中國(guó)の古代文明といえば、かつては黃河文明と同義だった。しかし現(xiàn)在では、それ以外にもさまざまな中國(guó)古代文明が存在したことが分かっている。中でも1980年代に四川省徳陽(yáng)市內(nèi)で本格的調(diào)査が始まった三星堆遺跡は、極めて興味深い遺跡だ。例えば素人が見(jiàn)ても、出土した青銅製の彫像などの特異なデザインには驚いてしまう。四川大學(xué)歴史文化學(xué)院院長(zhǎng)の霍巍教授はこのほど中國(guó)メディアの中國(guó)新聞社の取材に応じて、三星堆遺跡についてのさまざまな見(jiàn)方を披露した。以下は霍教授の言葉に若干の説明內(nèi)容を追加するなどで再構(gòu)成したものだ。

【その他の寫(xiě)真】

■2021年の新発見(jiàn)で垣間見(jiàn)えた黃河文明とは異なる古代の宗教儀式

中國(guó)政府は3月末に、2021年における中國(guó)の考古學(xué)10大新発見(jiàn)を発表したが、その中には三星堆で進(jìn)められている考古學(xué)プロジェクトの成果も含まれていた。三星堆で新たに発見(jiàn)された6カ所の祭祀坑から金器、銅器、玉石器、陶器など2000點(diǎn)余りが出土したのだ。特に重要なものとしては黃金の仮面、鳥(niǎo)の形の飾りもの、人物の座像などがあった。

新たな出土品の中でも、特に注目すべきは2號(hào)祭祀坑で発見(jiàn)された小型の人物像だ。臺(tái)座があり、頭の上には樽狀の物體を置いている。宗教儀式を執(zhí)り行う祭司が特定の臺(tái)の上で祭事を行う姿を模した像である可能性が高いとみられている。三星堆文明を生み出した國(guó)あるいは地域を「古蜀」と呼んでいるが、この像についての現(xiàn)狀の解釈が正しければ、古蜀の人々の宗教儀式の記録ということになる。

中國(guó)の古代文明の中では、いわゆる黃河文明が最初に知られることになったが、三星堆からの出土品が大きく異なっているということは、中原文化から出土した青銅器だけでは、中國(guó)の古代人の神話や伝説などを全面的に知ることができないことを示している。

青銅器を作った文明が存在したことは、階級(jí)のある社會(huì)や國(guó)家が存在したことだけでなく、豊富な想像力や世界を細(xì)かく見(jiàn)つめる眼力、広い視野を持つ人々が存在したことを示す。過(guò)去の研究者が唱えた、中華民族は現(xiàn)実だけに目を向け、豊富な神話伝説や蕓術(shù)上の創(chuàng)造する能力は劣っていたとの主張は、退けられねばならない。

■それぞれ獨(dú)立して発展した古代文明を比較する意義とは

中華文明は別の場(chǎng)所から伝わったものではなく、中華の地で獨(dú)自に開(kāi)花したものだ。しかし、中華文明とその他の古代文明を比較することには、やはり意義がある。世界古代文明の視野で三星堆を観察すると、具體的な考古學(xué)上の文化財(cái)のレベルを超えて精神世界、蕓術(shù)概念、表現(xiàn)形態(tài)のレベルにまで達(dá)する、類似した文化現(xiàn)象を発見(jiàn)することができる。

考古學(xué)は通常、出土した未知だった出土品と既知の物を比較することで、出土した物が屬する文化文明の年代や性質(zhì)、機(jī)能、分布狀況などを判斷していく。目下のところ、三星堆遺跡からの出土品の多くには、比較対照すべき別の出土品が見(jiàn)當(dāng)たらない。従って、體系的に比較対象ができるよりものを広い時(shí)空の範(fàn)囲で探さねばならない。同時(shí)に、三星堆からの出土品の背後にある概念や、精神的な崇拝の狀況、美的な好みも研究していかねばならない。

神話學(xué)の立場(chǎng)からは、中國(guó)の古代神話には海外の神話と類似する部分もあり異なる部分がある。また神話とは文章として殘らなかった場(chǎng)合には、消滅する場(chǎng)合もある。三星堆遺跡での各種の出土品は、消えた神話を?qū)g物として示している。神話研究に改めて多くの手掛かりを提供してくれると考えてよい。

三星堆文明と世界古代文明の間に類似の要素はたくさんあるが、そのことはある文明から他の文明への伝播が発生したことを示すものではない。むしろ、同程度の生産力のレベルや精神の発展のレベルを獲得し、さらに似たような自然環(huán)境課で発達(dá)したそれぞれの文明文化で、人々がそれぞれ獨(dú)自に類似性のある蕓術(shù)を創(chuàng)造するようになったと考えた方がよい。それらの蕓術(shù)はいずれも、人と自然のつながりを再現(xiàn)しようとしたものだ。

古代文明の比較を行う主な目的は、人間の精神世界が太古の時(shí)代にどのような類似の思考や物質(zhì)の創(chuàng)造をたどったかを認(rèn)識(shí)し理解することだ。

太陽(yáng)が昇り、また沈む。四季は変化する。宇宙の星空がもたらす無(wú)限の想像力……これらは西洋の先人たちに深い感銘を與えただけでなく、東洋世界にも影響を及ぼした。われわれは、実際に會(huì)ったことはなくとも、この地球という一つの星の上で生きて來(lái)た。同じ地球の上に生きてきたのだから、よく似た発想も出て來(lái)た。その意味で、人類は古くから、運(yùn)命共同體に組み込まれていた。

もちろん、似ているというだけで同一視は出來(lái)ないものもある。例えば、黃金のマスクは古代エジプトや古代ペルシャでは、黃金のマスクは亡くなった王者の顔を覆うものだった。この習(xí)慣は、ユーラシアの草原文化にも古くから伝わっていた。しかし三星堆では、黃金のマスクで青銅像の顔を覆っている。その象徴的な意義と具體的な使い方は明らかに違っており、一律に論ずることはできない。

■古代文明間の素晴らしい対話が聞こえてくる

いずれにせよ、三星堆という考古學(xué)における世界的な発見(jiàn)が極めて大きな価値を持つことに、疑いの余地はない。中國(guó)では黃河文明だけでなく、南の地でも社會(huì)的価値観、等級(jí)秩序、國(guó)家権力が確立され、神秘的で誇張された生々しく豊かな造形蕓術(shù)や偶像の伝統(tǒng)などが生まれていた。

三星堆の発見(jiàn)により、中國(guó)の青銅文化の奧深い姿が再構(gòu)築された。三星堆はこれまでの人々の中國(guó)青銅時(shí)代の文化に対する認(rèn)識(shí)を変えただけでなく、三星堆文明と世界古代文明との間の多くの融合性と共通性を示した。まるで洋の東西の古代青銅文明間の素晴らしい対話が、私たちにも聞こえてくるようにも感じる。（構(gòu)成 / 如月隼人）