人類の歴史で「農(nóng)業(yè)の発明」は実に畫期的だった。人々が餓死する危険性は、完全とは言えなくとも、大幅に減少した。そのため、より多くの人口を養(yǎng)えるようになった。そして多く得る者と少なく得る者の分離が発生し、社會(huì)に階級(jí)が出現(xiàn)した。治水や農(nóng)地の整備の必要があり上層階級(jí)は強(qiáng)い権力を持つようになった。そして文明が出現(xiàn)した。北京大學(xué)歴史學(xué)科の韓茂莉教授はこのほど、中國(guó)メディアの中國(guó)新聞社の取材に応じて、中國(guó)の農(nóng)業(yè)と世界の結(jié)びつき、そして中國(guó)が世界に果たした貢獻(xiàn)を説明した。以下は韓教授の言葉に若干の説明內(nèi)容を追加するなどで再構(gòu)成したものだ。

■人類史上で最も長(zhǎng)かった「農(nóng)業(yè)の波」の期間、中國(guó)は常に“主役級(jí)”だった

世界の三大主食作物とは通常、米、小麥、トウモロコシを指す。全世界の人口の約6割が米を主食にしているとの統(tǒng)計(jì)もある。この米の農(nóng)作物化は中國(guó)で行われた。今から1萬(wàn)年以上前の長(zhǎng)江の中下流地域や銭塘江流域で、住民は稲を農(nóng)作物に改良した。野生の植物をそのまま農(nóng)作物として利用できることは、ほとんどない。より多く、より確実に収獲できる株を選ぶ作業(yè)を繰り返して初めて、人にとって真に役に立つ品種が得られる。言わば、植物の「家畜化」だ。

中國(guó)で「家畜化」された稲は、東アジアや東南アジア、南アジア地域に伝わり、さらに多くの地域に広がっていった。

中國(guó)で「家畜化」に成功した植物は米だけではない。華北ではアワやキビが植えられるようになった。河北省武安市にある磁山文化遺跡では、今から9000年前の人々が、アワを栽培して主食にしていたことが分かっている。中國(guó)北部には西方から小麥などが入ってきたが、中國(guó)北部で「家畜化」された作物が外に出ていく現(xiàn)象も発生した。中國(guó)の南部からは米、北部からはアワやキビなどが、世界に広まっていった。

米國(guó)の未來(lái)學(xué)者のアルビン?トフラー（1928－2016年）は1980年に発表した著作の「第三の波」で情報(bào)化社會(huì)の到來(lái)を予言し、それを「第三の波」と名づけた。トフラーの言う「第一の波」とは農(nóng)業(yè)の始まりであり、「第二の波」とは工業(yè)化だ。これらの中では、「第一の波」によって形成された期間が最も長(zhǎng)かった。中國(guó)はその期間を通じて常に、世界の中でも「主役級(jí)」の存在だった。

食べ物だけでなく、絹も農(nóng)業(yè)生産によってもたらされた。洋の東西を結(jié)んだ「シルクロード」という言葉があるが、この言葉は、中國(guó)が歴史を通じて世界に及ぶ物流の重要な起點(diǎn)だったことを意味する。

■「生きにくかった場(chǎng)所」だからこそ、古代文明が出現(xiàn)

古代四大文明とは通常、チグリス?ユーフラテス川の流域だった古代オリエントと、ナイル川流域だったエジプト、ガンジス川流域のインド、そして黃河流域の中國(guó)の中原地帯を指す。いずれも大河流域の乾燥地帯だった。

なぜ、大河流域の乾燥地帯で、人類初期の大文明が形成されたのだろうか。農(nóng)業(yè)が出現(xiàn)する前、人類は狩猟採(cǎi)集で食物を得ていた。人口が増加し、干ばつなどに見舞われると食物が不足して、人口を養(yǎng)うことができなくなる。

そのような厳しい狀況にさらされた人々は、植物の成長(zhǎng)に目を向けるようになったのかもしれない。そして、自ら植物を育ててみようと考えた。農(nóng)業(yè)の原點(diǎn)だ。植物を栽培するには、道具の製造や水利の整備が必要だ。こうして、文明の燈りがともされた。人類にとってより厳しい生存の危機(jī)にさらされた乾燥地帯で、より早い時(shí)期に文明化の一歩が踏み出されたと考えられる。

中國(guó)の長(zhǎng)江流域で稲作文化が発生したことも、環(huán)境と関係があるようだ。考古學(xué)の成果によれば、稲作遺跡のほとんどは山や丘のふもとに存在する。周囲には湖や川、沼が多くあり濕地帯も多かった。そのような場(chǎng)所は稲の自生にとても適している。しかし當(dāng)時(shí)の人々にとって、本當(dāng)の水辺では生きていくことが困難だったのではなかろうか。水害などのリスクは大きかっただろう。そのため、水田など人工施設(shè)を必要とする、水辺から多少は離れた場(chǎng)所で稲作をした。もはや、自生している稲の種子を採(cǎi)取するのではない。つまり、農(nóng)業(yè)が発生した。

■意外に知られていない歴史上の文化の広がり、知らせる努力と技が必要だ

中國(guó)國(guó)外の博物館で、中國(guó)関連の収蔵品を見かけることは珍しいことでない。私が訪れた南米最南端のアルゼンチンのフエゴ島にある小さなレストランでは米飯を提供していた。その時(shí)には心が動(dòng)いた。この米は、直接には中國(guó)以外の國(guó)からもたらされたのかもしれないが、1萬(wàn)年以上前に最初に人工的に栽培されたのは中國(guó)だ。世界のどこに行っても、1杯の米飯を見れば、その米が最初に「家畜化」されたのは中國(guó)だったということになる。

オスマントルコ帝國(guó)時(shí)代の皇室用品の中に中國(guó)製の磁器があるのを見たこともある。ロシア中央部のニジニ?ノブゴロド市には、文學(xué)者のマクシム?ゴーリキー（1868－1939年）の生家があるが、そこでは清朝時(shí)代の女性の上著が展示されている。このように、文化の交流や広がりは、極めて広範(fàn)囲で行われていた。

しかし、中國(guó)以外の人は中國(guó)の文化やその広がりをよく知らない。中國(guó)人の國(guó)外文化に対する理解も不足している。われわれとしては中國(guó)文化を海外にしっかりと紹介したいものだ。

この點(diǎn)で、中國(guó)には改善すべき點(diǎn)がある。例えば遼寧省朝陽(yáng)氏になる牛河梁遺跡から出土した女神像は、巨大な眼球が目立つ。しかしこれは本來(lái)の姿ではなく、目の上の土や彫刻が欠落しためだろう。女神像をただ展示するだけでは、當(dāng)時(shí)の人々の審美眼などを誤解されてしまう。特に國(guó)外の人々に自國(guó)の文化を伝える場(chǎng)合には、誤解されないように注意する必要がある。

私はギリシャを訪れた際に、現(xiàn)地の文化財(cái)を視覚的に紹介する書物を買ったことがある。薄いプラスチック板を何層も使って、現(xiàn)狀と調(diào)査結(jié)果に基づく復(fù)元図を示している。最後のシートを持ち上げると、石づくりの神殿の當(dāng)時(shí)の全貌にたどり著ける工夫だ。こういう工夫があってこそ、見る人は文化と歴史をしっかりと理解できる。

メディアも文化を伝えるための手段だ。どのような方式で、どのような態(tài)度で、われわれの文化を海外に紹介して、理解し、認(rèn)めてもらうべきなのか。中國(guó)文化が海外できちんと評(píng)価されれば、中國(guó)人の老若男女は自國(guó)の文化をより一層、誇りに思うだろう。そのことも大切だ。中國(guó)文化を中國(guó)國(guó)外にどのように伝えるか。これはわれわれが考える価値のある問(wèn)題だ。どのような文化を選び、どのような表現(xiàn)方法を工夫するか。「中國(guó)の物語(yǔ)」を伝えるためには技術(shù)が必要だ。（構(gòu)成 / 如月隼人）