中國の「二枚舌」外交戦略、2次大戦戦勝國を前面に日本を包囲―BRICS開発銀行では戦後金融秩序に挑戦

八牧浩行    2014年7月18日(金) 6時10分

拡大

BRICS5カ國はブラジルで開催された首脳會議で、獨(dú)自の開発銀行を設(shè)立することで正式に合意。米國が主導(dǎo)してきた戦後の國際金融秩序に対抗することで一致した。その一方で中國は第2次世界大戦後の國際政治秩序維持を前面に外交戦略を打ち出している。資料寫真。

(1 / 2 枚)

BRICS5カ國(ブラジル、ロシア、インド、中國、南アフリカ)はブラジルで開催された首脳會議で、獨(dú)自の開発銀行を設(shè)立することで正式に合意。BRICS初の國際機(jī)構(gòu)となり、アジアやアフリカなど途上國のインフラ整備を支援する。中國が主導(dǎo)し本部が上海に置かれる。習(xí)近平中國國家主席、モディ?インド首相やプーチン露大統(tǒng)領(lǐng)ら各國首脳は、國際社會での影響力を強(qiáng)め、世界銀行、IMF(國際通貨基金)など米國が主導(dǎo)してきた戦後の國際金融秩序に対抗することで一致した。

その他の寫真

その一方で中國は第2次世界大戦後の國際政治秩序維持を前面に外交戦略を打ち出している。

すなわち、第2次世界大戦の「戦勝國」を強(qiáng)くアピールする戦略である。習(xí)近平主席とプーチン大統(tǒng)領(lǐng)は昨年秋からの數(shù)次にわたる首脳會談で「2015年に反ファシスト戦勝70周年記念大會を盛大に行う」ことを確認(rèn)し合っている。中露両國は戦勝國の立場をともに強(qiáng)調(diào)し、尖閣諸島と北方領(lǐng)土を「戦後処理」の結(jié)果、戦勝國(中露)に帰屬することになったと主張。敗戦國?日本の「固有の領(lǐng)土である」との主張に対し「反ファシズム」「戦勝國」をキーワードに共闘しようというもの。同じ戦勝國の米國や英國、フランスなども引き入れようとの思惑もある。まさに戦後レジーム(體制)の再確認(rèn)であり、中韓露3カ國と領(lǐng)土問題を抱え、中韓とは歴史認(rèn)識をめぐってぎくしゃくしている日本にとって「不都合な合意」である。

中國は歐州諸國との経済協(xié)力も強(qiáng)化する。李克強(qiáng)首相は6月中旬に訪英し、キャメロン英首相と會談、中國向けのエネルギー供給の拡大や、ロンドンとイングランド北部を結(jié)ぶ高速鉄道への中國企業(yè)の參加、人民元決済推進(jìn)などで合意した。李首相には200人を超える國有企業(yè)や大手民間企業(yè)の幹部も同行。英中間で締結(jié)した契約額は総額140億ポンド(約2兆4千億円)に達(dá)した。習(xí)近平主席は今年3月、獨(dú)、仏、オランダ、ベルギー4カ國を歴訪、各國で首脳外交を展開し経済交流促進(jìn)で合意している。

このうちフランスではオランド仏大統(tǒng)領(lǐng)と會談。中國自動車大手、東風(fēng)汽車と仏プジョーシトロエングループの提攜を歓迎するとともに、原子力、航空機(jī)、宇宙開発など幅広い産業(yè)分野の協(xié)力を盛り込んだ共同聲明を発表。事業(yè)総額180ユーロ(約2兆5千億円)にのぼる50項(xiàng)目もの経済?産業(yè)協(xié)力に署名した。

戦勝國ではないもののドイツのメルケル首相は7月上旬に訪中し、習(xí)近平國家主席らと會談、包括的な協(xié)力関係を深める方針で一致。李克強(qiáng)氏はその際、「歴史をかがみとする精神は未來に目を向け、平和を大事にすることにつながる」と強(qiáng)調(diào)し、「ドイツを含めた各國とともに永続的な平和と共同繁栄の世界を築くため、たゆまぬ努力をしたい」と述べた。

中國は日中戦爭のきっかけとなった盧溝橋事件から77年を迎えたのを機(jī)に、歴史認(rèn)識問題や集団的自衛(wèi)権の行使容認(rèn)などをめぐり、日本の安倍政権への批判を強(qiáng)めている。中國はドイツが歴史を反省したと評価しており、首脳會談で歴史に言及し、日本との違いを際立たせることを狙った。

「戦勝國」の盟主?米國と対立しているように見える中國だが、「新しい米中関係」を推進(jìn)、実際には手を握り合っているのが実情だ。7月上旬に北京で開催した米中戦略?経済対話に米國から主要閣僚、イエレンFRB(連邦準(zhǔn)備制度理事會)議長、各省幹部が訪中、(1)中國は事情により為替介入を削減する一方、米FRBは金融緩和の対外的影響に配慮する、(2)情報技術(shù)合意を拡大し、相互投資協(xié)定について交渉を進(jìn)展させる、(3)エネルギーや大気汚染、地球溫暖化問題での協(xié)力、(4)中國が議長國となる11月のアジア太平洋経済協(xié)力會議(APEC)首脳會議について米國は成功をサポートする―などで合意した。

「戦後レジームからの脫卻」推進(jìn)を批判

中國は戦勝國としての繋がりをアピールし、「日本は戦後レジームからの脫卻を唱える安倍首相は戦犯が奉られて入いる靖國神社參拝などで戦後秩序を覆そうとしている」と対日非難。國連常任理事國5カ國(米、英、仏、露、中)としての特権もフル活用している。日本は単純な「価値観外交」だけでは、中國のしたたか外交に対抗できないだろう。東アジア地域で歴史的な地殻変動が起きていることを踏まえた上で、各國のリアリズムを冷靜に分析しより効果的な経済外交政策を推進(jìn)すべきである。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財(cái)界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機(jī)ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

この記事のコメントを見る

ピックアップ



   

we`re

RecordChina

お問い合わせ

Record China?記事へのご意見?お問い合わせはこちら

お問い合わせ

業(yè)務(wù)提攜

Record Chinaへの業(yè)務(wù)提攜に関するお問い合わせはこちら

業(yè)務(wù)提攜