「政府の手」と人々の善意で「共同富?!工螌g現(xiàn)を図る中國

吉田陽介    2021年9月17日(金) 23時20分

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共同富裕はこの1カ月、國內(nèi)外メディアが関心を持っている概念と言える。8月17日に開かれた中央財経委員會第10回會議で共同富裕が再度強調された。寫真は上海。

共同富裕はこの1カ月、國內(nèi)外メディアが関心を持っている概念と言える。8月17日に開かれた中央財経委員會第10回會議で共同富裕が再度強調された。會議は「共同富裕は全人民の富裕であり、人民大衆(zhòng)の物質生活と精神生活がともに豊かになることで、少數(shù)者の富裕ではなく、畫一的な平均主義でもない」と強調した。

■「共同富?!工伽訌娬{された理由

歐米メディアは、これはトウ小平の「先に豊かになれる者たちに富ませ、落伍した者たちを助ける」戦略に大きな変更があり、將來の社會統(tǒng)治(ガバナンス)と富の分配政策に大きな変化が起こることを意味していると見ている。共同富裕そのものは、中國共産黨が一貫して掲げている目標であり、國民生活重視の政策を打ち出している現(xiàn)政権の特徴から考えて、當然の帰結である。

「共同富?!工摔膜い皮稀?020年11月、「國民経済と社會発展の第14次5カ年計畫及び2035年の長期目標の策定に関する中共中央の提案」(以下「提案」と略)には、「共同富?!工碎vする內(nèi)容がはっきりと盛り込まれている。

習近平が黨中央を代表して行った「提案」についての説明のなかで、2035年までに「全人民の共同富?;瑜觐囍蕦g質的進展を見せるようにする」と直接述べ、「共同富裕を著実に推進する」ことを強調しており、今後の中國の社會主義建設にとって重要な目標であることを意味している。

共同富裕を達成するために考えるべきは分配問題だ。この問題は全人代前や黨大會の前に中國の公式メディアが行う調査で、人々が関心を持っている問題の上位にランクインされている。そのため、中國政府は公共投資を増やして「パイ」を増やすよりも、それを人々の生活に振り向けることに舵を切った。

今回の中央財経委員會第10回會議では、「第三次分配」という聞き慣れない言葉も出てきた?!?a target='_blank' href='http://www.wenhuatang.com/search.php?filter=人民日報'>人民日報』の報道はこう述べている。

「人民を中心とする発展思想を堅持し、質の高い発展の中で共同裕福を促進し、効率と公平の関係を正しく処理し、第一次分配、第二次分配、第三次分配が協(xié)調してセットになる基礎的制度設計を行わなければならない。」

「第一次分配」とは、市場で経済効率を重視する分配のことであり、「第二次分配」は政府の力によって公平を実現(xiàn)することで、他國でも見られる概念なので容易に理解できる。

「第三次分配」とは、慈善事業(yè)が中心となって、人々が進んで富の分配にかかわることであり、貧しい人、生活が困難な人々に援助の手を差し伸べたいという気持ちが、共同富裕の実現(xiàn)にとって非常に重要だ。

実は、「第三次分配」は、「提案」の中でも言及されており、今後の中國の社會主義現(xiàn)代化強國の建設にとって必要だ。

■改革開放の「負の遺産」を処理するための「共同富?!?/p>

改革開放初期、中國はイデオロギーを優(yōu)先させた政策のため、「一に貧困、二に空白(経済的に貧しく、文化的にも技術的にも立ち遅れている)」の狀態(tài)で、人々は等しく貧しかった。それは改革開放以前の所得分配の絶対的な平等主義によって、人々が富を生み出す意欲を失っていたのが原因だ。これは8月17日の會議で言及された「畫一的な平均主義」を指し、今後はこのような政策をとらないことを中國共産黨は何度も言明している。

トウ小平はこの狀況を受けて、平等よりも、成長を促進してパイを大きくすることに重點を置いた。

所得分配の面では効率を優(yōu)先し、「先に豊かになれる者たちに富ませる」ことを基本的方向性とし、資本の発展にプラスとなる措置を打ち出した。具體的には、私営企業(yè)の発展を奨勵、外國企業(yè)の誘致のための優(yōu)遇策などが挙げられる。

改革開放以降、中國経済は40年以上連続で高度成長を続けた結果、世界2位の経済大國に成長しただけでなく、1人當たり國內(nèi)総生産(GDP)も1萬ドルの大臺を突破した。

だが、急速な経済成長とともに、住民部門の所得分配のアンバランスも拡大した。例えば、2019年の中國の所得ジニ係數(shù)は0.465に達した。この數(shù)字は世界的に見て高い水準にあり、地域間、階層間の所得格差がなお存在していることを意味する。またこのレベルは、米國、英國、日本、ドイツなどの先進國を大きく上回っている。

クレディ?スイス(Credit Suisse)の「ワールド?ウェルス?レポート2021」のデータによると、2020年の中國の財産ジニ係數(shù)は0.704に達し、フランス、イタリア、日本などの先進國を上回った。これらのデータは中國の所得と富の分配のアンバランスが深刻になっていることを示している。世界各國の経験から見ると、所得分配問題がうまく解決されないことは、多くの発展途上國が最終的に「中所得の罠」の最も大きな原因の一つとなる。このため、中國共産黨は所得分配問題を重く見て、8月の會議でも言及したのである。

■ボランティア精神で格差是正を

「第三次分配」について、「提案」は「慈善事業(yè)を発展させ、収入と富の分配の構造を改善する」と述べている。「第三次分配」は個々人の道徳心などを拠り所としており、貧しい人たちを助けたいという気持ちで、共同富裕を実現(xiàn)するものだが、慈善事業(yè)や企業(yè)の社會的貢獻が重要となってくる。

改革開放40年、中國は「パイ」の拡大に重點をおき、弱者救済などは二の次になりがちだったが、この10數(shù)年、中國政府は改革開放の「負の遺産」の処理に取り組んでおり、公平を重視している。それにともなって、慈善事業(yè)も発展している。2014年に「慈善事業(yè)の健全な発展に関する指導意見」、2016年に「慈善法」が制定され、制度面では慈善事業(yè)発展のための基礎は築かれている。

9月5日付の「人民ネット」の報道は、「第三次分配及び関連の付帯制度の確立と健全化に伴い、慈善事業(yè)は社會統(tǒng)治(ガバナンス)に深く関わっており、共同富裕を推進する重要な役割となっている。それと同時に自身の建設と発展においても大きな変化が生じ、慈善事業(yè)は第三次分配の主要なルートとなっており、その中心的な要素は慈善事業(yè)を発展させ、大きくすることだ」という専門家のコメントを紹介しており、「第三次分配」は経済分野だけでなく、社會の安定にも役立つと分析している。

中國にボランティア文化が存在する。各団地にある「社區(qū)」といわれるコミュニティーには、高齢者のボランティアがおり、各種イベントなどには學生ボランティアが動員される。社會実踐としてボランティアをする學生もいる。この文化は「第三次分配」の主力として期待される慈善事業(yè)の発展にプラスとなる。

人民ネットの記事は、中國の慈善事業(yè)は大衆(zhòng)化?規(guī)範化?透明化?専門化してきており、一定の発展を見ているが、政策上のインセンティブが不足しているという欠點があり、財政が慈善事業(yè)を援助することも必要だと指摘している。

まだ問題はあるが、中國の発達している地域は人々の道徳水準も高くなっており、慈善事業(yè)を発展させる土壌がある。また、企業(yè)の社會的責任も言われるようになっており、慈善事業(yè)に関心のある企業(yè)も「第三次分配」の擔い手になっている。

■「共同富?!工文康膜现虚g所得層にあり

中國政府が所得分配問題を解決するために「共同富?!工驈娬{したのは、中國経済が雙循環(huán)の新たな発展構造を構築する上でも極めて重要だからだ。

內(nèi)循環(huán)を主體とし、內(nèi)外循環(huán)が相互に促進する雙循環(huán)の新たな発展構造を構築するには、內(nèi)需が非常に重要だ。そのエンジンとして、消費の拡大?高度化がカギとなる?,F(xiàn)在、中國の消費が伸びているが、その擔い手は主に中間所得層だ。中國政府が進めている「共同富?!够撙舷Mのさらなる増加のために、中間所得層を増やすことだ。

中國の國民生活重視政策は一定の成果をあげているが、まだ低所得層が一定數(shù)存在する。低所得者の所得をあげることは、中間所得層を増やすために重要なことだ。中低所得世帯の所得水準を持続的に引き上げられれば、中低所得世帯の所得の増加が続けば、所得の多くを消費に回すことになり、雙循環(huán)の新たな発展構造が現(xiàn)実味を帯びることになる。

「共同裕福」は、「殺富救貧(富めるものを殺して貧しい者を救う)」ではないかという見る向きもあるが、これまで述べてきたように、「共同富?!工舷趣素Nかになった人々が遅れをとっている人を助けるというものだ。格差是正には、もちろん「政府の力」が必要だが、それを補うものとしての慈善事業(yè)を通じての「分配」も重要な役割を発揮している。

今、中國は「上からの調節(jié)」と「下からの調節(jié)」を組み合わせて「共同富?!工驅g現(xiàn)しようとしており、それは社會の成熟度が重要な要因となるだろう。

■筆者プロフィール:吉田陽介

1976年7月1日生まれ。福井県出身。2001年に福井県立大學大學院卒業(yè)後、北京に渡り、中國人民大學で中國語を一年學習。2002年から2006年まで同學國際関係學院博士課程で學ぶ。卒業(yè)後、日本語教師として北京の大學や語學學校で教鞭をとり、2012年から2019年まで中國共産黨の翻訳機関である中央編訳局で黨の指導者の著作などの翻訳に従事する。2019年9月より、フリーライターとして活動。主に中國の政治や社會、中國人の習慣などについての評論を発表。代表作に「中國の『代行サービス』仰天事情、ゴミ分別?肥満?彼女追っかけまで代行?」、「中國でも『おひとりさま消費』が過熱、若者が“愛”を信じなくなった理由」などがある。

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