2021年後半より、中國(guó)の不動(dòng)産大手恒大グループの債務(wù)危機(jī)が露呈したことで、中國(guó)の金融機(jī)関は不動(dòng)産業(yè)界のリスクをより意識(shí)するようになった。このことは、不動(dòng)産企業(yè)の資金調(diào)達(dá)の全般的縮小を招き、不動(dòng)産業(yè)界全體の流動(dòng)性リスクを高めている。

■國(guó)民生活に関わる不動(dòng)産分野の取り組みを重視する中國(guó)政府

2020年秋に始まった不動(dòng)産規(guī)制は、不動(dòng)産企業(yè)の資産負(fù)債比率と銀行の信用供與に対するもので、中國(guó)政府が不動(dòng)産市場(chǎng)に対して行った最も厳しい規(guī)制だ。北京や上海の大都市では、不動(dòng)産価格が高く、一般市民にとって自分の家を購入することは「夢(mèng)のまた夢(mèng)」だ。こうした人々にとって、不動(dòng)産は切実な問題で、國(guó)民生活に関わる問題の一つといってよい。

ただ、「中國(guó)経済発展の原動(dòng)力は不動(dòng)産」と言われているように、とくに地方政府にとって、土地使用権収入は重要な収入源の一つだ。また、中國(guó)の土地財(cái)政は土地を売卻した「土地譲渡金」で財(cái)政ニーズを満たしていた。そのため、不動(dòng)産は経済発展に一定程度寄與した。

それだけでなく、不動(dòng)産は投機(jī)の対象になり、必要な人に行き渡らなくなった。このことは、國(guó)民生活の改善を重視する中國(guó)政府にとって、見過ごすことができない問題だ。

それを受けて、中國(guó)政府は不動(dòng)産価格を抑える措置を講じた。習(xí)近平國(guó)家主席の「住宅は住むためのもので、投機(jī)の対象ではない」という言葉が象徴しているように、高すぎる価格を抑制するための措置をとった。

2020年8月20日、住宅都市農(nóng)村建設(shè)部と中國(guó)人民銀行は重點(diǎn)住宅企業(yè)座談會(huì)を開き、不動(dòng)産金融プルーデンス管理制度を?qū)g施し、不動(dòng)産企業(yè)融資の市場(chǎng)化?規(guī)則化?透明性を強(qiáng)化することを述べるとともに、住宅企業(yè)融資の「3つのレッドライン」も発表した。それは、（1）仮受金を除いた資産負(fù)債率が70％を超える、（2）純負(fù)債比率が100％を超える、（3）現(xiàn)金短債比率が1倍以下、というものだ。この「レッドライン」を超えた企業(yè)は規(guī)制の対象となった。

政府の厳しい措置により、不動(dòng)産業(yè)界には以前のような勢(shì)いがなくなったことは確かだ。販売不振などの要因により、不動(dòng)産企業(yè)の債務(wù)不履行率が急激に上昇した。これを受けて、多くの専門家は「現(xiàn)行の規(guī)制政策の大幅な調(diào)整がなければ、今後數(shù)カ月で債務(wù)不履行率の急激な上昇や、より大きな金融リスクを引き起こす恐れがある」と警告した。

■政府の厳しい不動(dòng)産規(guī)制の緩和で資金調(diào)達(dá)に変化が起こる

その後、中國(guó)政府の厳しい措置が緩和され、金融機(jī)関が「不動(dòng)産業(yè)界の合理的な資金ニーズを満たす」ことを呼びかけた。その後、不動(dòng)産業(yè)界の資金調(diào)達(dá)狀況に好転の兆しが見られた。

11月24日付の「中國(guó)ネット」の不動(dòng)産関連の記事は、不動(dòng)産業(yè)界の研究機(jī)関中指研究院のデータを引用して、「11月23日時(shí)點(diǎn)で、同月の不動(dòng)産企業(yè)の融資総額は617億5000萬元に達(dá)し、前期比で10月総額の69．2%を超え、単月の融資規(guī)模は前期比で3カ月連続減少した後、上昇の勢(shì)いを見せた」と述べた。

また、同記事は、不動(dòng)産企業(yè)の信用債（政府以外の主體が発行する債券）発行規(guī)模は425億元に達(dá)し、主な融資手段となっていると指摘した。

不動(dòng)産情報(bào)サービスの克而瑞の統(tǒng)計(jì)によると、11月10日から21日までの間に、不動(dòng)産企業(yè)と都市投資企業(yè)（地方政府とその部門が財(cái)政支出、土地や株式などの資産を投じて設(shè)立した會(huì)社）25社が銀行間市場(chǎng)での資金調(diào)達(dá)を発表し、総額は288億元に達(dá)した。一部企業(yè)の融資はいち早く認(rèn)可された。例えば、ある中規(guī)模不動(dòng)産企業(yè)「小商品城」は11月10日、10億元の超短期融計(jì)畫を?qū)g施すると発表し、11月15日に発行が完了した。

克而瑞の専門家は「多くの企業(yè)による中短期債の資金調(diào)達(dá)計(jì)畫が実現(xiàn)したことは、現(xiàn)在の銀行間債券市場(chǎng)における資金調(diào)達(dá)の突破口が開いたことを示し、市場(chǎng)の信頼感を持たせた」と述べた。

一部の企業(yè)は社債発行に乗り出した。不動(dòng)産大手の保利発展と中國(guó)海外発展は11月22日、それぞれ98億元以下、29億元以下の社債を発行すると発表した。一部メディアは、保利発展の100億元近くに上る社債発行計(jì)畫の規(guī)模が市場(chǎng)への「カンフル剤」となったと報(bào)じた。

■資金調(diào)達(dá)が活発なのは國(guó)有企業(yè)、今後は民間企業(yè)の活性化がカギ

だが、今回の信用債発行は國(guó)有企業(yè)が中心だ。メディアの統(tǒng)計(jì)によると、20社余りの信用債の発行體（発行者）のうち、民間企業(yè)は1社だけで、殘りはすべて中央企業(yè)か地方國(guó)有企業(yè)だ。

中指研究院は、「現(xiàn)在、不動(dòng)産業(yè)界は依然として下降期にあり、業(yè)界全體のリスク抵抗力は顕著に低下しており、中央企業(yè)と地方國(guó)有企業(yè)は金融機(jī)関に好まれている」との見方を示した。

克而瑞が11月21日に発表した研究報(bào)告書によると、國(guó)有企業(yè)の資金調(diào)達(dá)はすでに回復(fù)し始めており、今後、債務(wù)発行主體が國(guó)有企業(yè)から他のタイプの企業(yè)に拡大できるかどうかはまだ今後の推移を見守る必要があるという。

民間不動(dòng)産企業(yè)の狀況は依然厳しい。公開資料によると、11月以降、多くの民間企業(yè)が自助努力による資金調(diào)達(dá)を行っており、資産売卻や株主からの借り入れ、債務(wù)期間の延長(zhǎng)などによって負(fù)債を減らしている。

申萬宏源証券集団股分有限公司が11月22日に発表した研究報(bào)告書によると、現(xiàn)在、市場(chǎng)の不動(dòng)産債に対する投資自信は依然として比較的脆弱であり、今回の住宅企業(yè)の融資は適度に「緩和」されたが、目的は安定を維持し、不動(dòng)産企業(yè)の債務(wù)危機(jī)の無秩序な拡張によるリスク拡大を避けることにある。同報(bào)告書は、「融資緩和は短期的に民間企業(yè)には波及しない可能性が高い」と分析する。

「公有制を主體とし、多種類の所有制経済を発展させる」のは中國(guó)の基本的方針だ。國(guó)民経済の命脈に関わる部分を國(guó)有企業(yè)が擔(dān)うことは中國(guó)の社會(huì)主義市場(chǎng)経済の重要な原則だ。國(guó)有企業(yè)の利益の一定程度が國(guó)家財(cái)政に繰り入れられるため、國(guó)有企業(yè)の発展は中國(guó)経済にとって重要だ。そのため、國(guó)有の不動(dòng)産企業(yè)の資金調(diào)達(dá)狀況が改善を見たのも、中國(guó)経済の発展で重要な役割を果たす國(guó)有企業(yè)の発展を促すためだ。

ただ、中國(guó)は民間企業(yè)も経済発展のための重要なファクターとしており、國(guó)有企業(yè)の発展がソ連式の社會(huì)主義モデルに戻るということは考えにくい。民間企業(yè)はまだ國(guó)有企業(yè)に比べ、融資などの面で不利な狀態(tài)にあるため、民間企業(yè)、とくに中小の民間企業(yè)の資金調(diào)達(dá)へのサポートが今後重要となってくるだろう。

■筆者プロフィール：吉田陽介

1976年7月1日生まれ。福井県出身。2001年に福井県立大學(xué)大學(xué)院卒業(yè)後、北京に渡り、中國(guó)人民大學(xué)で中國(guó)語を一年學(xué)習(xí)。2002年から2006年まで同學(xué)國(guó)際関係學(xué)院博士課程で學(xué)ぶ。卒業(yè)後、日本語教師として北京の大學(xué)や語學(xué)學(xué)校で教鞭をとり、2012年から2019年まで中國(guó)共産黨の翻訳機(jī)関である中央編訳局で黨の指導(dǎo)者の著作などの翻訳に従事する。2019年9月より、フリーライターとして活動(dòng)。主に中國(guó)の政治や社會(huì)、中國(guó)人の習(xí)慣などについての評(píng)論を発表。代表作に「中國(guó)の『代行サービス』仰天事情、ゴミ分別?肥満?彼女追っかけまで代行？」、「中國(guó)でも『おひとりさま消費(fèi)』が過熱、若者が“愛”を信じなくなった理由」などがある。