世界最大の経済連攜RCEPが発効=日本のGDP、2.7%アップも―米中のTPP加盟促せ

八牧浩行    2022年1月1日(土) 7時0分

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日中韓と豪州、ニュージーランド、ASEAN10カ國の合計(jì)15カ國が加盟するRCEP協(xié)定が1月1日発効した。低潛在成長率にあえぐ日本にとって貴重な「追い風(fēng)」になると期待されている。寫真は寧波の北倫港。

日中韓とオーストラリア、ニュージーランド、東南アジア諸國連合(ASEAN)10カ國の合計(jì)15カ國が加盟する地域的包括的経済連攜(RCEP)協(xié)定が1月1日発効した。世界最大の多國間自由貿(mào)易圏協(xié)定(FTA)で、日本が中國、韓國との間で締結(jié)する初めての協(xié)定となる。関稅削減や統(tǒng)一ルールにより自由貿(mào)易を推進(jìn)する枠組みで、低潛在成長率にあえぐ日本にとって貴重な「追い風(fēng)」になると期待されている。

RCEPは、域內(nèi)の人口が約22億7千萬人(19年)、國內(nèi)総生産(GDP)が約25兆8千億ドル(19年)といずれも世界の3割超を占める。米國が抜けた環(huán)太平洋経済連攜協(xié)定(TPP)を上回る巨大な自由貿(mào)易圏協(xié)定となり、日本企業(yè)の進(jìn)出や輸出入の促進(jìn)など大きな効果が見込める。日本政府は協(xié)定発効に伴う関稅撤廃?削減などで部品や素材の輸出が増え、日本のGDPを約2.7%押し上げる効果があると試算する。

全體として工業(yè)製品の91%の品目で関稅を即時または段階的に撤廃する。TPPの99%より低い水準(zhǔn)だが、中國向けは無稅品目の割合が8%から86%に、韓國向けは19%から92%と大幅に拡大する。

日本から輸出する自動車部品などの工業(yè)製品にかかる関稅は1月から段階的に下がり、最終的には品目ベースで92%が撤廃される。中國向けは自動車のエンジン部品のほとんどで將來的に撤廃。韓國向けは自動車用電子部品やゴルフクラブなどで撤廃される。

◆輸出入とも関稅下落へ

一方で日本が輸入する商品も徐々に関稅が下がる。ただ、農(nóng)林水産品に課す関稅の撤廃率は49~61%でTPPの82%より大幅に低く、國內(nèi)農(nóng)業(yè)の保護(hù)を図る。コメや麥といった農(nóng)産物の重要5項(xiàng)目は関稅の削減、撤廃の対象から外した。投資ルールでは、政府が進(jìn)出企業(yè)に技術(shù)移転を要求することを禁じ、企業(yè)の自由な経済活動を目指している。

松野博一官房長官は「世界の成長センターであるこの地域とのつながりがこれまで以上に強(qiáng)固になり、日本と地域の経済成長に寄與する」と説明。RCEP協(xié)定を通じて「ルールに基づく経済秩序の形成や參加國のルール順守に主導(dǎo)的役割を果たしていく」と語っている。

中國は一昨年9月、環(huán)太平洋経済連攜協(xié)定(TPP)への加盟も正式に申請した。中國がRCEPよりハイレベルなTPPに加盟するためには、一層の大膽な改革や開放が不可避だ。中國政府はTPP加盟申請の目的として(1)持続的な改革の深化と開放拡大(2)自由貿(mào)易に対する支持および地域の経済一體化や貿(mào)易投資の自由化?円滑化の積極的推進(jìn)(3)世界経済の回復(fù)?成長への貢獻(xiàn)―などを表明している。

◆中國、TPP加盟で「改革」斷行を

RCEPでのルールを中國がしっかりと履行できるかどうかが、TPP加盟交渉に入るための試金石にもなる。TPP加盟のハードルは高いが、世界最大の市場を有する中國の加盟が実現(xiàn)すれば、貿(mào)易立國の日本はじめ加盟國にとってメリットは多大。RCEPと併せ、自由貿(mào)易圏はさらに拡大する。

2020年11月に習(xí)近平國家主席がTPP加盟の意向を表明してから、中國は加盟國への地ならしを始め、既にニュージーランド、シンガポールをはじめとする加盟國との話し合いで進(jìn)展があったという。中國と領(lǐng)土問題を抱えるベトナムも、経済分野では対立を望んでいないとされる。コロナ禍で経済が打撃をうける中、各國とも成長の種を希求している。

TPPを離脫した米國のアジアでの存在感が低下する中、中國はTPP加盟を通じて経済圏の拡大とアジア太平洋地域での影響力増大を狙う。TPPを外圧として國內(nèi)改革のテコに使いながら、米國抜きのアジア経済圏の枠組みを主導(dǎo)する思惑もある。

一方で、TPPの高い自由化の水準(zhǔn)を中國がクリアできるか、懐疑的な見方も根強(qiáng)い。TPP協(xié)定では、國有企業(yè)と他の加盟國の企業(yè)を差別してはならないが、中國は國有企業(yè)に補(bǔ)助金を投じるなど様々な形で優(yōu)遇。政治と経済が密接不可分の政治體制のもとで、國有企業(yè)の改革も容易ではないようだ。他にもTPPが求める貿(mào)易?投資ルールとの間にはまだ大きな開きがある。

ただ中國が舊來の「體質(zhì)」から脫皮し、國際ルールに従えば、世界経済の発展に向けメリットは多大。日本にとって最大の貿(mào)易投資國?中國の「脫皮」と「さらなる自由化」は、人口減少と低成長に直面する日本の経済界にとって歓迎すべきことである。

すべての既存ルールの順守?履行、最も高い水準(zhǔn)の市場アクセスのオファー供與を固守するという條件の下でTPP加盟國が増えるのは日本にとって望ましい。他のメンバー國とともに、加盟手続きや交渉を通じ、中國政府に経済改革と政策の透明化を働きかけていくべきだ。

◆米國にTPP「復(fù)帰」を促せ

TPPにはもともと中國を牽制し、日米でアジアの通商ルールづくりを主導(dǎo)する狙いがあった。ところが、米國がトランプ前政権時代に離脫。現(xiàn)在のバイデン政権にとっても、TPPへの復(fù)帰反対論が多い米國世論の中で「復(fù)帰」を打ち出すのは難しく、身動きが取れない狀況にある。世界の成長センターであるアジア太平洋地域における米國の存在感のさらなる低下に繋がるのは必至。世界の経済発展に向け、米國の早期の「復(fù)帰」を促したい。

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財(cái)界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機(jī)ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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