北京冬季オリンピックの全競(jìng)技が終了した。

2018年、平昌オリンピックの中國(guó)メダル獲得數(shù)は、金1、銀6、銅2、國(guó)別ランキング16位だった。目立ったスター選手は存在せず、盛り上がりを欠いた。今回の北京オリンピックでは、金9、銀4、銅2、國(guó)別ランキング3位に“躍進(jìn)”した。競(jìng)技成績(jī)に限れば、まずまずだろう。この結(jié)果は、中國(guó)に何をもたらしたのだろうか。

■中國(guó)のスキー…人口の1％未満

まず中國(guó)のスキー産業(yè)を概観してみよう。昨年発表の「2021－2027年中國(guó)滑雪行業(yè)供需態(tài)勢(shì)分析及市場(chǎng)運(yùn)行潛力報(bào)告」という資料によれば、2022北京冬季オリンピックの成功により、中國(guó)スキー産業(yè)は爆発的に発展し、黃金期を迎えるだろう、とある。以下は2015年～2020年の分析である。（スキーヤー數(shù)/年間延べ滑走人數(shù)/年平均回?cái)?shù)）

2015年 960萬(wàn)人 1250萬(wàn)人 1．3回

2016年 1133萬(wàn)人 1510萬(wàn)人 1．3回

2017年 1210萬(wàn)人 1750萬(wàn)人 1．4回

2018年 1320萬(wàn)人 1970萬(wàn)人 1．5回

2019年 1305萬(wàn)人 2080萬(wàn)人 1．6回

2020年 1051萬(wàn)人 1724萬(wàn)人 1．6回

人口比では、かなり少なく1％にも満たない。シーズンで1回か2回、滑るだけの人が大半だ。しかもコロナ過(guò)の前年2019年には、すでに頭打ちとなっていた。

さらにスキー人口は、地方の偏りが大きい。2019年の省別スキー場(chǎng)、延べ入場(chǎng)人員は、河北省243萬(wàn)人、吉林省216萬(wàn)人、北京189萬(wàn)人、黒竜江省186萬(wàn)人、新彊ウイグル自治區(qū)122萬(wàn)人、浙江省111萬(wàn)人、內(nèi)モンゴル自治區(qū)101萬(wàn)人、河南省96萬(wàn)人、山西省95萬(wàn)人、山東省88萬(wàn)人、という順だった。浙江省以外は、みな北方だ。また一線級(jí)都市（北京、上海、深セン、広州）の住民が全體の38．7％を、それに続く新一線都市（15都市）で19．4％を占める。都會(huì)っ子の新しいレジャーである。

■スキー市場(chǎng)規(guī)?！?020年初の減少

トータルスキー市場(chǎng)規(guī)模とそのうちの裝備市場(chǎng)規(guī)模、訓(xùn)練市場(chǎng)規(guī)模は以下の通り。

2015年 420億9000萬(wàn)元 48億元 50億1000萬(wàn)元

2016年 546億5000萬(wàn)元 68億元 59億3000萬(wàn)元

2017年 668億3000萬(wàn)元 84億7000萬(wàn)元 66億1000萬(wàn)元

2018年 806億7000萬(wàn)元 105億6000萬(wàn)元 68億9000萬(wàn)元

2019年 887億1000萬(wàn)元 117億5000萬(wàn)元 69億3000萬(wàn)元

2020年 836億6000萬(wàn)元 126億9000萬(wàn)元 65億1000萬(wàn)元

2020年は5．8％減、コロナ過(guò)の影響で初の減少に見(jiàn)舞われた。ただし用具などの設(shè)備市場(chǎng)は右肩上がりだ。訓(xùn)練市場(chǎng)は停滯している。熟練者が少なく、指導(dǎo)者不足は明らかだ。例えば、上海のスキー初心者の場(chǎng)合、吉林省や黒竜江省のスキー場(chǎng)へ行くより、設(shè)備や指導(dǎo)者の整った日本のスキー場(chǎng)へ行く方が手っ取り早い。上海人には、感性からしても東北3省の田舎より、日本の方が合うだろう。実際、それら中國(guó)人スキーヤーたちで、2019年までの日本のゲレンデは大いににぎわった。2020年のコロナ過(guò)はこれも封じられ、中國(guó)スキー界に數(shù)字以上の後退をもたらした。北京オリンピックは巻き返しの契機(jī)となったのだろうか。

■「冰雪経済」…バランスの取れた発展へ

その評(píng)価はすでに出ている。オリンピック期間中、「中國(guó)『冰雪経済』の大きな配當(dāng)が明らかに」と題する、成功を先取りする記事が出た。北京オリンピックによって加熱した氷雪経済は、科學(xué)技術(shù)、新エネルギーなどの発展を促し「中國(guó)制造」を推進(jìn)、今後中國(guó)経済に多額の配當(dāng)収入をもたらす、という內(nèi)容である。

2015年7月の北京2022年冬季オリンピック招致決定後、中國(guó)は冬季スポーツへの參加者3億人を目標(biāo)に掲げた。それは2021年10月に3億4600萬(wàn)人となり、達(dá)成された。また先述のスキー産業(yè)だけではなく、冬季レジャー、大會(huì)、競(jìng)技場(chǎng)運(yùn)営、設(shè)備製造まで含めた「冰雪経済」全體では、2015年の2700億元から、2020年には6000億元となり、経済システムとして一定の規(guī)模に到達(dá)した。

清華大學(xué)體育産業(yè)発展研究センターによれば、その中國(guó)の冰雪経済は、バランスが取れているという。競(jìng)技の人気が製造業(yè)の技術(shù)力を押し上げ、発展へ導(dǎo)き、さらに多くの業(yè)態(tài)との融合も期待できる。高度なスポーツ訓(xùn)練需要も見(jiàn)込め、さらに広範(fàn)な旅行需要を喚起するだろう。

■北京オリンピック…成功評(píng)価は決定済み

オンライン旅行大手「去哪児」によれば、今年の春節(jié)、北京のスキー場(chǎng)の売り上げはコロナ前2019年の2倍となった。上海や杭州など南方の諸都市でも屋內(nèi)競(jìng)技場(chǎng)が増加を続けている。また、アリババの越境EC「速売通」によれば、2021年第4四半期の中國(guó)スキー用品の海外売上は60％伸び、100の國(guó)と地域をカバーした。

さらにオリンピックは中國(guó)科學(xué)技術(shù)の「練兵場(chǎng)」でもあった。例えばデジタル人民元はオリンピック関連の交通、飲食、宿泊、ショッピングなど40萬(wàn)を超えるシーンをカバーした。スマートレストランでは「ロボコック」の作った料理を提供し、関係者を驚かせた。これら技術(shù)は、中國(guó)制造のスポーツ用品とともに、華々しく國(guó)際舞臺(tái)にお披露目した。

北京冬季オリンピックでは判定やドーピングなどの問(wèn)題が噴出、國(guó)際的評(píng)価は定まりそうにない。しかし上記のように、中國(guó)では「北京オリンピックは成功、冰雪経済はオリンピックによって加速した」。無(wú)観客、関係者隔離のバブル方式を前提とすれば、想定の範(fàn)囲內(nèi)だったのだろう。中國(guó)オリンピック委員會(huì)も、個(gè)々の質(zhì)問(wèn)には答えず、全體での成功を強(qiáng)調(diào)した。メディアは忠実にその評(píng)価を補(bǔ)強(qiáng)しているように見(jiàn)える。しかし、冬季スポーツがしっかり根ざし、冰雪経済が本當(dāng)に発展したかは、來(lái)シーズンを待たなければならないだろう。

■筆者プロフィール：高野悠介

1956年生まれ、早稲田大學(xué)教育學(xué)部卒。ユニー株（現(xiàn)パンパシフィック）青島事務(wù)所長(zhǎng)、上海事務(wù)所長(zhǎng)を歴任、中國(guó)貿(mào)易の経験は四半世紀(jì)以上?，F(xiàn)在は中國(guó)人妻と愛(ài)知県駐在。最先端のOMO、共同購(gòu)入、ライブEコマースなど、中國(guó)最新のB2Cビジネスと中國(guó)人家族について、ディ－プな情報(bào)を提供。著書(shū)：2001年「繊維王國(guó)上?！箹|京図書(shū)出版會(huì)、2004年「新?繊維王國(guó)青島」東京図書(shū)出版會(huì)、2007年「中國(guó)の人々の中で」新風(fēng)舎、2014年「中國(guó)の一族の中で」Amazon Kindle。