米中対立が厳しさを増す中、これに逆行する蜜月現(xiàn)象が起こっている。それは米國(guó)市場(chǎng)へのIPOブームである。2021年はITバブル以來の高水準(zhǔn)となり、史上最高規(guī)模が確実視されている。それはなぜだろうか。この現(xiàn)象を分析していこう。

もともと急成長(zhǎng)のIT企業(yè)は、旺盛な資金需要をまかなうため、米國(guó)か、または香港市場(chǎng)を目指した。審査が緩やかで、赤字でも巨大取引所への上場(chǎng)が可能だからだ。

BATは、テンセント…2004年6月、バイドゥ…2005年8月、ナスダック、香港、アリババ…2014年9月、ニューヨーク取引所へ上場(chǎng)している。ここでは、最近3年間に上場(chǎng)した注目企業(yè)を見てみよう。

（香港市場(chǎng)）

2018年7月 小米（シャオミ）…スマホ、IOT家電、ネット通販

2018年9月 美団點(diǎn)評(píng)…生活総合サービス、フードデリバリー最大手

2021年2月 快手…ショートビデオ2位

（ナスダック市場(chǎng)）

2018年3月 bilibili（B站）…動(dòng)畫視聴、投稿シェア、愛奇蕓…動(dòng)畫視聴

2018年7月 拼多多…共同購(gòu)入型通販

2018年9月 趣頭條…ニュースアプリ、蔚來…電気自動(dòng)車

2019年5月 瑞幸珈琲…粉飾決算で上場(chǎng)廃止

（ニューヨーク市場(chǎng)）

2018年5月 虎牙…動(dòng)畫視聴

2018年12月 騰訊音楽…音楽視聴、Spotifyと提攜、蘑菇街…女性向けネット通販

小米と騰訊音楽の2社を除き、すべて赤字のまま上場(chǎng)している。

■米國(guó)上場(chǎng)再ブーム…2020年は60社以上？

2019～20年は、米中対立が常態(tài)化し、中國(guó)企業(yè)の資金調(diào)達(dá)は米國(guó)から香港や中國(guó)本土へ、グローバルにマネーフローが変わると見られていた。ところが2020年は、コロナ禍にもかかわらず30社の中國(guó)企業(yè)が上場(chǎng)し、117億ドルを調(diào)達(dá)した。これはアリババが上場(chǎng)した2014年以來の規(guī)模である。さらに、2021年1月～4月、すでに24社（ナスダック18社、ニューヨーク取引所6社）が米國(guó)市場(chǎng)へ上場(chǎng)した。調(diào)達(dá)額は66億ドルを超え、年間では60社が上場(chǎng)予定している。ITバブル以來、20年ぶりの高水準(zhǔn)だ。この現(xiàn)象を中國(guó)メディアは、次のように解説している。

トランプ前大統(tǒng)領(lǐng)の在任中、中國(guó)企業(yè)は數(shù)々の制約を受けたが、バイデン政権の発足後、その懸念は薄らいでいる。

S＆P500指數(shù)は史上最高を記録、FRBのパウエル議長(zhǎng)は、金融緩和を続行するシグナルを発し続けている。

米國(guó)市場(chǎng)は、出來高は大きく流動(dòng)性も高い。スタートアップの認(rèn)知度も高く、世界的に高い評(píng)価が得られやすい。

中國(guó)企業(yè)は、こうした狀況を千載一遇のチャンスと見ている。そのため、小鵬汽車（EV）貝殻（オンライン不動(dòng)産）などは、わずか20日間でIPO目論見書を仕上げたという。

■上場(chǎng)予定企業(yè)…目玉は滴滴出行とバイトダンス

今後の上場(chǎng)予定企業(yè)は、ここ3年を上回る強(qiáng)力メンバーだ。

滴滴出行…配車アプリトップ。ユーザー數(shù)5．5億。自動(dòng)車関連サービス、物流、金融、など生活総合サービス化。トヨタと自動(dòng)運(yùn)転で合弁會(huì)社。

哈囉出行…シェアサイクルからスタート、シェア電動(dòng)アシスト自転車、カーシェアリングまで展開。アント?グループ出資。

貨拉拉…滴滴出行の貨物版。物流のラストワンマイルを擔(dān)う、オンライン貨物車配車サービス。都市內(nèi)物流から、都市間物流に進(jìn)出した。

満幫集団…貨拉拉のライバル。こちらは都市間物流からスタートし、貨拉拉と棲み分けていたが、同質(zhì)化へ進(jìn)み、競(jìng)爭(zhēng)激化。ソフトバンク出資。

小紅書…越境ECと口コミサイトの複合アプリ。若い女性から圧倒的支持。

BOSS直聘…中國(guó)最大の人材マッチングサイト。テンセント出資。

作業(yè)幫…オンライン教育。小中學(xué)生に補(bǔ)修提供。ソフトバンク出資。

叮咚買菜…生鮮ネット通販。最速29分でデリバリー。ソフトバンク出資。

愛回収…中古品売買プラットフォーム。スマホが3分の2。全國(guó)753カ所に回収ステーション。

喜馬拉雅…音聲メディア。月間アクティブユーザー2．5億。テンセント出資。

字節(jié)跳動(dòng)（バイトダンス）…ショートビデオ、抖音（海外名?TikTok）、ニュースサイト、今日頭條の運(yùn)営會(huì)社。

超大物は、滴滴出行とバイトダンスである。滴滴の企業(yè)価値600億ドル、バイトダンスに至っては4000億ドルとするメディアすらある。

■引き締めにも効果なし…史上最大のIPOに

アリババは2019年11月、香港市場(chǎng)へ重複上場(chǎng)した。その後、京東は2020年6月、バイドゥとB站は2021年3月と続き、香港への重複上場(chǎng)もムーブメントとなっている。またロイターはここへきて、喜馬拉雅の米國(guó)上場(chǎng)に待ったがかかった、と伝えた。當(dāng)局は、香港への上場(chǎng)を望んでいるという。作業(yè)幫にも上場(chǎng)計(jì)畫の遅れが出ているらしい。

米國(guó)ナスダックは2019年以降、中國(guó)企業(yè)のIPOルールを引き締めた。中國(guó)人投資家による投機(jī)的な動(dòng)きが目立ったためとされる。さらに2020年には、好未來、愛奇蕓、瑞幸珈琲などの中國(guó)企業(yè)の不正會(huì)計(jì)事件が起こる。こうした?jī)?nèi)外さまざまな理由から、米國(guó)上場(chǎng)への門戸は狹まったはずだが、それにもかかわらず、上場(chǎng)意欲はまったく衰えを見せていない。メジャーリーグで活躍したいと願(yuàn)う野球選手と同じマインドだろうか。世界的な認(rèn)知を得て、新たなステージへ進(jìn)みたい。とにかく、このまま進(jìn)めば、今年のIPO規(guī)模は、まぎれもなく史上最大となる。それに対し、米中當(dāng)局ともにブレーキをかけたい思惑では、一致している。資本市場(chǎng)を自由にしておくと、際限なく中國(guó)企業(yè)が集まってしまう。やはり米中関係は一筋縄ではいかない。

■筆者プロフィール：高野悠介

1956年生まれ、早稲田大學(xué)教育學(xué)部卒。ユニー株（現(xiàn)パンパシフィック）青島事務(wù)所長(zhǎng)、上海事務(wù)所長(zhǎng)を歴任、中國(guó)貿(mào)易の経験は四半世紀(jì)以上?，F(xiàn)在は中國(guó)人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購(gòu)入、ライブEコマースなど、中國(guó)最新のB2Cビジネスと中國(guó)人家族について、ディ－プな情報(bào)を提供。著書：2001年「繊維王國(guó)上?！箹|京図書出版會(huì)、2004年「新?繊維王國(guó)青島」東京図書出版會(huì)、2007年「中國(guó)の人々の中で」新風(fēng)舎、2014年「中國(guó)の一族の中で」Amazon Kindle。