松野豊 2021年7月20日(火) 13時50分
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「第14次五か年計畫」において最も注目されるのは、経済成長を追求しつつも五か年のGDP成長率の定量的な目標を示さず、「労働生産性を実質GDP成長率以上とする」と明記したことである。資料寫真。
中國は、2021年を開始年とする「第14次五か年計畫」において、新たな経済発展の戦略を提示した。中でも最も注目されるのは、経済成長を追求しつつも五か年のGDP成長率の定量的な目標を示さず、「労働生産性を実質GDP成長率以上とする」と明記したことである(ただし2021年は6%以上と明示)。
労働生産性とは、「実質GDP/就業(yè)者數(shù)」といった式であらわされることが多く、いわばマクロな生産性の指標のひとつである。端的に言えば中國は今後、量的成長よりも質的成長を求めていくという意味になる。
中國の労働生産性の數(shù)値は、絶対値としてはまだ日本の半分以下である。しかしその伸び率は近年6~7%であり(2020年度はコロナの特殊要因で2.8%に低下)、実質GDP成長率以上という五か年目標値のクリア自體は問題ないだろう。
では、この労働生産性という指標をもう少しミクロに見てみよう。図1は中國の製造業(yè)と小売業(yè)における労働生産性の推移を業(yè)種別に計算してみたものである。ただし中國の統(tǒng)計では業(yè)種別の実質GDP値や付加価値が示されていないので、ここでは収入から原価を差し引いた粗利値をGDPデフレーターで実質化した數(shù)値を用いて計算した。
さてまず図1の製造業(yè)をみると、全體として労働生産性は順調に増加していることがわかる。しかしこれを業(yè)種別にみると、自動車や機械産業(yè)、鉄鋼や石油などの裝置産業(yè)は生産性が高いが、組立工業(yè)(設備機器、食品、アパレルなど)の生産性は全般的に低い。
一方、小売業(yè)をみると、製造業(yè)よりは労働生産性の伸び方はゆっくりだ。しかし最近は無店舗販売(ネット販売等)の生産性が急速に高まっていることがわかる。また百貨店やGMSなどは、伝統(tǒng)的な小売業(yè)で付加価値総額はまだ高いのだが、労働生産性は小売業(yè)全體を下回っていることもわかる。
これらのことから、中國が新たな五か年計畫で求める質的成長、いわゆる付加価値型成長を実現(xiàn)していくためには、製造業(yè)では自動車や機械産業(yè)を育成拡大すること、そして小売業(yè)では百貨店やGMSといった業(yè)態(tài)の生産性を高めていく経営改革が必要であることがわかる。
既に中國の大手ITサービス企業(yè)は、伝統(tǒng)的な小売業(yè)態(tài)を買収などで取り込み、デジタル技術などを用いて経営改革を進めている。そのため、中國市場においてこの部分での日本企業(yè)の出番は少なそうだ。小売業(yè)における日本企業(yè)のビジネスチャンスは、顧客サービスや商品開発の部分だと思われる。
しかし製造業(yè)に関して言えば、ビジネスチャンスが多く見いだせる。例えば中國の製造業(yè)は、労働生産性を高めるために製造設備の高度化や生産管理の強化などが必要になる。この分野では、古くはTQC活動に始まり、その後継続的に生産性を高めてきた日本企業(yè)には経験と強みがあるので、中國への売り込みは有望であろう。
■筆者プロフィール:松野豊
大阪市生まれ。京都大學大學院衛(wèi)生工學課程修了後、1981年野村総合研究所入社。環(huán)境政策研究や企業(yè)の技術戦略、経営システムのコンサルティングに従事。2002年、同社の中國上海法人を設立し、05年まで総経理(社長)。07年、北京の清華大學に同社との共同研究センターを設立して理事?副センター長。 14年間の中國駐在を終えて18年に帰國、日中産業(yè)研究院を設立し代表取締役(院長)。清華大學招請専門家、上海交通大學客員研究員を兼務。中國の改革?産業(yè)政策等の研究を行い、日中で講演活動やメディアでの記事執(zhí)筆を行っている。主な著書は、『參考と転換-中日産業(yè)政策比較研究』(清華大學出版社)、『2020年の中國』(東洋経済新報社)など。
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