今年に入っても中國では、ライブコマース（直播電商）の話題に事欠かない。iiMediaによれば2021年2月、中國のライブコマース観衆(zhòng)は30億人、視聴回?cái)?shù)は延べ60億回、新しくデビューしたライバーは1118人、ライブ回?cái)?shù)は80萬回、新商品は45萬件に上ったという。小売業(yè)の主役となりつつあるライブコマース。最新の動(dòng)向から、今後の展開を占ってみよう。

■5年間で63倍の急成長…淘寶、抖音（TikTok）、快手の3強(qiáng)

ここ5年間のネット通販売上高（中商情報(bào)網(wǎng)）とライブコマース売上高（iiMedia）の推移を比べてみよう。ネット通販全體は1．9倍なのに対し、ライブコマースは63倍に激増している。

2017年…7兆1751億元 190億元

2018年…9兆0065億元 1330億元

2019年…10兆6300億元 4338億元

2020年…11兆7601億元 9610億元

2021年…13兆7593億元 1兆2012億元

また、2021年3月のライバー別売上トップ50が発表され、トップ3は以下の通りとなった。

1位 薇［女亜］ 34億元 淘寶

2位 辛巴 21．5億元 快手

3位 李佳［王奇］ 17億元 淘寶

トップの薇［女亜］は、日本円で約574億円を売った。これを12倍すると、従業(yè)員2．9萬人のイトーヨーカドーの年間売上の約70％だ。3月は、盤石だった薇［女亜］、李佳［王奇］の淘寶直播2トップに、快手の辛巴が割り込み、話題となった。辛巴は後述するトラブルからの復(fù)活である。トップ50では、淘寶16人、抖音12人、快手は22人だった。その他、あらゆるデータが、淘寶、抖音、快手の3強(qiáng)に集中している。

■抖音?快手…2倍目標(biāo)でアリババを捉える

アリババの2020年の全體GMV（成約総額）は18兆6500億元、そのうち2016年にスタートしたライブコマース「淘寶直播」は4000億元を超えた。抖音の全體GMVは5000億元、快手は4000億元とアリババに比べればまだまだだ。しかし、ライブコマースに限れば、もう目前に迫っている。

経済メディア「晩點(diǎn)」によれば、今年の抖音のGMV目標(biāo)は、1兆元（約16兆9000億円）である。そのうち自前のライブコマースプラットフォーム「抖音小店」で40％、4000億元を達(dá)成する計(jì)畫だ。抖音小店への出店者は、抖音小店だけでなく、抖音、抖音火山版、西瓜視頻、今日頭條など、バイトダンスの超有力アプリを、販促に活用できるという。抖音だけでもユーザーは6億人、大きなアドバンテージだ。目標(biāo)はブランドや、優(yōu)良産業(yè)からの出店を募り、1億元店を1000店以上にすることだ。

快手の2021年、ネット通販GMV目標(biāo)は、8000億元（約13兆5000億円）と、やはり昨年の2倍に設(shè)定した。そのうち60％、4800億元をライブコマース「快手小店」での達(dá)成を目指す?？焓证献蚰?月、京東と戦略提攜した。出店者は自社商品に加え、京東の直営商品をライブすることも可能となった。目標(biāo)は、ブランド品の構(gòu)成比を70％、（昨年は50％）に引き上げることにある?？焓芝姗`ザーは、抖音には劣るが4億人いる。これらのユーザーに高品質(zhì)の商品と、消費(fèi)體験を提供していくという。

■規(guī)制強(qiáng)化の流れ…新法を施行

ネット通販の主流になりつつあるライブコマースだが、數(shù)々の問題點(diǎn)が浮上している。ニセモノ商品の橫行、虛偽宣伝、アフターサービスの欠如などに“遭遇”した消費(fèi)者は多い。そして最大の障害は、ライブコマースの責(zé)任主體が不明確なことにある。“三大主體”のプラットフォーマー、商品経営者、ライバーにとどまらず、MCNなどその他の関係者が複雑に絡(luò)み合っている。國家市場監(jiān)管総局は2020年11月、指導(dǎo)意見を公布し、“相関主體”にも法律責(zé)任があることを明らかにした。

象徴的事例となったのは、“辛巴燕の巣事件”である。トップライバーの1人、辛巴は10月下旬、高級(jí)食材、燕の巣を使った飲料のライブを行った。

すると翌11月中旬、某ユーザーから、燕の巣成分はなく、大部分は砂糖水だ、という指摘が寄せられた。調(diào)査の結(jié)果、実際に燕の巣成分はほとんどなかった。辛巴は11月27日に聲明を出し、誇大広告を認(rèn)めた。12月、辛巴には90萬元、発売元の広州融●貿(mào)易（●は日の下に立）には200萬元の行政処分が下った。

こうした流れを受け、「網(wǎng)絡(luò)直播営銷管理辯法」が5月末から施行される。違反したライブコマース運(yùn)営者に対し、警告、機(jī)能制限、ライブ中止、アカウント抹消、再登録禁止などの措置をとる。同時(shí)に同法は、ネットワーク管理者に対し、ライバーアカウントの登録と抹消、情報(bào)管理、営業(yè)規(guī)定、未成年者保護(hù)、消費(fèi)者権益保護(hù)、個(gè)人情報(bào)保護(hù)、ネットとデータの安全、に関する規(guī)範(fàn)の確立を求める。

■抖音?快手が優(yōu)位

當(dāng)局は「網(wǎng)絡(luò)直播営銷管理辯法」について、ライブコマースという新分野の発展を目指すものであり、“百利あって一害なし”と述べている。とはいえ実際には規(guī)制強(qiáng)化に違いない。規(guī)制との整合性を保ちながら、ライブコマースの高成長は続くのだろうか。

iiMediaによれば、ライバーは職業(yè)型の有名ライバーによるライブから、出店者が主體的にライブコマースを運(yùn)営する時(shí)代となりつつあるという。素人の工場長や商店主が直接ライブを行うイメージだ。淘寶直播は、薇［女亜］、李佳［王奇］を始めとする、スターライバーの活躍に依存する體制だった。それが國民総ライバー時(shí)代となり、大量の投稿者を持つ、抖音?快手に、有利に働き始めた。

しかし膨大な數(shù)の投稿者が一斉にライブコマースに進(jìn)出すれば、問題は増えざるを得ない。抖音?快手も強(qiáng)気の目標(biāo)一辺倒では、反動(dòng)が大きそうだ。新法の運(yùn)用が注目される。

■筆者プロフィール：高野悠介

1956年生まれ、早稲田大學(xué)教育學(xué)部卒。ユニー株（現(xiàn)パンパシフィック）青島事務(wù)所長、上海事務(wù)所長を歴任、中國貿(mào)易の経験は四半世紀(jì)以上?，F(xiàn)在は中國人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中國最新のB2Cビジネスと中國人家族について、ディ－プな情報(bào)を提供。著書：2001年「繊維王國上?！箹|京図書出版會(huì)、2004年「新?繊維王國青島」東京図書出版會(huì)、2007年「中國の人々の中で」新風(fēng)舎、2014年「中國の一族の中で」Amazon Kindle。