べる時(shí)間がほとんどなく、互いの研究開発能力や臨床治験の計(jì)畫など、それぞれの把握したい事項(xiàng)などを質(zhì)問したり、紹介したりして、短い會(huì)合のはずのこの打ち合わせは2時(shí)間以上も続いた。

■加速した交渉、ドラマチックな出來事も

この會(huì)合を経てから、雙方の交渉は一気にスピードアップし、1週間後には協(xié)力意向確認(rèn)書が調(diào)印され、3月13日に、復(fù)星醫(yī)薬はバイオンテックと正式な提攜協(xié)定を締結(jié)した。協(xié)定によれば、バイオンテックは復(fù)星醫(yī)薬の中國での広範(fàn)な臨床開発、mRNAワクチンの中國での発売を共同で推進(jìn)することになった。

そこでとてもドラマチックな出來事が起きた。わずか4日後の3月17日に、バイオンテックはファイザーと提攜協(xié)定を結(jié)んだ。その協(xié)定では、ファイザーは大中華圏以外の市場でのワクチン販売を一手に握ることになっている。なぜファイザーが中國市場を放棄したのかと疑問を呈した海外のメディアがあったが、ファイザー側(cè)は、「中國市場に興味を持っていないのではなく、中國市場がすでにバイオンテックと復(fù)星醫(yī)薬の提攜でカバーされているからだ」と回答した。

ファイザーは新型コロナウイルス問題が発生する前の2018年からすでにバイオンテックとインフルエンザのmRNAワクチンの共同研究を展開していた。バイオンテックとの関係から言えば、復(fù)星醫(yī)薬よりはるかに密接な間柄だ。そのファイザーが數(shù)日でも早くバイオンテックとの提攜協(xié)定の締結(jié)に著手すれば、おそらく中國を含む全世界でのmRNAワクチンの販売権利を手に入れただろう。そうなると、新型コロナウイルスのワクチン分野では、復(fù)星醫(yī)薬の出番がなくなっただろう。

確かに以前からmRNA技術(shù)に対する関心を持った復(fù)星醫(yī)薬はラッキーだった。しかし、こうした幸運(yùn)の女神はビジネスにスピード意識(shí)を持って行動(dòng)する人にだけその微笑みを見せるのだ。あの二つのお弁當(dāng)の功績も大きい。豪華な食事の招待がなくても、質(zhì)素なお弁當(dāng)でも、仕事に熱意を持っていれば、その誠意は相手に伝わり、きちんとビジネスの成功を?qū)Гい皮欷毪韦馈?/p>

バイオンテックとの提攜協(xié)定によれば、復(fù)星醫(yī)薬が手に入れたmRNAワクチンの販売市場は、中國本土のみならず、香港?マカオ?臺(tái)灣も含まれている。

香港政府は今年1月25日に、バイオンテックのmRNAワクチンを承認(rèn)した。同政府が購入した750萬回分のバイオンテック製mRNAワクチンは2月下旬にもドイツから香港に到著し、老人ホームなどで接種が始まる見込みだ。

中國のメディアの報(bào)道によれば、バイオンテックとの提攜のために、復(fù)星醫(yī)薬は最大3500萬ドル(約37億円)のライセンス料を支払うことになっている。また、復(fù)星醫(yī)薬の子會(huì)社である復(fù)星実業(yè)は、バイオンテックが新たに発行する普通株式158萬777株を1株當(dāng)たり31.63ドルの価格で合計(jì)5000萬ドルをつぎ込んで取得した。

バイオンテックの株価は昨年の年末で、100ドルを突破した。つまり、復(fù)星醫(yī)薬はバイオンテックに出資して稼いだお金で、バイオンテックとの提攜により発生した費(fèi)用を十分にカバーできたのだ。今から見ると、復(fù)星醫(yī)薬とバイオンテックの電光石火のような提攜は、まさに神の操作であろう。わずか二つのお弁當(dāng)で、ワクチンビジネスの巨大なチャンスをつかめたとでも言えよう。

■筆者プロフィール:莫邦富

1953年、上海市生まれ。85年に來日?!荷哳^』、『「中國全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中國』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多數(shù)。
知日派ジャーナリストとして、政治経済から社會(huì)文化にいたる幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭」といった新語を日本に定著させた。また日中企業(yè)やその製品、技術(shù)の海外進(jìn)出?販売?ブランディング戦略、インバウンド事業(yè)に関して積極的にアドバイスを行っており、日中両國の経済交流や人的交流に精力的に取り組んでいる。
ダイヤモンド?オンラインにて「莫邦富の中國ビジネスおどろき新発見」、時(shí)事通信社の時(shí)事速報(bào)にて「莫邦富の『以心伝心』講座」、日本経済新聞中文網(wǎng)にて「莫邦富的日本管窺」などのコラムを連載中。
シチズン時(shí)計(jì)株式會(huì)社顧問、西安市政府國際顧問などを務(wù)める。

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