吉田陽介 2021年7月12日(月) 12時50分
拡大
中國で外資系消費ブランドが中國企業(yè)との激しい競爭にさらされている。資料寫真。
「消費は中國経済の発展の原動力」。中國経済に注目している読者はご存知のことだろうと思うが、毎年3月に開かれる全國人民代表大會(全人代)で見られる言葉だ。今の中國は40年前とは違い、様々な商品が市場に出回っており、消費者の選択肢が広がっている。また、人々の生活も豊かになったことから、「よりいいもの」を買おうとする。
コカ?コーラ、メイベリン、ネスレといった歐米企業(yè)はこれまで、中國企業(yè)との競爭で知名度の點で優(yōu)位に立っていた。これまで、中國人は「外國製の商品=品質(zhì)がいい」というイメージを持っていたため、中國企業(yè)は外國企業(yè)との競爭でやや劣勢だった。だが現(xiàn)在、中國製品の品質(zhì)、アフターサービスも向上しており、コカ?コーラなど中國でお馴染みの歐米企業(yè)も競爭で優(yōu)位立つことが當(dāng)たり前でなくなってきている。
■「外資勢は厳しい競爭にある」中國企業(yè)の活躍ぶりを伝えるFT記事
今、中國の消費者が國內(nèi)ブランドを選びつつある。これは數(shù)年前から中國メディアが報じているが、歐米メディアも報じた。最近もイギリスの経済紙『フィナンシャル?タイムズ』とロイター通信がこの問題について取り上げた。
『フィナンシャル?タイムズ』は6月26日、中國で毎年6月に行われる大規(guī)模なオンラインショッピングイベント「618」ショッピングフェスティバルで、中國の育児用品の新興ブランド「Babycare」の売上高が米P&Gの「パンパース」を上回るなど、中國勢の活躍が顕著だと報じた。
中國企業(yè)の活躍はここに挙げた例だけではない。昨年の「ダブル11(中國最大規(guī)模のショッピングイベント)」でもそうだ。記事によると、中國の飲料メーカー「元気森林」のオンライン売上高が米コカ?コーラや米ペプシコーラを上回った。
さらに記事は、中國本土のコスメブランド「完美日記」はその1年前、フランスのメイベリンとエステーを上回り、「ダブル11」の最大の勝者となり、2019年、中國本土のおやつブランド「三只松鼠(3匹のリス)」の売上高がスイスのネスレを上回ったと報じた。
ロイター通信も中國企業(yè)のこうした活躍に注目し、6月28日に「中國消費者が本土ブランド志向に。投資家に黃金のチャンスをもたらす」という記事を発表した。同記事は「618」ショッピングフェスティバル期間中、中國ブランドの販売増加率は國際ブランドを4%上回ったと指摘した。本土ブランドの顧客數(shù)の伸び率は、國際ブランドを16%上回ったと述べた。
前出の『フィナンシャル?タイムズ』の記事は、中國での事業(yè)発展に期待を寄せていた多國籍企業(yè)は中國企業(yè)の活躍で大きな試練に前にしていると述べ、「次の10年は中國ブランドの10年になる。中國の消費市場のシェアは、成長を続ける國産ブランドが非常に大きくなるだろう」と米國のデータ分析會社ローンチメトリックス(Launchmetrics)の研究者の言葉を伝えた。
また、記事は、英市場調(diào)査會社カンター?パネル(Kantar Worldpanel)と米コンサルティング會社ベイン?アンド?カンパニー(Bain&Company)のレポートによると、2020年の7~9月期に、中國で急成長している消費者ブランドの國內(nèi)売上高は前年同期比2%増加した一方で、外國ブランドは6%減少したことも伝えた。
■中國企業(yè)成功の理由について意見分かれるFTとロイター
『フィナンシャル?タイムズ』とロイター通信はいずれも最近の中國本土ブランド成功について注目しているが、その理由について、両者の見方は異なっている。
『フィナンシャル?タイムズ』の記事は、中國本土ブランドの成功は、マーケティングへの巨大な投資、特にソーシャルメディアへの投資、若者の消費習(xí)慣に合わせたさまざまなフレキシブルなマーケティング手法によるところが大きいと指摘した。同紙記事は、ローンチメトリックスのデータによると、中國の消費財関連スタートアップ企業(yè)の支出の60%を占めるのはマーケティング支出だ。これに対し、中國における外國ブランドのマーケティング支出の割合は15?25%にとどまっている。
記事はマーケティング手法について、中國の若い消費者が口紅を購入するケースを例にとって説明した。消費者はまず「TikTok(抖音)」で「網(wǎng)紅(インフルエンサー)」のプロモーション動畫を見てから中國最大の口コミアプリ「小紅書(RED)」で美容専門ブロガーの評価を見て、最後に「淘寶」で購入者のフィードバックや寫真をチェックしてから、商品を購入する可能性があると報じている。中國本土ブランドはこれらのソーシャルメディアに広告を掲載している。
報道によると、中國の一部「網(wǎng)紅」はすでに多くのファンの心をつかんでいる。フォロワー數(shù)が少ない「小網(wǎng)紅(マイクロインフルエンサー)」といわれる人たちは、同じく中國本土ブランドにとって重要な顧客層だ。インフルエンサーは購入した商品を食べたり身につけたりする動畫を配信するため、発信力がある。彼らの発信力に目をつけた中國本土ブランドは、インフルエンサをブランドプロモーターにし、無料の商品や少額の報酬を提供するようなこともしている。
記事によると、中國でブランドが消費者に受け入れられる一つの効果的な方法は微信(WeChat)などのSNSのグループチャットの活用だと指摘する。このようなグループチャットのユーザーの上限は500人で、ブランドがよりプライベートな環(huán)境での消費者との交流を可能にする。
だが、外資系の老舗ブランドは上に述べたようなマーケティング手法をあまり活用していない。外資系企業(yè)の広告は、主に伝統(tǒng)的な「主要メディア」に広告を掲載するというものだ。
ロイター通信の報道は、中國本土ブランドの成功を若者の「愛國心」によるものだとしている。同社報道は、あるコンサルティング會社の研究者の意見を引用する形で、「ナショナリズムは中國本土ブランドの人気を後押しする最も大きな要因」であり、「外國は依然として高い感染率と闘っており、中國は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)から先に抜け出して社會経済が回復(fù)したため、若者はそのことを誇りに感じている」と述べ、その誇りが本土ブランドへのシフトを支えていると伝えた。
ロイター通信の分析のように、中國人は「愛國心」によってどの國の商品を購入するのだろうか。私はロイター通信の記事にはやや無理があるように思う。
■中國ブランドの躍進(jìn)は中國人の「愛國心」の高まり?
中國の若者に愛國心がないのかと聞かれれば、そんなことはない、誰にでも國を愛する気持ちはあると私は答える。だが、それと買い物とは別物だ。例えば、2015年に中國人に日本で大量の日本製品を購入するという「爆買い」が話題になった。その要因は當(dāng)時円安だったこともあるが、使い勝手が悪い中國製品への“不満”も一因だ。
だが、この10年で中國企業(yè)も使い勝手のいい製品、ユーザーの立場に立った商品を生み出してきており、割高の外國製品を購入するよりも、相対的に安価な中國製品を選ぶ消費者も出てきている。
また、『フィナンシャル?タイムズ』の記事でも指摘していたが、消費者の購買行動に最も影響を與えるのは、企業(yè)のマーケティングだ。今の中國の買い物は高齢者や私のようなWeChat Payをあまり活用しないアナログ人間を除き、インターネットで行うことが多い。勤務(wù)する大學(xué)の學(xué)生は日本製品が好きで、日本製の食べ物やゲームを購入する。どこで買ったかを聞くと、「ネットで買いました」と即答した。
インターネット消費の「主力」といわれる「90後」「00後」の若者はスマホが生活必需品、いや「體の一部」になっている。彼らは買い物をネット上で済ますことが多いので、インフルエンサーを使ってのプロモーションは効果的だ。
今の中國企業(yè)は消費者のニーズが高度化した市場で活動しなければならないため、「市場創(chuàng)造型」に転換しなければ生き殘れない。中國ブランドが多くの消費者に支持されたのは、「市場創(chuàng)造型」への転換がうまくいっていることを示していると私は思う。
■筆者プロフィール:吉田陽介
1976年7月1日生まれ。福井県出身。2001年に福井県立大學(xué)大學(xué)院卒業(yè)後、北京に渡り、中國人民大學(xué)で中國語を一年學(xué)習(xí)。2002年から2006年まで同學(xué)國際関係學(xué)院博士課程で學(xué)ぶ。卒業(yè)後、日本語教師として北京の大學(xué)や語學(xué)學(xué)校で教鞭をとり、2012年から2019年まで中國共産黨の翻訳機関である中央編訳局で黨の指導(dǎo)者の著作などの翻訳に従事する。2019年9月より、フリーライターとして活動。主に中國の政治や社會、中國人の習(xí)慣などについての評論を発表。代表作に「中國の『代行サービス』仰天事情、ゴミ分別?肥満?彼女追っかけまで代行?」、「中國でも『おひとりさま消費』が過熱、若者が“愛”を信じなくなった理由」などがある。
この記事のコメントを見る
Record China
2021/7/8
2021/6/18
2021/4/9
2021/3/11
2020/11/15
2021/6/12
ピックアップ
we`re
RecordChina
お問い合わせ
Record China?記事へのご意見?お問い合わせはこちら
業(yè)務(wù)提攜
Record Chinaへの業(yè)務(wù)提攜に関するお問い合わせはこちら
この記事のコメントを見る