拡大
マレー半島のくびれにあるクラ地峽がにわかに注目を集めている。
マレー半島のくびれにあるクラ地峽がにわかに注目を集めている。當事國タイをはじめとする新興アジア諸國の思惑とこの地域に影響力を強める中國の存在。クラ地峽に東西をつなぐ交易路を建設(shè)する構(gòu)想は、地政學的変化をもたらすものとして米中大國も関心を示す。運河か、ランドブリッジ(陸路輸送方式)か、今後の進展に注目したい。
日本と中近東、歐州を結(jié)ぶ海上貨物輸送の大動脈は、マラッカ?シンガポール海峽(マ?シ海峽)を経由するルートが最短だ。この海峽の北縁を構(gòu)成するマレー半島は、付け根のバンコックから先端のシンガポールまで約1500kmの細長い形で南に突き出ている。
この半島の一番細い部分、北緯ほぼ10度の地點がクラ地峽とよばれ、マ?シ海峽とならぶ新たな物流ルートの候補として、いま注目を集めている。
注目されるのは、直接的には東西交易ルートの距離短縮がもたらす経済効果といえるが、背後に近年急速に経済力をつけはじめたタイの思惑と、一帯一路構(gòu)想のもとこの地域に影響力をおよぼそうと目論む中國の存在があり、さらに新たな交易ルート開設(shè)がもたらす地政學的変化に各國の利害が複雑に絡(luò)むからだ。
◆クラ地峽、一番狹いところで44km
クラ地峽は、ミャンマーとの國境間近のタイ國內(nèi)にあり、一番狹いところで44kmほどの原生林が生い茂る未開地。東は東シナ海につながるタイ灣、西はインド洋につながるアンダマン海に面していることから、大航海時代を経て大英帝國の版図がおよんだ頃にもここに運河を通すことが語られてきた。が、英國がマ?シ海峽のシンガポールに拠點を築いたことにより、う回路としての意義は失われていった。
「クラ運河」構(gòu)想が具體性をもって浮かび上がってきたのは、中國および新興アジアの國々の経済が隆興しはじめた20世紀後半からで、現(xiàn)在も運河構(gòu)想に大きな関心を示す國は當事國のタイと中國である。
1973年アメリカ、フランス、タイに日本も加わった國際チームによる建設(shè)計畫がスタート、核爆発を使った地峽の開削が検討されたことで話題を呼んだが、タイの政変によって頓挫した。具體化のネックとなっているのが、巨大な建設(shè)費であり、技術(shù)的な困難さといわれる。
輸送距離短縮による経済的メリットについては、クラ運河構(gòu)想はマ?シ海峽経由との比較になる。日本経済の大動脈である東シナ海からインド洋に至る海上ルート上の中間地點に位置する南北2つのルートの差は、ラフな計算で500km程度、商船のスピードでいえば13~4時間ほどの違いだ?!弗檫\河」通航にかかわるコスト(通航料その他の経費)と時間的ロス(通航待ちや速力制限)も勘案すると、日本の大動脈にとってこれを積極的に利用する直接的な経済的メリットは小さい。
一方、マ?シ海峽は現(xiàn)在年間の通航船舶が12萬隻に達する過密狀態(tài)にあり、近い將來限界を超える恐れがあるとされる。またいたるところに狹い水路と淺瀬が存在する危険な海峽で、いまだに大きな海難事故が絶えない海の難所である。海賊の出沒も脅威だ。航行上のリスクの低減、あるいはマ?シ海峽有事(事故を含む)の際の代替ルートという観點で「クラ運河」利用のメリットをとらえることは可能だ。
周辺地域との地理的関連でみると、近年急速な経済発展を続けるタイにとってクラ地峽は將來大きな利益をもたらす可能性がある。マレー半島の付け根にあるバンコク周辺から積み出された製品の多くは現(xiàn)在、マ?シ海峽を通って西方に向かうが、クラ地峽を経由すれば、輸送距離は1700km程度短縮される。20ノットの商船で2日弱のセーブとなる。さらに近場のミャンマー、バングラディシュ、インドの諸港との間となれば、輸送時間短縮による経済的効果は大きい。これはベトナム、カンボジア、中國南部経済地域などにとっても同様のメリットであり、この地域に生産拠點を集積しつつある日本も同様の利益を享受できるだろう。
◆中國「海のシルクロード」構(gòu)想の重要結(jié)節(jié)點に
中國は、経済発展する東アジア、南アジアをつうじてこの地域に大きな経済回廊を建設(shè)して影響力を強めようとする動きを活発化している?!负¥违伐毳愆`ド」構(gòu)想にとっても、クラ地峽はその重要な結(jié)節(jié)點として中國が関心を持つ。
2015年タイ、中國雙方が合意したとされる「クラ運河プロジェクト」は、最近の報道で両國政府がこれを否定し、合意はまぼろしであったと伝えられる。
現(xiàn)在運河に代ってにわかに注目を集めているのが、2020年タイ政府が建設(shè)調(diào)査を命じたという「ランドブリッジ」計畫である。クラ地峽の両端に港灣を整備し、鉄道、道路その他のインフラをつないで周囲を経済特區(qū)として開発しようという壯大な計畫だ。
背後に中國の存在があるとみられ、これについてはこの地域への中國の進出を懸念するアメリカも関心を示すなど、大國の思惑も絡(luò)み合って、複雑な様相を帯びている。
海路か陸路か、実現(xiàn)にはまだまだ紆余曲折が予想されるが、近隣諸國の利害のみならず、地政學的な変化がもたらす政治や軍事への影響もあり、こんごの進展に注目したい。
■筆者プロフィール:山本勝
1944年靜岡市生まれ。東京商船大學航??谱洹⑷毡距]船入社。同社船長を経て2002年(代表)専務(wù)取締役。退任後JAMSTEC(海洋研究開発機構(gòu))の海洋研究船「みらい」「ちきゅう」の運航に攜わる。一般社団法人海洋會の會長を経て現(xiàn)在同相談役?,F(xiàn)役時代南極を除く世界各地の海域、水路、港を巡り見聞を広める。
山本勝
2022/4/26
山本勝
2022/4/13
山本勝
2022/3/24
山本勝
2022/3/12
山本勝
2022/3/5
ピックアップ
we`re
RecordChina
この記事のコメントを見る