米中対立から米中対話への移行――米中共同(気候対策)宣言の意味するもの――

凌星光    2021年11月12日(金) 13時20分

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英グラスゴーで開催中のCOP26で、米中両國は今後10年間の気候変動対策での協(xié)力を強化するとした共同宣言を発表した。このニュースは異例なこととして、世界を駆け巡った。資料寫真。

10日、英グラスゴーで開催中の「國連気候変動枠組み條約第26回締約國會議(COP26)」で、米中両國は今後10年間の気候変動対策での協(xié)力を強化するとした共同宣言を発表した。このニュースは異例なこととして、世界を駆け巡った。とりわけ日本においては、また「梯子を外された」という思いの有識者が多いのではなかろうか。

今回の共同宣言からは、次の幾つかの新しい動きが見て取れる。

1.米中対決が米中協(xié)調に?

トランプによってなされた対中圧力強化は、バイデン政権によっても継承され、臺灣問題や「人権問題」での米中対立は先鋭化している。ところが、今回の共同宣言では、環(huán)境問題での米中協(xié)力がかなり具體的に書き込まれ、作業(yè)部會をつくって実効性のあるものにすることも決まった。中國は、米國が一方で中國を敵視し、他方で自分の都合の良い協(xié)力を求める姿勢など相手にしないと突っぱねてきた。気候変動問題で合意に達したということは、米側が基本的に折れてきたことを意味しよう。それは、近いうちにバイデン大統(tǒng)領と習近平國家主席のオンライン首脳會談が予定されていることからも推し量られる。

もちろん、バイデン政権は安全保障問題や人権問題などでは対中強硬姿勢を崩さないと言っているし、米國の世論も今のところ対中感情は悪く、公然と対中協(xié)調政策をとるわけにはいかないであろう。しかし、実際には、徐々に対中協(xié)力姿勢に転換していくと推察される。

2.対決の10年は協(xié)力の10年に?

多くの米國や日本の安全保障問題専門家は、米國は本気で中國を押さえつけようとしており、日本が入れ知恵したインド太平洋戦略を実行しようとしていると喧伝する。しかも、米中対立が20-30年は続くという。筆者はせいぜい10年と言ってきたが、その10年もかなり対決色が弱まったものになろう。というのは、米中対決によって最も困るのは米國自身であり、経済界からは早くから政策転換の聲が上がっているからである。他方、多くの識者が語るように、中國も負の影響は受けるが、経済は引き続き好調で、ダメージはそんなに大きくはない。共同宣言で定めた2020年代の10年とは、気候環(huán)境問題での重要な10年という意味ではあるが、中國が米國を追い抜く重要な過渡期としての10年でもある。即ちトップ交代を如何にして平和的に実現するかの重要な10年なのである。

バイデン政権としては、來年の中間選挙で如何に勝利するかが重要課題だ。共和黨のトランプ支持者と対中強硬策を競うよりも、対中協(xié)調で経済発展を遂げ、中所得者層拡大の公約を実現することこそ正解ではなかろうか。たとえ共和黨が中間選挙で勝利したとしても、対中協(xié)調は時代の流れとして続けられる可能性が高いと見立てる。

3.真の多國間主義への転換

トランプはアメリカ?ファーストで同盟國を無視した。バイデンは同盟國重視を謳い、多國間主義に戻ったと強調する。しかし、それはNATOや日米安保條約を重視し、中國やロシアを敵視する多國間主義であり、冷戦思考に基づくサークル主義で、國連を中心とした真の多國間主義ではないと中國は批判している。だが、今回の米中共同宣言によって、COP26は真の多國間主義を體現することとなり、畫期的な大きな成果だ。だからこそ、アントニオ?グテーレス國連事務総長は、今回の発表は「正しい方向へ進む重要な一歩」と高く評価した。他の分野において、真の多國間主義が実行される保証はないが、気候環(huán)境問題に続いて、新型コロナ対策で共同歩調がとられる可能性は高い。それが米中信頼関係の醸成に繋がり、更に安全保障問題に広がっていく可能性も考えられる。

現在、安全保障面で、米國、日本、オーストラリア、インド、EUが一體となって、「中國の脅威」をけん制し、対中抑止力を高めていると喧伝されている。しかし、中國脅威論は虛構に過ぎず、中國の平和発展論と人類運命共同體論は徐々に受け入れられるようになっていこう。國連を中心とした真の多國間主義が、徐々に軌道に乗っていく可能性は大いにある。

4.米中主導の國際協(xié)調が始動するか?

ここ數年、米中対決が突出していたが、今回、米中協(xié)調が突出した。しかも、ケリー特使と解振華特使の何れもが、他の國をリードしていくような発言を記者會見で行った。それは溫室効果ガスの二大排出國としての対策リードではあるが、更に広い分野での協(xié)調も潛在的には含まれよう。オバマ政権の時、2G(米中主導)が米國から提起され、中國がそれを拒否した経緯がある。EUや日本が不快に感じるだろうし、米國が中國を対等に扱うことは考えられなかったからだ。しかし、現在は狀況が異なる。中國の國力は強化されたし、ここ數年の米中力比べで、中國はその存在感を示すことができた。今回、合意した宣言は、中國から見た場合、新型の米中大國関係、即ち「衝突?対決せず、相互尊重、協(xié)力ウインウイン」の體現に近い。當然、このような米中関係の発展を望むところである。

世界の憲兵にならない。これはオバマ政権、トランプ政権、バイデン政権の共通した認識である。ただ、バイデンは歐日同盟國及びインドと団結すれば、中國とロシアに対抗でき、抑え込むことができると考えた。しかし、それは中國の抵抗に遭い、不可能に近いと悟らざるを得なくなった。その上、中國は米國を敵視しておらず、対話の道を常に開いている。このような現実にバイデンは適応していかざるを得ないのである。

5.臺灣の平和的統(tǒng)一が現実的課題に

米國の內政干渉によって臺灣統(tǒng)一は妨げられてきた。今や西太平洋における力関係は根本的変化が生じ、中國が平和的に臺灣を統(tǒng)一する條件が整ってきた。米國は國內法(臺灣関係法)で三つの共同聲明に公然と違反しているが、それに対しては、「國家統(tǒng)一推進法」を制定し、三年ないし五年內に粛々と実行していくことが考えられる。臺灣の住民及び國際世論に道理を説き、世論を根本的に変えていくと同時に、「一國二制度」の仕組みを詰めていく。それは內政問題として両岸の人民によって制定されるものだが、周辺諸國の理解も得られるよう努力することが望まれる。臺灣問題が解決されれば、東アジアの平和と安定が保障され、敵を想定しない共同安全の東アジア安全保障體制が構築される。當然、朝鮮半島の平和環(huán)境も整備されていく。

10月9日、國民連合によって「対中國外交の転換を求める」と銘打った緊急集會が開かれた。そこで論者が強調した共通の論點は「敵をつくるな」ということであった。今、日本では中國を敵視した臺灣防衛(wèi)論が盛んだが、実に危険な動きである。臺灣の平和統(tǒng)一を促すことが、日本の安全保障につながる最良の道なのである。

6.日本外交のあるべき姿

日本外交は米中関係の従屬関數にあると言われる。即ち対米追隨外交である。戦後の歴史において、幾度か日本獨自の外交を展開しようとする動きはあったが、結局、実を結ぶことはなかった。今世紀に入って、中國は目覚ましい発展を遂げ、日本を大きく凌駕するようになった。すると、中國脅威論が優(yōu)勢を占め、ますます日米同盟強化、対中國抑止力強化の論調が世論の主流となった。とりわけ、ここ數年、米中対立が激化する中、日本の対中世論はますます悪化している。が、岸田政権が誕生し、米國と中國の雙方に精通する林芳正氏が外相となった。日本の対中強硬派は対中弱腰外交を懸念するが、経済界をはじめとする多くの國民は対中外交の改善を期待する。今回の米中共同宣言の発表は、林外相が新外交を展開する好材料となろう。

當面、外交の継続性を考慮し、対中抑止力強化のインド太平洋戦略を継承せざるを得ないであろうが、明らかにそれは実體のないものであり、有名無実化していく。それよりも、大平正芳、大來佐武郎両氏らが推進した、中國を含むアジア太平洋戦略こそが、時代に葉った日本の推進すべき戦略なのである。遠くない將來において、その転換が図られるであろう。

■筆者プロフィール:凌星光

1933年生まれ、福井県立大學名譽教授。1952年一橋大學経済學部、1953年上海財経學院(現大學)國民経済計畫學部、1971年河北大學外國語學部教師、1978年中國社會科學院世界経済政治研究所、1990年金沢大學経済學部、1992年福井県立大學経済學部教授などを歴任。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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