香港は、新型コロナウイルスの1日の新規(guī)感染者數(shù)が5萬(wàn)6000人を突破し、感染拡大が止まらない。先が見(jiàn)えない中で、外出する市民は減り、店を閉める飲食店や小売店が後を絶たない。公共交通機(jī)関も、間引き運(yùn)転や運(yùn)行中止を余儀なくされる事態(tài)となった。一方で、ロックダウンのうわさが絶えず、スーパーや薬局などでは市民による必需品の買い占めが続くなど、街の様子は一変し、不安と混亂の様相を帯びている。

3日現(xiàn)在、新型コロナ感染者數(shù)の累計(jì)は35萬(wàn)557人、死者1366人。このうち、昨年12月末にオミクロン株の市中感染で始まった第5波のわずか2か月余りだけで、感染者數(shù)の合計(jì)は33萬(wàn)7926人、死者は1118人に上る。

実際にはこの第5波の感染者數(shù)はもっと多いと言われている。無(wú)癥狀で自分でも気づかない人はもちろんだが、市販の検査キットで個(gè)人的に感染を確認(rèn)しても、軽癥な人の中には當(dāng)局に申告しない人もいるからだ。今や隔離や治療のための施設(shè)や従事者が不足し、対象者全員を収容できないため、軽癥者は自宅で待機(jī)や隔離を強(qiáng)いられる。あるいは、申告して、かえって病院の屋外でベッドに寢かされたり、人手不足で行き屆いた介護(hù)が期待できない隔離施設(shè)に送り込まれたりするぐらいなら、黙って自宅で療養(yǎng)した方がいいと考えている軽癥者もいるのだ。ある専門家は、第5波が始まってから2月末までに、すでに170萬(wàn)人が感染していると試算している。

人が消えて閑散とした香港島の繁華街?銅鑼灣

それにしても、オミクロンの感染力はすごい。2月25日に1日の新規(guī)感染者が1萬(wàn)人を超えて驚いたが、そのわずか5日後の3月2日には5萬(wàn)5000人を突破。翌3日は5萬(wàn)6827人と過(guò)去最高を更新した。老人ホームでの集団感染が相次ぎ、死者も80歳以上の高齢者を中心に急増している。

3月に入って私の周辺でも感染確認(rèn)が相次いでいて、ウイルスが忍び寄ってきている感じだ。市民の間では、「もはや自分が感染するのは時(shí)間の問(wèn)題」と、腹をくくった人が増えている。

そんな中、先週末、香港島と九龍半島の繁華街を歩いてみた。人影はすっかり消え、本來(lái)なら観光客や市民でにぎわう九龍半島のチムシャツイ界隈はシャッターを閉めた店が軒を連ね、悲壯感しかなかった。普段は市民でにぎわう香港島の銅鑼灣も同様で、ガランとしていた。

九龍半島の繁華街?チムシャツイのメーン通りでシャッターを閉める店

閉まったシャッターには、「従業(yè)員に感染者が出たので休業(yè)します」とか「コロナの感染狀況がひどいので、みなの健康を考えて3月いっぱい休業(yè)します」といった案內(nèi)が張ってある。今香港では、こうした光景が、繁華街に限らずあちこちで見(jiàn)られるようになった。感染対策だけでなく、外出する人が減っているのに店を開(kāi)けても商売にならない、との判斷もあるのだろう。テナントが去り、借り手を探している空店舗もそこかしこに點(diǎn)在している。

従業(yè)員の感染で臨時(shí)休業(yè)を伝えるマクドナルド

3月31日まで休業(yè)する張り紙をして店を閉めた飲茶の店

人が行列を作っているところはというと、PCR検査やワクチンの接種會(huì)場(chǎng)。そして、食料や生活必需品を売る小売店だ。ただし、すれ違う人は、みな無(wú)表情。フェイスシールドをつけて徹底防備で外出する市民の姿も目立ってきた。

ワクチン接種のために行列を作る市民

フェイスシールドを付けて外出する市民が増えてきた

感染の急拡大を受けて、業(yè)種を問(wèn)わず経済活動(dòng)を縮小する動(dòng)きも相次いでいる。大手スーパーでは午後5時(shí)で閉店する店舗も出てきた。銀行は、行員が感染した支店を次々と閉鎖。開(kāi)いている支店では客が行列を作っている。職員が感染した郵便局も隨時(shí)閉鎖するから、郵便物の遅配も出ている。ある大手ファストフード店は、ほとんどのチェーン店で日中も持ち帰りサービスだけに切り替えた。3月いっぱい休業(yè)を決めた飲食店もある。地下鉄、路線バス、フェリーは、従業(yè)員の感染者が増えたことなどから、運(yùn)行の見(jiàn)直しを余儀なくされた。

香港島の繁華街?銅鑼灣で借り手を待つ空き店舗

市民はというと、ロックダウンのうわさに敏感に反応して食料品や薬といった生活必需品の買い占めに走り、スーパーの野菜や生鮮食品、冷凍食品や即席めんなどのコーナーは根こそぎ空っぽ狀態(tài)だ。政府がうわさを打ち消しても、買い占め行為は続いている。香港―広東省間を走るトラック運(yùn)転手の感染例が相変わらず増えていて広東省からの物資のトラック輸送が滯り、中でも野菜の高騰は続いている。頭痛薬や喉薬なども店頭から消えた。

売り切れ狀態(tài)の風(fēng)邪薬の棚

市民がこれほど必需品の確保に走るのは、極力外出を控えたいだけでなく、政府が3月に実施するとしている約740萬(wàn)人の全市民を?qū)澫螭摔筏縋CR検査（以下、全民検査）を行う際に、ロックダウンをするのではないかとの思いがあるからだ。

林鄭月娥行政長(zhǎng)官は、香港全域のロックダウンは否定したが、過(guò)去に発表されたコロナ対策の計(jì)畫や方針が後で変更されることが度々出てきていることや、政府高官や醫(yī)療関係者、ウイルス専門家らの言うことがバラバラで、市民は混亂し、自己防衛(wèi)に神経をとがらせているからだ思う。

その全民検査だが、香港政府が中國(guó)政府に追隨して掲げている「ゼロコロナ政策」に基づいて行う。中國(guó)政府の支援も取り付けて、中國(guó)本土から支援部隊(duì)が続々と乗り込んできている。検査キットや食料などの物資の提供を受ける手はずも整えた。ただ、感染者を隔離するのに十分な施設(shè)が用意できておらず、今、全民検査を?qū)g施したところで、隔離できなければ意味がないという狀況だ。このため、猛スピードで施設(shè)を建設(shè)中といった具合で、感染拡大ペースに追い付けず、後手に回って迷走しているのが実情だ。オミクロンを沈靜化させるのに、中國(guó)頼みになってきた香港政府の姿を見(jiàn)ていると、中國(guó)政府による香港支配が一段と進(jìn)みそうな気配でもある。

ほぼ空っぽになったスーパーの果物棚

こうしている間にも感染者數(shù)が増え続ける狀況に、市民は、「全民検査を受ける頃には、もう香港市民全員が感染しているだろう」と、政府の対応を皮肉っている。第5波が始まってから2か月が過(guò)ぎてもピークが見(jiàn)えない狀況に、「今の中途半端な感染対策をだらだらと続けて経済を麻痺させるよりも、2週間ぐらいロックダウンした方がよっぽど『ゼロコロナ』の実現(xiàn)が早いのに」と、ロックダウンを望む聲も出てきている。

こんな近頃の香港の社會(huì)や街の雰囲気が、2003年に香港で重癥急性呼吸器癥候群（SARS）が流行し、「鬼城（ゴーストタウン）」と言われたあの時(shí)に酷似してきていると感じる市民は少なくない。（了）

スーパーの即席めんコーナーもほぼ空に

平日の晝時(shí)でもすでに野菜は売り切れだった

■筆者プロフィール：野上和月

1995年から香港在住。日本で産業(yè)経済紙記者、香港で在港邦人向け出版社の副編集長(zhǎng)を経て、金融機(jī)関に勤務(wù)。1987年に中國(guó)と香港を旅行し、西洋文化と中國(guó)文化が共存する香港の魅力に取りつかれ、中國(guó)返還を見(jiàn)たくて來(lái)港した。新聞や雑誌に香港に関するコラムを執(zhí)筆。読売新聞の衛(wèi)星版（アジア圏向け紙面）では約20年間、寫真付きコラムを掲載した。2022年に電子書籍「香港街角ノート 日常から見(jiàn)つめた返還後25年の記録」（幻冬舎ルネッサンス刊）を出版。

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