広東省深セン市に本拠を置く不動(dòng)産開発會(huì)社の恒大集団を立ち上げた許家印氏は、事業(yè)に成功してから故郷に多大な寄付をし続けた。故郷では、許氏の行為をたたえる碑が作られた。しかし、恒大集団の経営が危機(jī)的狀況になると碑文の一部が何者かによって削られてしまった。

許家印氏は河南省周口市郊外の農(nóng)村で生まれた。幼少期には極めて厳しい境遇にあった。許氏が1歳の時(shí)、母親は敗血癥になった。家が貧しかったために治療費(fèi)に回す金銭がなく、母親はそのまま亡くなった。許氏は父方の祖母に育てられることになった。

祖母も貧しかった。手作りの酢を売ることでわずかな金を稼ぎ、許氏を養(yǎng)った。そんな境遇にあって、許氏は「上昇志向」を持ち続けた。勉學(xué)に勵(lì)み、武漢鉄鋼學(xué)院（現(xiàn)、武漢科技大學(xué)）に入學(xué)した。大學(xué)統(tǒng)一入試の成績(jī)は、周口市內(nèi)で第3位だったという。中國(guó)で、農(nóng)村部出身者が大學(xué)に進(jìn)學(xué)するのは、並大抵のことではない。

許氏が大學(xué)を卒業(yè)した當(dāng)時(shí)の中國(guó)では、卒業(yè)生は自分で職業(yè)を選ぶことを許されず、政府の「分配」で就職先が決められた。許氏は河南省の鉄工場(chǎng)で技術(shù)者として働いた。中國(guó)ではその後、職業(yè)を自由に選択できるようになった。許氏は鉄工場(chǎng)を退職し、1996年に深セン市で不動(dòng)産開発會(huì)社を立ち上げた。後の恒大集団だ。

創(chuàng)業(yè)當(dāng)初は従業(yè)員が20人程度だったが、恒大集団は急速に成長(zhǎng)した。2009年には香港証取に株式上場(chǎng)。2017年時(shí)點(diǎn)で、グループ全體の従業(yè)員は10萬(wàn)人を超えていた。また、同年には許氏の資産総額が中國(guó)で第1位と評(píng)価された。

大資産家になった許氏は、故郷への「恩返し」を忘れなかった。恒大集団を創(chuàng)業(yè)した1998年には、小學(xué)校設(shè)立のために100萬(wàn)元（現(xiàn)行レートで約1800萬(wàn)円、以下、換算レートはすべて現(xiàn)行のもの）を拠出した。2000年には高校設(shè)立のために1億元（約1兆8000億円）を拠出した。2016年に許氏が改めて5億元（約9兆円）を拠出することで建設(shè)された高校は、授業(yè)用、あるいは寮や図書館などの建物が20棟以上あり、生徒1萬(wàn)人以上が學(xué)ぶ大規(guī)模な學(xué)校だ。

許氏はそれ以外にも、道路や病院の建設(shè)、さらには貧困者支援施設(shè)などの設(shè)立のために故郷に巨額の資金を拠出し続けた。許氏の出身地である周口市太康県は「國(guó)家級(jí)貧困県」に指定されたこともある貧しい地域で、許氏の寄付がなければ、公共施設(shè)が次々に設(shè)立されることは考えられなかったという。

許氏は住民個(gè)人に対しても、1世帯當(dāng)たり3000元（約1萬(wàn)3000円）という「ボーナス」を支給したり、米や食用油をプレゼントするなどもした。そして、許氏の故郷には許氏の功績(jī)をたたえる大きな石碑が建てられた。

しかし、許氏が率いる恒大集団は2020年、深刻な経営危機(jī)に見(jiàn)舞われた。直接のきっかけは中國(guó)政府が打ち出した、不動(dòng)産業(yè)界の過(guò)熱を抑えるための融資條件を極端に厳しくする政策だったとされる。

資金繰りが極端に厳しくなった恒大集団は2020年秋には扱う物件の全てについて、価格を3割引きにするなどしたが、2020年6月末には、自己資本4110億元（約7兆5000億円）に対して、負(fù)債総額は1兆9700億元（約35兆7000億円）に達(dá)してしまった。許氏は同年8月に、恒大集団の董事長(zhǎng)（會(huì)長(zhǎng)）を退任した。

その後、許氏の故郷である周口市太康県內(nèi)に建てられた、許氏の功績(jī)をたたえる石碑に刻まれた文字の一部が削られていたことが判明した。削られたのは、とりわけ大きく刻まれた「流芳百世（末代まで名を殘す）」の4文字の部分だ。（翻訳?編集/如月隼人）