世界のさまざまな民族の伝説や神話に女神が登場(chǎng)する。そして女神は特に古い神話などで、男神より重要な役割りを果たすことが珍しくない。例えば日本神話だったら天照大神が代表格だろう。中國(guó)の伝説神話には、人類(lèi)を創(chuàng)造したとされる「女?huà)z」が登場(chǎng)する。天水師範(fàn)學(xué)院伏羲文化研究院執(zhí)行院長(zhǎng)の霍志軍教授はこのほど、中國(guó)メディアの中國(guó)新聞社の取材に応じて、女?huà)zの位置づけやその変遷などを紹介した。以下は霍教授言葉に若干の説明內(nèi)容を追加するなどで再構(gòu)成したものだ。

■中華文明における極めて特殊な神の「母なる女?huà)z」

人類(lèi)にとって神話は、太古の社會(huì)の記憶であり知恵だ。中國(guó)の神話も同様だ。中國(guó)の神話は純真で素樸な特徴を保持しており、後には中國(guó)文學(xué)のテーマの一つにもなった。女神は古人の気まぐれなでっち上げではなく、現(xiàn)実の生活や労働に根差している。

中國(guó)の神話で、人類(lèi)を創(chuàng)造したとされる女神が女?huà)zだ。女?huà)zは泥をこねて人をつくったとされる。同じく、人類(lèi)が出現(xiàn)した時(shí)に存在した男神の伏羲の妹であり、伏羲と結(jié)婚したとされる。女?huà)zはまた、楽器の「笙」などを作り、婚姻制度を整えたともされる。

原始時(shí)代の人々の生活は非常に厳しかった。人々にとって最も大切だったのは、子を産み育てて、次の世代の労働力を確保し、さらには子孫を殘すことだった。女?huà)zが「人をつくった」という物語(yǔ)には、生殖という人の行いについての當(dāng)時(shí)の人々の想像と崇拝が反映されており、さらには祈りが込められている?！干长蛩兢肱瘛工藢潳工胄叛訾?、世界のさまざまな民族に見(jiàn)られる。

女?huà)zが「人をつくった」ということは、女?huà)zが神でありながら、人との「仲介役」であったことも示す。つまり現(xiàn)実の世界と神秘の世界の仲介役だ。このような仲介役を果たす存在は、「英雄」ともみなされるものだ。

女?huà)zは楽器を創(chuàng)造したことから、「音楽の女神」としてもあがめられることになった。そしてさまざまな禮制も定めたとされる。つまり人としての行いの規(guī)範(fàn)を作った。そして一種の「萬(wàn)能の神」とみなされるようになった。人々は女?huà)zを敬慕した。

女?huà)zは「夢(mèng)の女神」と形容されることがある。これには、人々が女?huà)zを純潔さの象徴とも考えるようになったことも、影響している。中國(guó)の神話には、他にも多くの女神が登場(chǎng)する。西王母、嫦娥、麻姑、織女、媽祖などだ。しかし、女?huà)zの地位は特別だ。なにしろ人類(lèi)を創(chuàng)造した女神なのだから。

■女?huà)z神話に反映されている、西洋とは異なる「中華文化」の発想

女?huà)zにまつわる神話の舞臺(tái)は極めて広い。北は東北平原、南は雲(yún)南高原、さらに北西部の辺境から南東部の沿海地域まで、中華の地のほとんどすべてで女?huà)zの神話が伝えられている。神話がとりわけ多く伝わるのは黃河流域だ。

女?huà)z崇拝の発祥地とされているのは、甘粛省天水市內(nèi)の秦安県隴城鎮(zhèn)だ。この地には漢代（紀(jì)元前202－紀(jì)元220年）に創(chuàng)設(shè)された女?huà)zの祠（ほこら）や、女?huà)zが生まれた場(chǎng)所や生活した場(chǎng)所、葬られた場(chǎng)所とされる言い伝えがある。まさに女?huà)z崇拝の聖地だ。この地では、舊暦の1月15日に、女?huà)zの祭りが執(zhí)り行われる。祭りは朝から夜まで続き、人々はさまざまなやり方で「人類(lèi)の母」への思慕をあらわす。この祭りは2000年以上続いてきたとされる。

女?huà)z神話は、世界で最も素晴らしい英雄物語(yǔ)の一つと言える。母としての獻(xiàn)身や、さまざまな方法ですべての人に幸福をもたらしたこと、あらゆる面で大衆(zhòng)に盡くし、私利私欲なく人々のために貢獻(xiàn)したことなどが語(yǔ)られている。

西洋の神話が語(yǔ)る女神、例えばギリシャ神話に登場(chǎng)する知恵や戦爭(zhēng)の女神のアテナ、結(jié)婚と出産の女神であるヘラ、愛(ài)の神のアフロディテなどは、いずれも性格が異なり、それぞれ特定の分野で「神威」を発揮する。これは、自由と個(gè)人主義を重んじる西洋の発想に関係していると思う。一方で中國(guó)の女?huà)zは、自らを犠牲にしてでも人々に恩恵をもたらした。これは中華民族の「集団に価値を置く」考え方を反映したものではないか。

■「男性社會(huì)」の出現(xiàn)で女?huà)zの地位が低下、しかし現(xiàn)在は狀況が改めて変化

伝説における中華民族の歴史的記憶は、女神から始まった。女?huà)zの神話は、人類(lèi)初期の母系社會(huì)に関係している。一方で、伏羲の神話は父系社會(huì)に関係する。初期の神話では「人類(lèi)を創(chuàng)造したのは女?huà)zだった」だが、次第に「伏羲と女?huà)zが共同で人類(lèi)を使った」に変化した。この変化は、中華民族が母系社會(huì)から父系社會(huì)へと移行していった過(guò)程を反映している。

中華社會(huì)ではその後、女性の社會(huì)的地位が低下した。男性は社會(huì)の生産や生活について、より多くの権利を獨(dú)占した。その結(jié)果、人々は伏羲を重視するようになった。女?huà)zはいわば、伏羲の脇役になった。神話における「女神の時(shí)代」は去ってしまった。

しかし、現(xiàn)代では女性が再び地位を取り戻した。社會(huì)の規(guī)範(fàn)である法律にも男女平等が明記されている?，F(xiàn)代に生きるわれわれにとって女神とは、「優(yōu)秀な女性の総稱(chēng)」と理解することができる。そして女性の価値を肯定してこそ、社會(huì)は調(diào)和を保ちながら発展できる。その意味で「女神の文化」は復(fù)権したといってよい?，F(xiàn)代において、女性の地位の高さは社會(huì)文明の進(jìn)歩を測(cè)るバロメーターとも言える。

文化とは、絶えず建設(shè)されねばならないものだ。われわれは、新たな時(shí)代の社會(huì)の発展に役立つ要素を「女?huà)z文化」の中から取り出すべきだ。まずは、「女?huà)z文化」の精神要素と今日の社會(huì)を融合させる。さらに「女?huà)z文化」を、これからの文化を建設(shè)し中華文明のルーツを探る上で參考に、そして道しるべにせねばならない。（構(gòu)成 / 如月隼人）