感染者が118萬人を超えた新型コロナウイルスの感染第5波が、ようやく落ち著きを見せてきた香港。4月21日からは店內(nèi)飲食の時間延長など、一部の規(guī)制が緩和されるが、この第5波はかつてない大規(guī)模感染というだけでなく、生活面でも香港が中國に呑み込まれるという巨大な波でもあった。

第5波は昨年12月31日から始まった。今年2月9日に1日の新規(guī)感染者數(shù)が1000人を超すと、その16日後には1萬人を突破。ピークの3月3日には、7萬6991例が確認(rèn)された。4月15日に新規(guī)感染者が1000人を切り、ようやく街に人が戻ってきたが、4月17 日現(xiàn)在、第5波による感染者の累計は118萬5194人。死者は同8926人だ。死者の多くは、ワクチン未接種の高齢者で、老人ホームでの集団感染によるものだ。

それにしても、感染力が強(qiáng)いといわれるオミクロン株が、香港のような過密都市で広がると、ひとたまりもない。1日の新規(guī)感染者が1000人を超えた時點で、醫(yī)療はひっ迫。PCR検査場は長蛇の列。診察を待つ患者が公立病院の外にあふれ、感染者は自宅療養(yǎng)を強(qiáng)いられた。香港政府は2月12日、中國政府に救援を要請。感染癥の専門家や醫(yī)療従事者の派遣、隔離?治療施設(shè)の建設(shè)、醫(yī)療品などの物資の提供を取り付けるとともに、中央政府、広東省政府の支援を得ながら、コロナ対策に取り組むことになる。

香港政府が約350萬全世帯に配ったコロナ対策の支給品袋

支給品袋とその中身。マスクや抗原検査キット、漢方薬などが入っている

支給品袋に同封された香港政府からのカード。コロナ禍で中央政府の多大な支援を受けていることを伝えている

支援を取り付けた4日後、親中派の新聞「大公報」と「文匯報」は一面で、習(xí)近平國家主席が、香港政府に対して新型コロナ対策を最優(yōu)先に取り組むよう指示したこと、中央の関連部門に香港を全力で支えるよう指示したことを伝えた。

國家主席が香港を全力で支援せよということは、香港のコロナ対策が國の重要課題になったということだ。香港は中國政府という強(qiáng)力な後ろ盾を得たことになるが、言い換えれば、中國政府が経済、政治に続いて、いよいよ香港の民生までも支配下におさめることになったということだ。

果たして、それからの香港はその通りの展開だった。

林鄭月娥行政長官は、コロナ対策を最優(yōu)先させるため、3月27日に予定していた次期行政長官選挙を5月8日に延期。中國が推進(jìn)する「ゼロコロナ政策」に基づいて本土各地がしているように、香港の全住民約750萬人をウイルス検査する「全民検査」計畫を打ち出した。

検査による都市封鎖（ロックダウン）を警戒した市民が食料品や薬、日用品の購入に殺到する。買い占めで必需品が品薄狀態(tài)になっている中、広東省から香港に物資を運(yùn)ぶトラック運(yùn)転手が、コロナ感染や隔離で激減。本土から調(diào)達(dá)する生鮮食品の約7割を広東省が占めるだけに、スーパーから生鮮品が消え、価格高騰を招く事態(tài)になった。

第5波で臨時休業(yè)する銀行の支店

すると、広東省から海運(yùn)と鉄道による代替輸送が始まった。広州稅関は、香港向けの通関手続きを優(yōu)先し、広州市の食肉加工工場は稼働時間を延長して対応しているというニュースが伝えられる。また、香港にある2つの食肉処理場で感染者が出て稼働を停止すると、中央政府の協(xié)力の下、本土の作業(yè)員38人が助っ人にやってくる、といった具合だ。漢方薬やマスクなどの物資も、中央政府を始め、本土の企業(yè)や個人から続々と香港に寄せられた。

徹底防備でスーパーで買い物をする客

空狀態(tài)のパンとチルドコーナーの棚

一方、「全民検査」や急増する感染者に対応するために、急ピッチで設(shè)置することになった8つの隔離?治療施設(shè)の建設(shè)は、中國の大手建設(shè)會社、中國建築國際集団が請け負(fù)い、作業(yè)員は本土から招いた。

さらに人材。2020年9月に実施した大規(guī)模PCR検査では、本土から約420人が支援に訪れたが、今回は隔離施設(shè)の建設(shè)、PCR検査の検體採取や治療にあたるスタッフ、老人ホームの介護(hù)要員など、幅広い支援要員が前回以上の規(guī)模でやってきた?！弗讥恁偿恁蕬槁浴工我恰?a target='_blank' href='http://www.wenhuatang.com/search.php?filter=武漢'>武漢の新型コロナの封じ込めに盡力した感染癥の専門家、梁萬年氏も送り込まれて來た。

果物の棚はスナック菓子で穴埋め

野菜の棚は中華ソーセージで穴埋め

一方、中央政府による陣頭指揮も顕著だった。香港にある中央政府の出先機(jī)関「中央駐香港連絡(luò)弁公室（中連弁）」の駱恵寧主任が、香港各界の代表とのオンライン會議で、「最も重要なことは団結(jié)で、必要なのは行動だ」と呼びかけると、出席した香港の財閥系企業(yè)のトップらが、傘下ホテルの隔離施設(shè)への転用や、臨時醫(yī)療施設(shè)向けに用地を供出するなど申し出た。

中連弁のサイトによると、武漢の企業(yè)や個人から、約2100萬人民元（約4億2000萬円）相當(dāng)の防護(hù)服や薬などの物資が提供された。3月27日現(xiàn)在、本土から香港に寄せられた防疫物資は累計30億人民元（約595億円）相當(dāng)に達(dá)したという。また、HSBCやAIA、李嘉誠基金など、香港で経済活動を行う企業(yè)や基金などからも、現(xiàn)金6億香港ドル（約97億円）以上と、3億香港ドル（約48億円）相當(dāng)にのぼる物資が寄せられたという。

感染が沈靜化してきて値崩れしだした抗原検査キット

さらに、中國政府で香港を統(tǒng)括する韓正副首相が、コロナ患者を受け入れない香港の民間病院の姿勢に觸れると、感染病治療の設(shè)備がない民間病院はコロナ感染者以外の患者を公立病院から受け入れるなど、次々に前向きに対応した。まさに中央主導(dǎo)。その聲は、香港政府よりもはるかに強(qiáng)力な動員力を持つことを公に示した。

行政長官の記者會見や香港政府高官の行動も、中國依存を顕著にした。行政長官が3月上旬から始めたコロナ関連の定例記者會見では、會見場の壁に、中國の國章が登場した。國章の下に香港の區(qū)章が掲げられ、中國語で「國家全力支援 特區(qū)斉心抗疫（國家は全力で支援する 香港は心を一つにしてウイルスと戦おう）」のスローガン取り付けられた。

コロナ関係の定例記者會見。國章や中國語のスローガンも（CATVのニュース畫面を撮影）

林鄭長官は、會見で必ずといっていいほど、「中央政府の支援を受けて」と、中國政府を稱える言葉を添える。本土から醫(yī)療部隊がやってくれば、その都度、香港の入境口で出迎えて謝辭を述べた。また、物資を積んだ一番列車の到著を政府高官らとともに待つなど、香港の危機(jī)的狀況を國家が救っているという構(gòu)図が、常にテレビや新聞のニュースとなった。

當(dāng)然ながら、中央政府高官や専門家の話などがニュースで流れる機(jī)會が増え、市民は香港の民生のことなのに、広東語ではなく、普通話（標(biāo)準(zhǔn)中國語）を聞く機(jī)會が増えた。

結(jié)局、3月に実施予定だった「全民検査」は、感染拡大のスピードに隔離施設(shè)の準(zhǔn)備などが追い付かず、タイミングを逸して白紙に。代わりに、4月上旬に全世帯に配った抗原検査キットで、政府が呼びかけた3日間に自主的検査をするよう呼び掛けるにとどまった。

それにしても、香港は新型コロナウイルスが広がるたびに中國化が進(jìn)む。

SARSも當(dāng)時は新型コロナウイルスと言われ、香港で猛威を振るった。悪化した香港経済を支援するため、中國政府は中國人の個人旅行を解禁。これをきっかけに香港経済の中國依存の扉が開いた。2019年6月から半年以上続いた大規(guī)模な反政府デモは、新型コロナウイルス（Covid-19 ）によって封じ込められた。感染防止のために集団行動が禁じられたからだ。その間に中國政府は「香港國家安全維持法」を施行して、中央政府の政治的支配を強(qiáng)めた。そして今回、未曾有の感染第5波は、民生面でも中國依存を深め、中國の一都市としての位置づけを內(nèi)外に印象付けた?！钢醒胝胃吖伽我谎预蒜舛趣筏苿婴愀壅淦髽I(yè)を見ていて、香港はもう本土の他の都市と変わらない感じだ」（35歳男性）と、思った香港人は少なくないだろう。（了）

■筆者プロフィール：野上和月

1995年から香港在住。日本で産業(yè)経済紙記者、香港で在港邦人向け出版社の副編集長を経て、金融機(jī)関に勤務(wù)。1987年に中國と香港を旅行し、西洋文化と中國文化が共存する香港の魅力に取りつかれ、中國返還を見たくて來港した。新聞や雑誌に香港に関するコラムを執(zhí)筆。読売新聞の衛(wèi)星版（アジア圏向け紙面）では約20年間、寫真付きコラムを掲載した。2022年に電子書籍「香港街角ノート 日常から見つめた返還後25年の記録」（幻冬舎ルネッサンス刊）を出版。

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