14回目を迎えた中國(guó)最大の小売イベント「雙11（ダブルイレブン）」（11月11日獨(dú)身の日セール）が終わった。しかし、例年とは様相が異なり、ひどく大人しかった。GMV（Gross Merchandise Value＝流通取引総額）を速報(bào)するおなじみのカウントダウンイベント中止はされ、昨年まで大々的に展開(kāi)されたプロモーションもさっぱりだった。中國(guó)の個(gè)人消費(fèi)の指標(biāo)であり、多くの日本企業(yè)も関わっている。この大きな変化の真相に迫ってみたい。

■データの発表なし…アリババ、京東が示し合わせ？

最大の不思議は、GMVの発表がないことだ。この數(shù)字は、中國(guó)の個(gè)人消費(fèi)の動(dòng)態(tài)を表す格好の指標(biāo)として、世界中の注目を集めていた。

2021年の雙11では、全通販サイトのGMVは9651億元に達(dá)した。そのうちアリババが5403億元、京東が3491億元と、この2トップで全體の92％を占めた。その2社とも音沙汰なしというのは、示し合わせた行動(dòng)に間違いない。特にアリババのそれは、中國(guó)小売業(yè)と経済成長(zhǎng)の象徴だった。推移は以下の通り。13年間でなんと1萬(wàn)倍以上に増加した。

2009年 5000萬(wàn)元

2010年 9億3600萬(wàn)元

2011年 52億元

2012年 191億元

2013年 352億元

2014年 571億元

2015年 912億元

2016年 1207億元

2017年 1683億元

2018年 2135億元

2019年 2683億元

2020年 4982億元

2021年 5403億元

以前は、ユニクロがレディース、メンズ、インナーの衣料3冠王に輝いた、ヤーマンの美顔器が大きく伸びた、パナソニックがバス、キッチン商品で多數(shù)ランクインしたなど、日本のブランド情報(bào)も豊富にあった。しかし、今年はそれらもほとんど表に出てこない。

■実際の數(shù)字は…公式発表の60％？

中國(guó)メディアも真相に迫ろうとしている。調(diào)査機(jī)関、星図數(shù)據(jù)のレポートによれば、今年の雙11の全サイトの流通取引総額は前年比15．6％増の1兆1154億元だった。この數(shù)字だけを見(jiàn)れば順調(diào)だ。

しかし、実態(tài)は額面どおりではないようだ。ネット通販界のオピニオンリーダー、李成東氏が2020年に結(jié)成した「海豚社」という組織がある。EコマースとO2Oなどの新消費(fèi)、新國(guó)産商品などを考える先端のコミュニティーで、20社以上の100億元級(jí)ネット通販創(chuàng)業(yè)者、500社以上の新國(guó)産ブランド創(chuàng)始者が參加している。

この海豚社メンバーによれば、大部分の雙11加盟業(yè)者が売り上げを落とすダウントレンドに間違いないという。そして実際に納品完了した商品の総額はGMV公稱(chēng)データより40％ほど少ないと指摘した。例えばあるジュエリーは1億元の予約注文があった。しかし出荷前に50％がキャンセルされた。殘り5000萬(wàn)元分のうち、実際に決済され出荷されたのは、またその50％だった。配達(dá)された商品のうち、さらに50％が返品され戻ってきた。こうしたケースでは、どの時(shí)點(diǎn)のGMVをカウントしているのか定かではない。

■その他のデータ…下降は鮮明

國(guó)家統(tǒng)計(jì)局データによれば、11月1～11日の全國(guó)の宅急便取扱量は前年比10．6％減少した。11月11日當(dāng)日に限れば20．7％の減少だった。また、中金交運(yùn)という民間物流企業(yè)によれば、セール期間の1日平均集荷量は前年比9％減の3億8800萬(wàn)件だった。2021年は平均4億2500萬(wàn)件で、前年比18％も伸びていた。

アリババのプレセール（本番前の10月24日～10月31日）データが発表されている。なお、このデータも雙11の全體GMVに含まれる。それによれば、主力の化粧品?コスメが5．2％減、服裝?バッグが42％減だった。一方、家電は40．6％増、ペットは44．2％増、文具は11．4％増となっているが、構(gòu)成比3分の1を占める化粧品?コスメの減少が大きく、全體では3．4％減だった。この數(shù)字もセールの全體傾向を表していると考えられる。

■アリババと京東…実體経済への貢獻(xiàn)を宣言

11月11日夜、アリババ國(guó)內(nèi)デジタル商業(yè)部門(mén)責(zé)任者は、「我々は今年の雙11を通じて、國(guó)內(nèi)市場(chǎng)の巨大な潛在力と消費(fèi)活力、中國(guó)経済と産業(yè)の持続的回復(fù)を見(jiàn)た。我々は実體経済の発展にさらに奉仕できる自信がある」と述べた。京東の小売部門(mén)責(zé)任者も「我々は、実體経済の一員として、すべてのパートナーと手を攜え、より強(qiáng)固な実體経済の建設(shè)に最大の貢獻(xiàn)をする」と述べている。ここでも示し合わせたように実體経済を強(qiáng)調(diào)した。これまでのGMV競(jìng)爭(zhēng)は実體ではなかったと告白したようにも見(jiàn)える。一方で、過(guò)酷な爭(zhēng)いをリセットできるとホッとしているようでもある。

■イノベーション…新勢(shì)力の臺(tái)頭

業(yè)界消息筋は、今後のネット通販の発展には商品とビジネスモデル、雙方のイノベーションが欠かせないと強(qiáng)調(diào)する。

例えば、ショートビデオアプリ、抖音（海外名TikTok）だ。抖音の発表によれば、ライブコマース「抖音電商」の10月31日～11月11日の加盟業(yè)者は86％増、延べ3821萬(wàn)時(shí)間のライブにより、100萬(wàn)元を売り上げた番組は7667に達(dá)した。抖音電商最大の特色は、MAU6億8000萬(wàn)（2022年6月）を生かし、「興趣（興味）電商」を構(gòu)築しつつあることだ。膨大なショート動(dòng)畫(huà)の投稿、視聴履歴からユーザーの興味分野の商品を割り出し推奨する。商品検索と購(gòu)入履歴に依存した従來(lái)型のレコメンド機(jī)能にはない畫(huà)期的な仕組みだ。ビジネスモデルのイノベーションが進(jìn)行している好例だろう。

何の発表もなく、うやむやに終わった感の強(qiáng)い2022年の雙11だが、ネット通販新時(shí)代への契機(jī)ともなりそうだ。

■筆者プロフィール：高野悠介

1956年生まれ、早稲田大學(xué)教育學(xué)部卒。ユニー株（現(xiàn)パンパシフィック）青島事務(wù)所長(zhǎng)、上海事務(wù)所長(zhǎng)を歴任、中國(guó)貿(mào)易の経験は四半世紀(jì)以上?，F(xiàn)在は中國(guó)人妻と愛(ài)知県駐在。最先端のOMO、共同購(gòu)入、ライブEコマースなど、中國(guó)最新のB2Cビジネスと中國(guó)人家族について、ディ－プな情報(bào)を提供。著書(shū)：2001年「繊維王國(guó)上?！箹|京図書(shū)出版會(huì)、2004年「新?繊維王國(guó)青島」東京図書(shū)出版會(huì)、2007年「中國(guó)の人々の中で」新風(fēng)舎、2014年「中國(guó)の一族の中で」Amazon Kindle。