安全保障に詳しい米中関係筋が明らかにしたところによると、中國が臺(tái)灣に対して軍事行動(dòng)に踏み切る可能性は極めて低い。9月の米中首脳電話會(huì)談で「現(xiàn)狀維持」「一つの中國」などを堅(jiān)持することが話し合われたという。

2022年は中國にとって重要なイベントが目白押し。冬季オリンピック?パラリンピック、同年10月に最も重要な中國共産黨大會(huì)を控えている。さらに、中國にとって経済発展は至上命題。臺(tái)灣の武力統(tǒng)一は大きな混亂を招きリスクは甚大だ。中國人民解放軍が臺(tái)灣侵攻に十分な訓(xùn)練をしていないことも要因となり、臺(tái)灣侵攻はありえないと同筋は見ている。

一部の米軍関係者は2年以內(nèi)に中國による臺(tái)灣侵攻が考えられると警告。元自衛(wèi)隊(duì)制服組トップも「中國は確実に臺(tái)灣に侵攻する」と警鐘を鳴らしている。しかし中國は軍事行動(dòng)を控えるというのが、米國や他の同盟國の情報(bào)當(dāng)局の一致した見方という。

◆9月の米中電話會(huì)談で歩み寄る

同筋は9月9日に行われたバイデン大統(tǒng)領(lǐng)と習(xí)近平國家主席との電話會(huì)談に注目。90分に渡った會(huì)談で、バイデン大統(tǒng)領(lǐng)が「従來の『現(xiàn)狀維持』の立場を堅(jiān)持する」と言明。これに対し、中國側(cè)は「バイデン大統(tǒng)領(lǐng)は米中間の経済面及び安全保障面の競合関係の中で、臺(tái)灣問題を圧力材料に使う気はない」と受け止めたという。

ホワイトハウスの聲明によると、この會(huì)談で両首脳は、米中の競爭が紛爭につながることを回避する必要性について協(xié)議。「幅広い戦略的な協(xié)議」を行ったという。その上で聲明は「両首脳は競爭が紛爭とならないよう両國の責(zé)任について協(xié)議した」と表明した。

中國の國営メディアも習(xí)近平國家主席とバイデン大統(tǒng)領(lǐng)が電話會(huì)談し、両國関係や共通の懸念事項(xiàng)について広範(fàn)で率直かつ踏み込んだ戦略的協(xié)議を行ったと伝えた。米中両國は頻繁に連絡(luò)を取り合い、実務(wù)レベルの擔(dān)當(dāng)者同士の対話を増やすことで合意したという。

習(xí)主席は「中米は戦略的な勇気と洞察力、政治的な大膽さを示し、中米関係をできる限り早期に安定的発展の正しい軌道に戻すべきだ」と提唱。さらに同主席は、雙方の核心的問題が尊重されれば、気候変動(dòng)などの分野で外交の突破口が開ける可能性があるとの認(rèn)識(shí)を示し、気候問題は両國間関係の「プラス要因」になり得ると指摘した。

電話會(huì)談は貿(mào)易問題で譲歩を求める米側(cè)が呼びかけた。もともとバイデン氏と習(xí)氏は舊知の仲で1週間にわたり中國國內(nèi)を一緒に旅行したこともあり、年內(nèi)の首脳會(huì)談開催で合意している。

◆「一つの中國」確認(rèn)

米中間では、貿(mào)易、ハイテク分野、人道問題（香港、ウイグル）と安全保障（サイバーセキュリティ、南シナ海）の面での競合、対立は激しさを増しているものの、バイデン大統(tǒng)領(lǐng)が臺(tái)灣の獨(dú)立を支援せず「一つの中國」を確認(rèn)したことは、習(xí)國家主席にとっては歓迎すべきことである。米経済界から対中貿(mào)易拡大を求められているバイデン氏との間で妥協(xié)が成立したと同関係筋は見ている。

中國は、現(xiàn)在、経済、政治両面で調(diào)整の必要な時(shí)期にあり、まず臺(tái)灣侵攻よりも國內(nèi)の安定を取り戻すことが必要な時(shí)期でもある。武力行使により経済が大混亂に陥ることを恐れている。

中國はバイデン大統(tǒng)領(lǐng)が主催して12月9、10の両日に開かれる、民主主義國の指導(dǎo)者を集めた「民主主義サミット」（オンライン形式）を注視している。権威主義體制とみなす中國やロシアに対抗する狙いがあるとされる。ここで臺(tái)灣がどのようにとりあげられるか、そこで米國のこの問題についての立場に変化があるかどうか。それによって、中國の臺(tái)灣政策も影響を受けることになろう。

米ホワイトハウスの國家安全保障會(huì)議（NSC）でアジア政策を統(tǒng)括するキャンベル?インド太平洋調(diào)整官は今年5月、米國が臺(tái)灣防衛(wèi)の意思を明確にすれば「重大な不都合」が生じると述べ、従來の「戦略的曖昧さ」を維持すべきだと主張した。キャンベル氏は米中雙方には臺(tái)灣問題で現(xiàn)狀を維持することがそれぞれの利益にかなっているという認(rèn)識(shí)があると指摘。「（従來の方針を転換して）戦略的鮮明性を打ち出せば、幾つかの重大な不都合が生じる」と警告している。

こうした中、臺(tái)灣をめぐる日本の対応も問われる。岡田充?共同通信客員論説委員はこのほど「虛構(gòu)の『臺(tái)灣有事』―日米の狙いはどこに」と題して講演。日本政府と一部メディアが「臺(tái)灣有事が切迫している」と危機(jī)感を煽り続けていると指摘。日米安保條約を「対中同盟」に変質(zhì)させた日米両國が「臺(tái)灣有事は日本有事」というキャンペーンを進(jìn)める背景には、（1）自衛(wèi)隊(duì)の南西シフトとミサイル配備を加速し、日本を?qū)澲幸种工巫钋熬€にする（2）臺(tái)灣問題に対する中國の「レッドライン」（容認(rèn)できない一線）を探る―狙いが透けて見える、と喝破している。

その上で、中國の脅威を煽って抑止を強(qiáng)調(diào)するだけでは、軍拡競爭を招く?安保のジレンマ?に陥るだけだと警告?！赴踩Ｕ悉趣稀⒐餐à螖长蜃鳏盲瓢鼑欷工毪长趣扦悉胜ぁ埂弗ⅴ弗ⅳ仁澜绀谓U済で圧倒的な市場と資金力をもつ中國の包囲など不可能である」とし、「外交努力を重ね、中國と共存し地域の安定を確立する道を探ることこそ、衰退が目立つ日本の將來にとって不可欠な仕事だ」と強(qiáng)調(diào)した。

◆外交努力重ね地域の安定を

中國の脅威を煽って抑止を強(qiáng)調(diào)するだけでは、軍拡競爭を招く?安保のジレンマ?に陥ってしまう。安全保障とは、共通の敵を作って包囲することではない。アジアと世界の経済で圧倒的な市場と資金力をもつ中國の包囲など不可能だ。外交努力を重ね、中國と共存し地域の安定を確立する道を探ることこそ、衰退が目立つ日本の將來にとって不可欠である。

■筆者プロフィール：八牧浩行

1971年時(shí)事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財(cái)界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會(huì)見。東京都日中友好協(xié)會(huì)特任顧問。時(shí)事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機(jī)ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン（フルマラソン12回完走＝東京マラソン4回）、ヴァイオリン演奏。