<日中100人 生の聲>コロナとともに生きる―林千野 日中交流団體役員

和華    2022年5月4日(水) 19時0分

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コロナ禍に揺れたこの1年半を振り返ると、新型コロナウイルスが私たちの日常生活にもたらした様々な変化を実感する。寫真は第7回若者シンポジウム(2019年)。

コロナ禍に揺れたこの1年半を振り返ると、新型コロナウイルスが私たちの日常生活にもたらした様々な変化を実感する。その最も大きな変化の一つは「移動の制限」だろう。グローバル化の進展とともに活発化した國を跨ぐ人的往來は、コロナ禍により激減、日本國內においても人々の行動に多くの制約が課されることとなった?!笗い郡い韦藭à胜ぁ?、「行きたいのに行けない」。これはコロナ禍において世界中の人々が直面している共通の悩みであろう。

コロナによる「移動の制限」は、日中間の人的往來にも大きな影を落としている。私は仕事の合間に日本日中関係學會(以下、日中関係學會)という任意団體の事務局を手伝っているが、コロナの影響により、2020年3月、日中関係學會が都內で開催を予定していた「第8回宮本賞?若者シンポジウム」の中止を余儀なくされた。中國から招聘予定だった4名の學生の日本入國が困難なこと、そして多數(shù)の聴衆(zhòng)が會場に集まることで感染を誘発しかねないとの理由によるものであった。

「若者シンポジウム」は、日中関係學會が2012年から主催する日中の大學生、大學院生を対象にした懸賞論文「宮本賞」(日中関係學會會長の宮本雄二元中國大使に因み名付けられた)の関連イベントの一つである。例年、12月に「宮本賞」入選作品を10數(shù)本選び、翌年3月には受賞者が都內の會場に集い「若者シンポジウム」を開催する。シンポジウムでは中國在住の受賞者數(shù)名も參加し、授賞式、論文のプレゼンテーション、テーマ別ディスカッションが行われるが、日中雙方の若者が一堂に會して行われる直接交流は、論文という「文字」の枠にとどまらず、両國の若い世代の考えを直に知る貴重な機會となっている。私自身、良好な日中関係を長期的?安定的に築いていくためには、雙方の國民同士の交流、とりわけ、若い世代による直接交流が重要だと考えており、この意味からも昨年の「若者シンポジウム」の中止決定は苦渋を伴う選択であった。

しかし、コロナがもたらした変化はネガティブな面だけではなく、ポジティブな面もあることに改めて気付かされる。例えば、昨年春以降、私たちの日常生活において急速に普及したZOOMなどのオンラインシステムは、物理的な距離を超えた交流を可能にした。時差の問題さえクリアすれば、世界中の人々といとも簡単に交流ができる。2020年3月には中止せざるを得なかった「若者シンポジウム」も、1年後の今年3月にはZOOMによるオンライン形式で無事に開催することができた。これも、コロナによるポジティブな変化の賜物だろう。日中関係學會が定期的に主催している中國をテーマにした研究會も、オンライン形式を用いることにより、従來は難しかった中國在住の専門家の話を聞くことが可能になった。この例が示す通り、スマホかパソコンさえあれば、誰でも簡単に、現(xiàn)地からの生の映像情報にアクセスできることのメリットは計り知れない。もちろん、オンライン上の交流が、対面式の「直接交流」を100%代替できるわけではないが、コロナにより移動が制限される中、オンライン上でコミュニケーションが取れるという安心感が、私たちのストレスをかなり軽減してくれている側面も否定できない。コロナを契機に導入されたテレワークも、私たちの働き方そのものを変えると同時に、今後はどこに住むかを含めて、多様なライフスタイルの選択肢を提供してくれるに違いない。また、テレワークの普及が、大都市に集中する居住人口を地方へと分散させ、地方の活性化につながれば、日本社會そのものを変革することも夢ではないかもしれない。私自身、その成否を占うカギは、コロナ収束後にあると見ている。

緊急事態(tài)宣言が初めて発令された昨年4月7日、東京の新規(guī)感染者は87人だったそうだ。しかし、宣言発令後暫くの間、東京の街は靜まりかえり、電車もガラガラだった。他方、2021年7月末現(xiàn)在、感染力が強いデルタ株が猛威を振るい、1日の感染者數(shù)が3000人を超えるなど、事態(tài)は當時より余程深刻化しているにもかかわらず、人流が減少した実感がまるでない。通勤人口に限定するなら、コロナ感染が拡大して以降、設備を導入し、物理的には100%テレワークが可能な企業(yè)も多數(shù)あるはずだが、何らかの事情でそれが実現(xiàn)できていないと見るべきだろう。もしもその理由が変わること、変えることに対する抵抗感や、他社(他人)と同じ橫並びを好む保守性、または周囲に出社を強要する同調圧力等に起因するとすれば、殘念ながらコロナ収束後、根付きつつあるテレワークは停滯し、元の狀態(tài)に戻ってしまう可能性があり、それを心から危懼している?!肝C」には「危険」と「機會」の2つの側面があると言われる。コロナ禍の今、噴出するさまざまな問題を改革への「機會」ととらえ、私たち1人ひとりが將來を見據(jù)えて思考し、行動を起こすことが以前にもまして求められているように思う。

最後にコロナ禍の1年半、私自身に起きた変化を振り返えると、それまで當たり前だと思っていたさまざまなことが、決して當たり前ではなかったことに気付けた點が最大の収穫だったと言える。今後とも、コロナの早期収束を心から願うと同時に、なかなか収束しない現(xiàn)狀についてはこれを受容し、日々の生活に感謝しつつ、暫くはコロナとともに生きる道を模索していきたいと考えている。

※本記事は、『和華』第31號「日中100人 生の聲」から転載したものです。また掲載內容は発刊當時のものとなります。

■筆者プロフィール:林千野(はやしちの)


雙日株式會社秘書部擔當部長、中國?北東アジア擔當(現(xiàn)職)。日本日中関係學會副會長(2019年~)、宮本賞実行委員長(2019年~)。1980年代初めに北京語言學院(現(xiàn)語言大學)留學。1985年日商巖井(現(xiàn)雙日)入社。1999年米國戦略國際問題研究所(CSIS)にビジネスフェローとして在籍。2002年~2006年雙日中國會社(北京)駐在を経て現(xiàn)職。

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