アリババの張勇CEOは3月末、事業(yè)の6分社化を発表した。阿里雲(yún)（クラウドコンピューティング）、淘寶天貓商業(yè)、本地生活、國(guó)際デジタル商業(yè)、菜鳥（物流）、文化?娯楽の6部門をそれぞれ獨(dú)立運(yùn)営する。注目は張CEOが直接率いる阿里雲(yún)と祖業(yè)であるネット通販を統(tǒng)括する淘寶天貓商業(yè)だ。この部門のトップは載珊氏という女性だ。アリババは創(chuàng)業(yè)以來(lái)、女性が活躍してきた。その系譜をたどり、今後を展望してみよう。

■創(chuàng)業(yè)メンバー…女性3分の1

アリババには「十八羅漢」と呼ばれる18人の創(chuàng)業(yè)メンバーがいる。そのうち女性は彭雷、張瑛（馬雲(yún)夫人）、蔣芳、載珊、金暖影、韓敏の6氏で、全體の3分の1を占めている。

最も有名なのはアント?グループを大成功に導(dǎo)いた彭雷氏だろう。1971年生まれで、浙江工商大學(xué)で経営管理を?qū)Wんだ。夫の孫彤宇氏も十八羅漢の一人だ。

彭雷氏は、後に創(chuàng)業(yè)者?馬雲(yún)（ジャック?マー）氏の右腕、女馬雲(yún)などと呼ばれるが、創(chuàng)業(yè)時(shí)は何の専門性も持たない月給500元の雑務(wù)係だった。その後10年間は人事を擔(dān)當(dāng)し、有能な人材の採(cǎi)用に貢獻(xiàn)している。馬雲(yún)氏は2010年に彭雷氏を支付寶（Alipay）のCEOに據(jù)えた。しかし、彼女には金融や決済の知識(shí)はまるでなかった。當(dāng)時(shí)の支付寶は多くの苦情や問(wèn)題を抱えていた。しかし、彼女の學(xué)習(xí)能力は極めて高かった。ポイントを素早くつかみ、業(yè)務(wù)報(bào)告した部下に強(qiáng)い印象を與えた。そして、ネット通販プラットフォーム?淘寶の決済ツールから脫卻し、新収益モデルの確立を打ち出す。その目標(biāo)はQRコード決済としてのAlipayで、MMFの「余額寶」、小口金融の「花唄」「借唄」、信用スコアの「胡麻信用」などに次々に実現(xiàn)していった。いずれも大成功を収め、中國(guó)人の生活を一新した。2016年に中國(guó)人民銀行の主導(dǎo)で「中國(guó)互聯(lián)網(wǎng)金融協(xié)會(huì)」が設(shè)立されると、副會(huì)長(zhǎng)に選出される。翌2017年には胡潤(rùn)女性企業(yè)家ランキング6位に選出された。2014年にアリババから分離したアント?フィナンシャル（現(xiàn)アント?グループ）はいつの間にか世界最大のユニコーン企業(yè)となっていた。目もくらむ大成功だった。

■利益相反…拼多多もアリババ系？

彭雷氏は2016年にアントのCEOを外れ、2018年には會(huì)長(zhǎng)職からも退いた。これには理由がある。彭雷氏の夫、孫彤宇氏は淘寶の初代CEOを務(wù)め、淘寶の父とも呼ばれていたが、馬雲(yún)氏と意見(jiàn)が合わず、2008年にアリババを退社した。その後、拼多多の主要エンジェル投資家となる。拼多多は2015年の創(chuàng)業(yè)以來(lái)、共同購(gòu)入型ネット通販として急成長(zhǎng)を遂げた。創(chuàng)業(yè)者の黃錚氏は、孫彤宇氏の理念は拼多多の成功に大きな影響を與えたと述べている。隠れアリババ系とも言える。とにかく夫がアリババと利益相反の関係になった。彭雷氏がアントの會(huì)長(zhǎng)を辭した2018年、拼多多は創(chuàng)業(yè)わずか3年で米國(guó)ナスダック上場(chǎng)を果たしている。

彭雷氏は、その業(yè)績(jī)の大きさに比べ、経歴の最後は尻すぼみになった印象だ。このような事情から、仕方なかったのかも知れない。

■載珊氏…ネット通販?zhǔn)聵I(yè)の王道を歩む

そして現(xiàn)在、最も注目されている女性は同じく十八羅漢の一人、載珊氏だ。アリババ最大のプロフィットセンターである淘寶天貓商業(yè)のCEOとなった。

ネット辭書に出身地や生年の記載はないが、馬雲(yún)氏が教師をしていた時(shí)代の生徒だったようだ。杭州電子科技大學(xué)で工程學(xué)を?qū)煿イ贰?999年にアリババの創(chuàng)業(yè)グループに參加した。2000年代は顧客サービスや広東省の責(zé)任者など営業(yè)の第一線にいた。2013年には彭雷氏と同様、人事の責(zé)任者となる。2017年にB2B事業(yè)群とAli Express（國(guó)際版淘寶）の責(zé)任者、2022年に新設(shè)のデジタル商業(yè)部門の責(zé)任者となる。そして今回の6分社化に伴い、淘寶天貓ビジネスグループのCEOに就任した。ネット通販のあらゆる経験を重ね、王道を歩んできた。

■アリババ史上最大の変化…コンテンツ変換

載珊氏はさっそく動(dòng)き始めた。これまでの淘寶は商品がコンテンツだったが、これからはコンテンツを商品にする。そのため、史上最大規(guī)模の投資を行う。商品、ショートビデオ、ライブ放送を充実させ、全國(guó)的な生活総合サービスアプリを志向する。商品、ショートビデオ、ライブ、種草（商品推奨）コンテンツを淘寶の街區(qū)（テリトリー）と位置付け、今後5年間で數(shù)千萬(wàn)の販売者、1億を超えるクリエーターを集める。販売者をコンテンツクリーターに変えていく作戦だ。

その目的のため、すでに「好物研究所」「態(tài)棒」などのアプリをローンチしていたが、効果は限定的だ。次の一手として、種草コンテンツの寶庫(kù)「小紅書」との提攜もうわさされる。重大な経営判斷が次々に迫っており、手腕の見(jiàn)せどころだ。

■成功の秘訣…従業(yè)員の49％、役員の30％が女性

日本企業(yè)の取締役會(huì)はゴマ塩頭の中年男ばかりという景観は一向に変わらず、とても多様な価値観を取り込めるとは思えない。彼らは異論を排除し、守りに入りやすい。日本の小売大手の女性役員は、いなきゃまずいから、と取って付けたような印象が強(qiáng)く、彭雷氏、載珊氏のように企業(yè)の屋臺(tái)骨を背負(fù)い、広く世に知られた女性役員は見(jiàn)當(dāng)たらない。かつて創(chuàng)業(yè)者の馬雲(yún)氏は、アリババ成功の秘訣を問(wèn)われて、従業(yè)員の49％、役員の30％が女性だからだと答えた。これは真実を表しているに違いない。

■筆者プロフィール：高野悠介

1956年生まれ、早稲田大學(xué)教育學(xué)部卒。ユニー株（現(xiàn)パンパシフィック）青島事務(wù)所長(zhǎng)、上海事務(wù)所長(zhǎng)を歴任、中國(guó)貿(mào)易の経験は四半世紀(jì)以上?，F(xiàn)在は中國(guó)人妻と愛(ài)知県駐在。最先端のOMO、共同購(gòu)入、ライブEコマースなど、中國(guó)最新のB2Cビジネスと中國(guó)人家族について、ディ－プな情報(bào)を提供。著書：2001年「繊維王國(guó)上?！箹|京図書出版會(huì)、2004年「新?繊維王國(guó)青島」東京図書出版會(huì)、2007年「中國(guó)の人々の中で」新風(fēng)舎、2014年「中國(guó)の一族の中で」Amazon Kindle。