2月、中國(guó)の映畫(huà)館はかなりのにぎやかさだ。多くのハリウッド映畫(huà)が美しさを競(jìng)い合い、奇観や特殊効果を駆使したシーンが繰り広げられている。ただ、中國(guó)ではこうした映畫(huà)に「満腹感」を示す観客も少なくない。

そんな中、中國(guó)の動(dòng)畫(huà)プラットフォームで最近、日本発の異色の作品が公開(kāi)された。映畫(huà)?ドラマ情報(bào)サイトの豆瓣（douban）では評(píng)価に參加したユーザーの9割近くが四つ星、五つ星を付け、スコアは10點(diǎn)満點(diǎn)中8．3點(diǎn)という高得點(diǎn)。稱(chēng)賛さく裂のこの映畫(huà)こそ、日本で昨年12月に公開(kāi)された「ケイコ 目を澄ませて」（中國(guó)語(yǔ)タイトル：恵子、凝視）だ。

中國(guó)山西省で開(kāi)かれた第6回平遙國(guó)際映畫(huà)祭のガラ部門(mén)に參加した同作は、上映時(shí)に會(huì)場(chǎng)が埋め盡くされ、廊下に座って一目見(jiàn)ようとした観客もいたと伝えられている。また、日本では重量級(jí)の賞を含む數(shù)々の映畫(huà)賞を受賞。うち、日本の映畫(huà)界で最も権威あるキネマ旬報(bào)ベスト?テンでは、日本映畫(huà)作品賞、主演女優(yōu)賞、助演男優(yōu)賞、読者選出日本映畫(huà)監(jiān)督賞に選ばれている。

この映畫(huà)は、日本で初めて聴覚障害のある女子プロボクサーとなった小笠原恵子氏の自伝「負(fù)けないで！」を原案としている。女性によるボクシングと言って取り上げずにいられないのは、同じく日本の監(jiān)督による9年前の映畫(huà)「百円の戀」だ?！赴賰窑螒佟工?a target='_blank' href='http://www.wenhuatang.com/search.php?filter=安藤サクラ'>安藤サクラが演じた一子は生活においては絶対的な敗者。だらしなく、墮落した日々を過(guò)ごすが、あるチャンスの下、ボクシングを?qū)Wび始める。そして、そこから人生の物語(yǔ)は新たな方向を得る。

「百円の戀」のストーリー展開(kāi)が前後で衝撃的な対比を生んでいるのに対し、「ケイコ 目を澄ませて」は淡々とした物語(yǔ)だ。せりふは極めて少なく、音楽もかなり抑制され、味気ないトレーニングの場(chǎng)面は丁寧に映像で表現(xiàn)される。これは多くの観客に重苦しさを抱かせるが、意図的な処理のようにみえる。監(jiān)督は背景の音を低くし、せりふをできるだけ減らしている。

ケイコは両耳が聞こえず、このことはプロボクサーへの道がより険しいことを意味している。まず、ジムに入ることすら難しい。試合中、コーチの指導(dǎo)もレフリーの指示も聞こえない。さらに複雑な気持ちにさせられるのは、勝利したケイコのぼうぜんとした様子だ。歓聲が聞こえないため、ケイコは自分が試合に勝ったことが分からない。他人に肩をたたかれ注意を促されてはじめて、ケイコはぼんやりと戦闘狀態(tài)から抜け出す。

「ケイコ 目を澄ませて」は伝統(tǒng)的なスポーツ伝記映畫(huà)の構(gòu)造的な落とし穴から脫卻しており、三宅唱監(jiān)督はケイコという人物の多くの周辺情報(bào)を盛り込まずに、そのもがきや疲れを直接持ち込んだ。映畫(huà)全體も完全にケイコが中心になっているわけではなく、ケイコの物語(yǔ)を通してジムという空間、関連する人物が深く掘り下げられている。物語(yǔ)全體の大筋は、リング上の成功と失敗というよりも、ケイコの心の起伏だ。なぜなら、ケイコは自身を納得させ、自身がなぜ戦い続けるかをはっきりさせねばならないからだ。

表面上、「ケイコ 目を澄ませて」は女性のボクシングにフォーカスしているが、実際は社會(huì)の隅にいる人の心細(xì)さが細(xì)やかに表現(xiàn)されている。作品が靜かに指摘するのは、生活は結(jié)局のところ、逆転の結(jié)末が早くから埋め込まれた、ひたすら前向きな物語(yǔ)ではないという點(diǎn)だ。現(xiàn)実において、努力や熱血が必ず実を結(jié)ぶとは限らない。唯一確実なのは、日々の生活だけだ。ケイコがボクシングを選んだのは夢(mèng)などではなく、心の秩序を保って生きていく方法を見(jiàn)つけたにすぎない。頑張って生きる必要だけがある―。ならば、いつかまたリングに立つ機(jī)會(huì)があるはずだ。

■筆者プロフィール：呂 厳

4人家族の長(zhǎng)男として文化大革命終了直前の中國(guó)江蘇省に生まれる。大學(xué)卒業(yè)まで日本と全く縁のない生活を過(guò)ごす。23歳の時(shí)に急な事情で來(lái)日し、日本の大學(xué)院を出たあと、そのまま日本企業(yè)に就職。メインはコンサルティング業(yè)だが、さまざまな業(yè)者の中國(guó)事業(yè)展開(kāi)のコーディネートも行っている。1年のうち半分は中國(guó)に滯在するほど、日本と中國(guó)を行き來(lái)している。興味は映畫(huà)鑑賞。好きな日本映畫(huà)は小津安二郎監(jiān)督の『晩春』、今村昌平監(jiān)督の『楢山節(jié)考』など。