2021年5月に他界した袁隆平氏は、中國で極めて尊敬されている農(nóng)學(xué)者だ。中國が米の生産量で世界第1位になったことにも、袁氏が心血を注いだハイブリッドイネが大きく貢獻したとされる。湖南省農(nóng)業(yè)科學(xué)院などが発起して設(shè)立された農(nóng)業(yè)ハイテク企業(yè)である袁隆平農(nóng)業(yè)高科技の楊遠(yuǎn)柱副総裁はこのほど、中國メディアの中國新聞社の取材に応じてハイブリッドイネの普及狀況などを説明した。以下は楊副総裁の言葉に若干の説明內(nèi)容を追加するなどして再構(gòu)成したものだ。

■世界各國の米生産がハイブリッドイネの導(dǎo)入で劇的に向上

ハイブリッドイネの開発に最初に成功したのは1970年代だった。中國政府はそれ以來、國連開発計畫（UNDP）や國連食糧農(nóng)業(yè)機関（FAO）などの國際機関および世界の主要稲作國に対して一連のハイブリッドイネ技術(shù)援助を展開してきた。FAO は90年代初頭にハイブリッドイネの普及を発展途上國の食糧不足問題を解決するために最優(yōu)先する戦略措置を定めた。

中國のハイブリッドイネ技術(shù)は現(xiàn)在、少なくとも世界40カ國以上で試験や実証を展開している。大規(guī)模に普及したのは米國、インド、フィリピン、パキスタン、ベトナム、インドネシアなど十?dāng)?shù)カ國で、年間栽培面積は600萬ヘクタールを超えた。生産量は一般的に、現(xiàn)地の在來種より1ヘクタール當(dāng)たり2トン増加している。

中國のハイブリッドイネ技術(shù)を最初に導(dǎo)入した國は米國だ。79年には米國の種苗會社が中國からハイブリッドイネ3品種を?qū)毪筏圃囼Y栽培したが、単位面積當(dāng)たりの収穫量は當(dāng)時の米國の優(yōu)良品種より65％から80％も高かった。米中は80年にハイブリッドイネの育種技術(shù)移転協(xié)定を結(jié)び、中國は専門家を米國に派遣して技術(shù)を伝授した?，F(xiàn)在までに米國のハイブリッド水稲の作付け面積は約60萬ヘクタールに達した。栽培比率は60％近くだ。

ベトナムも、中國のハイブリッドイネを最も早く導(dǎo)入した國の一つだ。多い時には年間栽培面積が70萬ヘクタールを超えていた。パキスタンではイネの作付面積の20%以上がハイブリッドイネだ。インドでは、ハイブリッドイネの作付け面積が水稲作付面積の8％に相當(dāng)する330萬ヘクタールを超した。

■各種問題には、相手國の狀況などに応じて「戦略的」に解決

ハイブリッドイネの國際的な普及では解決せねばならない問題も出現(xiàn)した。例えば中國のハイブリッドイネは初期の段階では、南アジアや東南アジアなどの熱帯地域の細(xì)菌性病害とイネウンカに対する抵抗性が弱かった。

また、これらの地方の水田の土壌は痩せている上に施肥が十分でなかった。これでは、増産は限定的になってしまう。また、中國のハイブリッドイネは炊飯した際に粘りが多く出る。南アジアでは手を使って米を食べるが、そのような食習(xí)慣には向いていない。

対応策としては「研究開発先行戦略」を確立した。フィリピン、パキスタン、インド、ベトナムに海外ハイブリッドイネ研究開発センターを設(shè)立した?，F(xiàn)地の狀況に適合した品種を開発するためだ。

そして2021年までに、海外向けのハイブリッドイネを31品種開発した。同年の海外ハイブリッドイネ種子の販売量は6800トンを超えた。それらはすべて、現(xiàn)地で開発されたものだ。

次に、中國の種苗企業(yè)の実力不足の問題だ。資金面の問題などから相手國での研究開発は不十分だった。中國から種子を輸出していたのでは、生産コストが上昇して利益は落ち込んでいく。つまり、持続可能な発展は難しい。

この問題を解決するために、対象國でハイブリッドイネを産業(yè)化するための會社を設(shè)立した。このことで生産の現(xiàn)地化が進み、種子生産コストが引き下げられた。中國から輸出する場合と比べて、販売価格は30％程度低くなった。

第3の問題は、発展途上國で農(nóng)業(yè)従事者の科學(xué)技術(shù)のレベルが立ち遅れていたことだ。理解不足のためにハイブリッドイネの普及は遅れた。また、正しい方法で栽培せねば、ハイブリッドイネも能力を十分に発揮できない。

この狀況を打開するために中國政府商務(wù)部、同農(nóng)業(yè)農(nóng)村部、同科學(xué)技術(shù)部がハイブリッドイネの國際研修プロジェクトを?qū)g施した。弊社（袁隆平農(nóng)業(yè)高科技）は商務(wù)部が指定する「中國ハイブリッドイネ技術(shù)対外援助研修基地」として、ハイブリッドイネ國際研修クラスを100回以上実施した。その成果として、100カ國以上の約1萬人の農(nóng)業(yè)官僚、農(nóng)業(yè)技術(shù)専門家が研修に參加した。

■世界の食糧事情の改善のためには國際的な視野と実踐が必要

遺伝資源は品種改良にとって物質(zhì)的基盤だ。しかし、一つの國あるいは一つの地域に存在する品種だけで、全ての遺伝資源をそろえることは難しい。中國はハイブリッドイネの研究開発を半世紀(jì)以上続けたことで、現(xiàn)在までに世界で最も多い遺伝資源を有するようになった。東南アジアや南アジア地域の遺伝資源も利用した改良が、今後も海外のハイブリッドイネ品種育成を大きく加速させることは間違いない。

遺伝資源における國際協(xié)力は優(yōu)れた遺伝子の発掘と遺伝改良を促進し、畫期的な品種の育成を加速する。このことは、世界の食糧安全保障を確保する上で非常に役立つ。

中國でハイブリッドイネの研究に力が入れられたのは、まず第一に國の食糧安全保障という切実な問題があったからだ。十?dāng)?shù)億人の中國人の食の問題の解決は、袁劉平先生がハイブリッドイネの研究を始められた初心であり、生涯持ち続けられた使命感だった。

袁先生をはじめとする多くの研究者が、地に足をつけて土を耕した。彼らが殘した最も尊い論文とは、「大地に生えるイネ」だ。だからこそ、中國のハイブリッドイネの技術(shù)は飛躍的に高まった。國もハイブリッドイネを非常に重視し、強力に支持した。

米國人の環(huán)境活動家であるレスター?ブラウン氏はかつて「だれが中國を食べさせるのか」と、中國の食糧問題に懸念を表明した。ハイブリッドイネは、ブラウン氏の懸念に対して、中國人科學(xué)者が示した解答だ。「中國人は自らが作った食べ物を自らの食器に盛る」――。このことは、中國の世界に向けた厳かな約束であり、同時に世界の食糧問題に対する貢獻だ。

世界の食糧事情はまだまだ厳しい狀態(tài)が続くだろう。われわれは、袁隆平先生が抱いた「ハイブリッドイネで世界をカバーする」という夢の実現(xiàn)に向け、そして世界の食糧事情を好転させるために、中國の知恵、中國の方法、中國の力で貢獻する。（構(gòu)成 / 如月隼人）