ウクライナ危機(jī)をめぐりインドはロシアとの友好関係維持に努める一方、対露非難で共同歩調(diào)を迫る米國にも巧みに対応するなど、獨(dú)自のバランス外交を展開している。

◆「対露関係に十分な気遣い」

周知の通り3月2日、國連総會(huì)の緊急特別會(huì)合はウクライナ情勢(shì)に関しロシアの侵攻を糾弾し、軍部隊(duì)の即時(shí)撤退を求める決議案を圧倒的賛成多數(shù)で採択した。これより先、2月末の安保理では同様の対露非難決議案がロシアの拒否権行使で否決された。いずれの場(chǎng)合もインドは中國同様、採決に際し棄権した。ロシアの侵攻にインドが表立って反対を表明しない理由について、同國にとってロシアが最大の武器供給國であるためとの多くの指摘があるが、その通りだろう。

実はもう一つの理由もある。インドとパキスタンの根本的対立點(diǎn)であるカシミール地方の領(lǐng)有権問題でロシアがインドを支持していることも見逃せない。プーチン露大統(tǒng)領(lǐng)は昨年12月、ニューデリーでモディ印首相と首脳會(huì)談を行い、軍事技術(shù)支援を柱とする幅広い分野での協(xié)力強(qiáng)化で合意しており、國連外交の舞臺(tái)でも雙方の協(xié)力が裏付けられた形だ。

インドの対外貿(mào)易を研究するジャワハルラール?ネルー大のビスワジット?ダール教授が現(xiàn)地メディアに語ったところによれば、モディ政権は歐米の制裁によるロシアへの影響を軽減するため、印露間の貿(mào)易決済をインドのルピーとロシアのルーブルで行うことを検討しているという?！阜峭恕雇饨护虺à胜椁?、しばしばロシア寄りの姿勢(shì)を見せてきたインドは「対露関係を損なわないよう十分気を遣っている」（日本のインド問題専門家）との見方は的を射たものと言えよう。

◆「インドの重要性」を盾に米の圧力かわす

その一方、インドが米中対立が続く國際環(huán)境を利用して自國の國益確保を図ろうとする意図も見え隠れする。國連を舞臺(tái)とする対ロシア包囲網(wǎng)の形成に向けバイデン米政権がインドに圧力を加えたのは確か?！弗谣螗丧ゥ攻骏?タイムズ」などインド有力メディアの報(bào)道によれば、米國務(wù)省は國連総會(huì)と安保理のロシア非難決議採決に際し、米國と足並みを揃えるようインド外務(wù)省に強(qiáng)く迫ったという。これに関し駐ニューデリー外交筋は「モディ政権はインド太平洋地域での中國の臺(tái)頭に対抗する上でインドの重要性を力説し、米國の理解を得たようだ」と語っている。

インドが「日米豪印戦略対話」（クワッド）のメンバーである點(diǎn)を考えれば、バイデン政権がインドの言い分を無視できなかったことは納得がいく。米國務(wù)省のプライス報(bào)道官は國連総會(huì)決議後の記者會(huì)見で「インドとは重要な価値観を共有する」と強(qiáng)調(diào)するとともに「インドとロシアの関係が米露関係とは異なることは承知している」と述べ、インドの投票行動(dòng)への批判を避けている。

米國のインド重視は他にもうかがえる。中國との國境紛爭(zhēng)を抱えるインドは対中防衛(wèi)を強(qiáng)化するため、ロシアから地対空ミサイルシステム「S400」の導(dǎo)入を進(jìn)めているが、米國は同じシステムを配備したトルコには制裁を科したものの、インドに対しては制裁を控えている。歐米の軍事情報(bào)メディアによれば、インドは米國との間で最新鋭の無人機(jī)の導(dǎo)入について交渉を行っており、この無人機(jī)がインドに供給されれば、北大西洋條約機(jī)構(gòu)（NATO）加盟國以外では初めてのケースになるという。

◆中東や中央アジア諸國との外交促進(jìn)

最近のインド外交について多くのインド専門家の間では「歴史的な非同盟主義から、より積極的な全方位外交へと変わりつつある」（米有力シンクタンクの南西アジア専門家）との見方が有力だ。事実、インドはこれまで比較的関係が疎遠(yuǎn)だった中東や中央アジア諸國との外交促進(jìn)に乗り出している。対露関係に関しても、前述の駐ニューデリー外交筋は「將來的には見直しの可能性がある」とみる。同筋によれば、インドの宿敵パキスタンとロシアとの関係が今後強(qiáng)まるなら、インドの“ロシア離れ”が始まることが考えられるという。

この點(diǎn)で注目されるのは、パキスタンのカーン首相が2月末モスクワを訪問し、プーチン大統(tǒng)領(lǐng)と會(huì)談したこと。パキスタン首相の訪ロは23年ぶりで、両首脳はエネルギー分野を中心に二國間協(xié)力について話し合ったと伝えられる。ロシアのウクライナ侵攻直後、パキスタンはロシアから小麥と天然ガスを購入すると発表した。

◆親露路線見直しも

インドの“ロシア離れ”を促すもう一つの要因として、最近の中露関係の緊密化を挙げる向きもある。中國はパキスタンにとって最大の武器供與國であるうえ、印パ間のカシミール紛爭(zhēng)ではパキスタン支持を表明している。その中國が対印戦略の一環(huán)としてロシアと一緒になってパキスタンを軍事?外交面で後押しするようになれば、インドがロシアとの関係を見直すのは當(dāng)然だろう。

日本にとってインド外交の行方は「クアッド」の絡(luò)みからも極めて重要。今月にも予定されるという岸田首相のインド訪問は同國がどこに向かうのかを見極める大切な機(jī)會(huì)なりそうだ。

■筆者プロフィール：山崎真二

山形大客員教授（元教授）、時(shí)事総合研究所客員研究員、元時(shí)事通信社外信部長、リマ（ペルー）特派員、ニューデリー支局長、ニューヨーク支局長。