松野豊 2022年6月13日(月) 12時30分
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中國経済の持続的成長に立ちはだかる壁は、長期的に見て最も影響があるのはカーボンニュートラルの実現(xiàn)を宣言したことだろう。寫真は北京。
中國経済の持続的成長に立ちはだかる壁は、米中対立や新型コロナ感染拡大などの外部環(huán)境と不動産企業(yè)経営や社會格差などの國內(nèi)問題などに焦點が當てられることが多いが、実は長期的に見て最も影響があるのは、カーボンニュートラルの実現(xiàn)を宣言したことだろう。
2016年9月の「米中パリ協(xié)定同時批準」に始まり、米トランプ政権の協(xié)定離脫の混亂を経て、2020年9月に習(xí)近平國家主席は國連総會の演説で重要な宣言をした。中國は2030年までにCO2排出量を減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の実質(zhì)排出量ゼロ)を?qū)g現(xiàn)すると世界に公言したのである。
中國のこの宣言は、米中対立に絡(luò)んだ政治的な意図があったのかもしれない。しかし現(xiàn)在の中國のCO2排出強度などから鑑みて、相當大膽な約束になっているのは確かだ。2030年の排出量ピーク化ぐらいなら中國政府の腕力で可能かもしれないが、2060年のカーボンニュートラル化となればおそらく実現(xiàn)の目途が立ってはいないだろう。
尤も、目標年を2050年と揃えている歐米日などの先進國においても、カーボンニュートラルの実現(xiàn)は困難を極めるので、中國だけが突出した宣言をしたわけではない。ただ地球の溫度上昇を1.5~2度以內(nèi)に抑えるという目標の実現(xiàn)のためには、最大排出國の中國が2030年の中間目標も含めて達成をしなければ、世界全體も達成し得ないという現(xiàn)実がある。中國には大きなプレッシャーがかかっていることは確かだ。
1970年代の先進國における環(huán)境汚染問題の時にも議論になったように、この種の対策は少なくとも一時的には経済成長とのトレードオフになるはずであり、継続的な経済成長が必須である中國のような経済體にとっては、カーボンニュートラル宣言はとても重いものなのである。
中國は、2021年から始まる第14次5か年計畫において、経済のグリーン方式による発展を目指すために2つのKPI(定量政策目標)を定めている。それは「単位GDP當たりエネルギー消費量削減(5年で15%減、毎年約3.2%)」と「単位GDP當たりのCO2排出量削減(5年で18%減、毎年約3.9%)」である。
エネルギー消費量削減については、過去の5か年計畫でもKPIが設(shè)定され、そして今回の5か年計畫からは、新たにCO2排出量削減についての目標設(shè)定が加わった。
エネルギー消費量削減は、中國のエネルギー消費量の増大と自給率の低下に対応するために政策的な意図をもって行われてきた。これまでのところ中國は、エネルギー削減目標は順調(diào)に達成してきている。
しかし少し細かく見ると、過去のエネルギー削減率に関する弾性係數(shù)(増加率/実質(zhì)GDP増加率)は近年上昇傾向にあり、2021年は0.6程度になっている。これは、GDP拡大に伴うエネルギー消費の増加割合が大きくなっている、すなわち近年はエネルギー削減効率が低下してきているという意味になる。
2021年から目標設(shè)定されたカーボンニュートラル実現(xiàn)に向けてのCO2排出量削減についても、過去のデータをもとに試算してみた。図1は中國におけるCO2排出量削減実績の推移である。CO2排出量でもエネルギー消費と同様の傾向がみられる。すなわち2016年頃から弾性係數(shù)値が上昇し始め、現(xiàn)在は0.4程度になっている。
カーボンニュートラル宣言における中國の約束は、単位GDP當たりのCO2排出量を2030年に2005年比で65%削減するというものである。これは図1で計算した弾性係數(shù)を下げるという概念に近いものだ。これが達成されるなら、2030年まで5%程度のGDP成長を前提にしても、確かにCO2の排出総量は2030年より前にピークを打つ計算になる。
経済成長を続けながら、CO2の排出量削減効率を高めていくことは容易なことではない。エネルギー消費量削減の場合は、いわゆる石油ショック後に過去の先進國で培われた省エネルギー技術(shù)の導(dǎo)入などである程度の目途は立てられてきた。
しかしCO2排出量については、先進國においても技術(shù)開発が現(xiàn)在進行中であるため、中國自らの技術(shù)革新も必須になる。カーボンニュートラル宣言は、中國経済の持続的成長にとっては大きなチャレンジだといえる。
■筆者プロフィール:松野豊
大阪市生まれ。京都大學(xué)大學(xué)院衛(wèi)生工學(xué)課程修了後、1981年野村総合研究所入社。環(huán)境政策研究や企業(yè)の技術(shù)戦略、経営システムのコンサルティングに従事。2002年、同社の中國上海法人を設(shè)立し、05年まで総経理(社長)。07年、北京の清華大學(xué)に同社との共同研究センターを設(shè)立して理事?副センター長。 14年間の中國駐在を終えて18年に帰國、日中産業(yè)研究院を設(shè)立し代表取締役(院長)。清華大學(xué)招請専門家、上海交通大學(xué)客員研究員を兼務(wù)。中國の改革?産業(yè)政策等の研究を行い、日中で講演活動やメディアでの記事執(zhí)筆を行っている。主な著書は、『參考と転換-中日産業(yè)政策比較研究』(清華大學(xué)出版社)、『2020年の中國』(東洋経済新報社)など。
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