<日中100人 生の聲>人間到る処青山有り―高島正人 元『地球の歩き方』プロデューサー

和華    2022年2月15日(火) 20時(shí)50分

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會社がなくなったときには、定年まであと數(shù)年を殘して急にリタイアが前倒しになった気分だったが、実際にはそうでもなかった。寫真は集団接種會場での誘導(dǎo)。

會社がなくなった。

2020年11月16日15時(shí)、『地球の歩き方』を制作、発行していたダイヤモンド?ビッグ社は事業(yè)譲渡を発表、同年12月をもって社員全員を解雇し、清算することとなった。

第一報(bào)は出先の武蔵浦和駅で受けたメールだった。「【重要】社員説明會の開催について」と題されたメールには「15時(shí)より大會議室にて、當(dāng)社の重要事項(xiàng)に関する社員説明會を開催いたします」と簡素な文章が綴られていた。15時(shí)まであと4分という間際の時(shí)間に送られてきたこのメールを見た瞬間、わたしは「潰れたか、売られたか」と直感した。

思い起こせば、2020年の1月下旬に、『地球の歩き方D08チベット』の打ち合わせを行って取材航空券を押さえたものの、現(xiàn)地観光局がすべての観光事業(yè)の停止を決定、都市間の移動制限や施設(shè)の閉鎖を発表したことを受けてキャンセル?!篋08チベット』改訂版の発行は見送りとなった。続いて、既に制作を始めていた『D01中國』の改訂も延期。數(shù)日內(nèi)には中國関連の歩き方すべての発行を無期延期とする會社の判斷が下された。

同年3月にモンゴルとミャンマーの改訂作業(yè)を終えたわたしは、擔(dān)當(dāng)する中國全土と、ここ10年以上政情不安定で塩漬けになっているパキスタンを含めてすべてのガイドブック改訂業(yè)務(wù)を失ったため、4月に編集部から編集部付けの管理部門へと異動になった。編集部全體を改組せずわたしだけを外したのは、會社はまだこのときダメなのは中國だけで、それ以外のエリアへの渡航までがすべて不可能になるとは考えていなかったからだろう。しかしその見立ては甘く、先進(jìn)國と呼ばれる國々が思いのほか感染癥に脆いことがはっきりしたときには、もう出版部門全體の売上は激減し、毎年改訂を重ねていくために必要な取材へ出ることもできなくなっていた。

再販制度に守られる出版業(yè)界は、本を取次に預(yù)ければ、預(yù)けた時(shí)點(diǎn)で現(xiàn)金が入ってくる仕組みになっている。売れずに戻ってきたら返金するにせよ、本を刷り続けてさえいれば當(dāng)面の現(xiàn)金は入ってくる。この業(yè)界が自転車操業(yè)と言われる所以だが、取材に行けず改訂版を出せないとなると、ペダルを漕ごうにも漕ぐ自転車が存在しない?,F(xiàn)金がショートすれば即倒産なので、そうなる前に買い手を見つけて売ったのだ。

売られてしまったものは致し方ない。これまでビッグ社を支えてくださっていた外部スタッフのみなさんに対する申し訳ないという思いはあるものの、自分自身はもう隠居でいいと思った。落語に出てくる長屋のご隠居、あれいいじゃないの。根が楽観的で助かった。


ただ、このときのわたしには、簡単に手を離すわけにはいかない請負(fù)仕事が殘っていた。北海道の人気旅番組をガイドブック風(fēng)に編み直した小冊子を2冊作る約束で動いていたのだ。1冊目が出たところで會社がなくなり、事業(yè)の買い取り先である新會社に2冊目をやる気があるのかないのか判然としないため、不透明になってしまったのだ。コラボ先には迷惑をかけたくない。滯りなく出してから手を離さないと寢覚めが悪い。わたしは新會社の「新入社員」募集の場へ赴き、2冊目の面倒を見させてほしいと依頼した。結(jié)果、業(yè)務(wù)委託として無事に納品を済ませることができた。意を汲んで関わらせてくれた関係者のみなさまには、この場を借りて感謝を申し上げたい。

このように、中國をきっかけとして自らを取り巻く環(huán)境が一変したのは、わたしが初めて中國の地を踏んだ1995年からちょうど25年目だった。その當(dāng)時(shí)は25年にわたってなんらかの形で関わるとは思っていなかったたわけで、縁を感じざるを得ない。これからもおそらく関わりは続くだろう。そのとおり今も、以前より親交のあったイベント運(yùn)営事務(wù)局からはポストコロナを睨んだ中國大陸での日中文化交流イベントの、中國からのインバウンド旅行をおもに手がけていた會社の社長からはオンラインによる越境醫(yī)療サービスやツアー造成の、それぞれお手伝いをするお話しをいただいて関わりが続いている。

並行して、かつてガイドブック制作でお世話になった編集プロダクションさんからは新しく立ち上げるウェブ事業(yè)、フリーペーパーを作り続けている友人からは誌面の校正、とあるイベント會場で會った広告會社の社長からは自社の営業(yè)や進(jìn)行管理、制作全般となぜかポップコーンの移動販売、さらに今話題のワクチン接種について集団接種會場の運(yùn)営――とそれぞれのお手伝いをさせていただき、就職活動も合わせてなかなか多岐にわたる日々を送るようになった。

無職になったら長らく積んでいた本でも読んで、久しぶりにギターでも觸って、親の実家の片付けでもしながら、昨年秋に颯爽と登場した孫と戯れつつのんびり過ごすものと思っていたのだが、むしろ自分のことに割く時(shí)間はほとんどない。

會社がなくなったときには、定年まであと數(shù)年を殘して急にリタイアが前倒しになった気分だったが、実際にはそうでもなかった。今は、お聲掛けをいただける間、それをありがたく受け取って、もう少しこの地での「出稼ぎ」を続けようという気持ちでいる。

環(huán)境に言うことはない。何ができるか、何をするか、ただそれだけなのだ。

※本記事は、『和華』第31號「日中100人 生の聲」から転載したものです。また掲載內(nèi)容は発刊當(dāng)時(shí)のものとなります。

■筆者プロフィール:高島正人(たかしままさと)


元『地球の歩き方』プロデューサー。1964年、大阪生まれ。1987年株式會社ダイヤモンド?ビッグ社大阪支社に入社、1997年東京本社へ異動、『地球の歩き方』編集部に配屬。2020年12月31日をもって離職。2021年7月現(xiàn)在、ワクチン接種の予約が取れないまま人生2回目の東京オリンピック?パラリンピック(初回記憶なし)を傍観中。

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