山本勝 2022年5月31日(火) 9時20分
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災(zāi)害発生時の初期段階での問題は被災(zāi)地域へのアプローチだ。なによりも人命救助と負(fù)傷者、病人への対応が優(yōu)先される。
災(zāi)害発生時の初期段階での問題は被災(zāi)地域へのアプローチだ。なによりも人命救助と負(fù)傷者、病人への対応が優(yōu)先される。醫(yī)療機(jī)能を海からのアプローチで提供しようというのが政府の「病院船」構(gòu)想だ。民間で検討される地元密著型の対策にも注目したい。
◆地震、津波、火山噴火、臺風(fēng)に襲われる島國
日本は海に囲まれた島國で、災(zāi)害大國だ。地震、津波、火山噴火、臺風(fēng)、洪水などなどの自然災(zāi)害が、國土のいたるところで頻繁にくり返し起こるという世界でも稀有な地に、1億2千萬人余の人々が住む。
山が海岸近くまでせまる地勢が多く、災(zāi)害が発生すればたちまち交通インフラが寸斷され、被災(zāi)地に容易に近づけない、という狀況にしばしば陥る。災(zāi)害対策は、人命の救助という緊急の初期活動のあと、つぎの対応は被災(zāi)地にとり殘された人々のライフラインの確保と維持だ。
負(fù)傷者、病人の手當(dāng)、移送に加え、食料、水、燃料、薬やこれらを搬送する車両など、災(zāi)害が大規(guī)模であればあるほど大量の物資の輸送と供給が必要になる。これと並行して準(zhǔn)備されるのが被災(zāi)者のための社會インフラの提供で、避難所、救急醫(yī)療施設(shè)などが被災(zāi)地あるいは近傍に設(shè)営される。
こうした一連の初期段階の災(zāi)害対策で、一番の問題は被災(zāi)現(xiàn)場、被災(zāi)地域へのアプローチだ。これは災(zāi)害の種類、規(guī)模、被災(zāi)場所によって條件は千差萬別で、狀況をみながら陸路、空路あるいは海路が選択される。
1995年の阪神淡路大震災(zāi)時は、大規(guī)模な火災(zāi)発生などにより初期段階で陸路からのアプローチに手間取っている間、大阪灣の各地から大小の船が神戸港あるいは付近の港にかけつけて、被災(zāi)者の救助や搬送、被災(zāi)地への人や物の輸送などで活躍したことはマスコミでも取りあげられた。
一方、2011年の東日本大震災(zāi)では、大規(guī)模な津波発生によって被災(zāi)地の港灣機(jī)能が失われ、船を使ったアプローチは初期段階ではほとんど不可能だったとされる。ただ港の機(jī)能が一部でも回復(fù)してからは、大量の物資輸送のため各種の船舶が投入されるなど海路の利用が復(fù)舊?復(fù)興に大きな力を発揮した。
このような狀況と経験を踏まえて、これまで見落とされてきた総合的な災(zāi)害対策の一環(huán)として船を活用することがクローズアップされ、官民でさまざまな検討がされてきた経緯がある。
そもそも政府の検討は、1990年灣岸戦爭危機(jī)を契機(jī)に、輸送、醫(yī)療、宿泊などの機(jī)能をもたせた「多目的船舶」保有の論議から始まり、災(zāi)害への活用も前提に、自衛(wèi)艦、海上保安庁の新型艦艇にこれらの機(jī)能をもたせる(海上自衛(wèi)隊(duì)輸送艦「おおすみ」や保安庁災(zāi)害対応型巡視船「いず」がこれにあたる)ことで一応の決著がついていた。大震災(zāi)発生により、さらなる深掘りを促がされた格好だ。
◆「氷川丸」は戦時中「病院船」として活躍
特に注目されたのが、醫(yī)療機(jī)能を備えた「病院船」の建造だ。「病院船」というと、いま橫浜港に係留されている「氷川丸」が思い浮かぶが、有事に備える「病院船」は世界の主要國がもっぱら軍で所有し運(yùn)用しているのが一般的だ?!笟甏ㄍ琛工吓f日本軍が徴用した民間の貨客船で「病院船」としても活躍、奇跡的に戦時を生き抜いた。
政府の「病院船」検討は、こうした有事の「病院船」も念頭に置きながら、フルスペックの「総合型病院船」から災(zāi)害の段階に応じて必要とされる機(jī)能をもたせた病院船まで詳細(xì)にわたるもので、2013年報告書として取りまとめられた。しかし結(jié)論は、數(shù)百億円にのぼる建造?維持費(fèi)、醫(yī)療関係者をふくむ多數(shù)の要員の確保、平時の活用問題など課題がおおく、政府による建造?保有は見送る內(nèi)容となった。また船舶を「病院」として運(yùn)用するにはクリアすべき現(xiàn)行制度上の制約もありそうだ。
一連の政府による検討は「病院船」の建造、保有については現(xiàn)狀では否定的な結(jié)果となったが、災(zāi)害発生の初期段階に有効とされる「急性期病院船」機(jī)能(救急患者の船陸間の搬送と船上での醫(yī)療処置)については、民間の船、自衛(wèi)艦、保安庁の艦艇の活用や、災(zāi)害醫(yī)療訓(xùn)練など平時の活用の方策もふくめて、さらなる検討の余地が殘された。
◆「病院船推進(jìn)法」が成立、具體策検討へ
これを受けて現(xiàn)在、「病院船」構(gòu)想に賛同する國會議員の働きかけで成立した「病院船推進(jìn)法」によって、具體的な施策の導(dǎo)入が進(jìn)行中だ。(獨(dú)立行政法人が保有する船に機(jī)能を持たせることもうたわれている)。2026年に完成予定のJAMSTECの「北極域研究船」を緊急時の災(zāi)害支援に活用することを政府が決めたのも、こうした動きの一環(huán)とみられる。
いずれにせよ、「病院船」構(gòu)想は、災(zāi)害大國日本として、あるいは有事の備えとして、今後も議論がつづくテーマであるに違いない。
災(zāi)害時の船の活用に関する民間の検討としては、阪神淡路大震災(zāi)時の経験も踏まえて神戸商船大學(xué)(現(xiàn)神戸大學(xué))井上欣三教授(當(dāng)時)が提唱してきた、地元密著型の體制つくりが注目される。往々にして船の活用ということに思いが及ばない、災(zāi)害想定地域の行政組織を動かして、近隣の船舶運(yùn)航會社や地元の醫(yī)療機(jī)関を結(jié)び付ける。いざという時の船を使った災(zāi)害対策の実行案を策定し、平時も訓(xùn)練でブラッシュアップしながら緊急時に備えるというものだ。
これには船を使った災(zāi)害対策の有効性について、市民や行政の理解が不可欠であり、関係事業(yè)者、組織を巻き込んで対策の具體案をつくりあげる強(qiáng)力なリーダーシップと汗かきが必要だ。こうした地道な取り組みについても政府の理解と支援が望まれる。
■筆者プロフィール:山本勝
1944年靜岡市生まれ。東京商船大學(xué)航??谱?、日本郵船入社。同社船長を経て2002年(代表)専務(wù)取締役。退任後JAMSTEC(海洋研究開発機(jī)構(gòu))の海洋研究船「みらい」「ちきゅう」の運(yùn)航に攜わる。一般社団法人海洋會の會長を経て現(xiàn)在同相談役。現(xiàn)役時代南極を除く世界各地の海域、水路、港を巡り見聞を広める。
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