中國は2015年に発表した「中國製造2025」計畫に基づき、自動車産業(yè)の低炭素化、情報化、智能（インテリジェント）化を目標(biāo)に掲げた。多額の補助金を新エネルギー車（EV車、燃料電池車、PHEV）に注ぎ込んで普及を図り、思いのほか順調(diào)に進んだ。今後の重點は情報化、智能化、つまり自動運転化へ移る。中國メディアの報道からその現(xiàn)狀を見ていこう。

■EV車の成功、自動車輸出が世界一に

中國の2023年上半期の新エネルギー車販売は前年同期比44．1％増の374萬7000臺で、うち輸出は同160％増の53萬4000臺だった。この結(jié)果、中國は日本を抜き、世界最大の自動車輸出國となった。これは新エネルギー車政策の成功証明でもある。経済指標(biāo)が冴えない中、中國メディアはこの“戦果”に沸き立っている。

次の課題の自動運転はL2＋αの段階にとどまっている。テスラのイーロン?マスク最高経営責(zé)任者（CEO）は毎年のように「來年には実現(xiàn)する」と繰り返し、オオカミ少年になってしまった。また、BYD創(chuàng)業(yè)者の王伝福（ワン?チュワンフー）氏は、「自動運転はナンセンス」とこきおろす発言をした。その一方、この2トップ以外のメーカーは余計な発言をせず、獨自技術(shù)を研究開発してきた。新興EV車メーカーはすべて自動運転の商業(yè)化を見據(jù)えて事業(yè)を開始したといってよい。成功の見返りは大きいとみているからだ。

■半導(dǎo)體自給率の目標(biāo)達(dá)せず

中國メディア、テンセント?ニュースは自動運転用チップの自給率に関する記事を掲載した。自動運転の実現(xiàn)にはセンサーや高精度マップなどさまざまな技術(shù)的課題があるが、半導(dǎo)體の自給こそ重要だとしている。

2015年発表の「中國製造2025」では、半導(dǎo)體自給率の目標(biāo)を2020年に49％、2030年に75％としていた。しかし米調(diào)査會社ICインサイツによると、2021年の時點で16．7％にすぎない。

自動運転用SoC（システム?オン?チップ）の自給率はさらに低く、10％にも満たない。海外製、それもただ1社、エヌビディアに大きく依存している。同社の2022年の中國市場シェアは81．6％に達(dá)する。2位は北京地平線機器人技術(shù)研発（6．7％）、3位は黒芝麻智能科技（5．2％）で、4位以下は1％以下にすぎない。記事はこの圧倒的な差に追い付くためには中央計算アーキテクチャに注力すべきだと指摘している。

■自動運転用チップのシステム融合でビジネスチャンス

中央計算アーキテクチャとは、駐車、智能制御、コックピット、ドライバーの狀態(tài)など複數(shù)システムの情報を1つのSoCに融合させるものだ。2025年に実現(xiàn)するとみられ、自動運転用チップの根本変革になるという?，F(xiàn)在はテスラだけがこの中央計算アーキテクチャと地図データの実裝を完了している。中國の小鵬汽車と理想汽車も実裝しつつある。これらは異なるチップを組み合わせるため、大きなビジネスチャンスを秘めている。

中國汽車芯片産業(yè)創(chuàng)新戦略聯(lián)盟によると、中國には自動車用チップの関連企業(yè)が約100社ある。うち50社が上場企業(yè)で、実裝レベルの製品を量産できると主張している。アナリストは中國には巨大な「自動車チップ軍団」が形成されたと指摘している。

■黒芝麻智能にIT大手も出資

新しい動きも盛んになっている。その1つはシェア3位の黒芝麻智能の上場だ。

黒芝麻智能は2016年に武漢で設(shè)立され、香港、マカオ、臺灣資本でスタートした。2018年にボッシュと提攜。2019年に上海汽車が出資、第一汽車と提攜。2020年にL2自動運転用チップA1000シリーズが販売開始。2021年にテンセント（騰訊）、東風(fēng)汽車、シャオミ（小米）が出資。2022年に吉利汽車がA1000のSoCを採用。A1000は2022年までに2萬5000セットを出荷した。2023年に百度と提攜し、SoCの共同開発を発表。第一汽車の國産高級車「紅旗」に採用される。

順調(diào)に事業(yè)を拡大してきたが、今回の上場でさらに巨額の開発資金を得た。自社量産チップによるソリューションを提供していく。

■エヌビディアが小鵬汽車から引き抜き

一方、逆の動きもある。小鵬汽車の自動運転の擔(dān)當(dāng)副社長、呉新宙（ウー?シンジョウ）氏が退社した。同氏は1993年に清華大學(xué)電子系に入學(xué)後、米國留學(xué)し、イリノイ大學(xué)アーバナ?シャンペーン校（UIUC）で修士號と博士號を取得した。その後、クアルコムで自動運転開発を擔(dān)當(dāng)し、2019年に小鵬汽車に入社した。クアルコムなどから人材を集め、小鵬の自動運転開発チームを主導(dǎo)し、駐車メモリー機能や高速道路での自動運転支援システム「NGP」を発表、北京から広州までの長距離テストを行った。さらに都市型の「XNGP」を発表し、中國で業(yè)界をリードする存在となった。

その中心人物が絶好調(diào)の半導(dǎo)體巨頭エヌビディアに、しかもグローバル副社長ポストに迎えられるというのだ。小鵬汽車にとっては當(dāng)面痛手だろうが、獨走するエヌビディアとの関係強化になり、これは悪いことではなさそうだ。

■量から質(zhì)への転換を

中國の「自動車チップ軍団」は自動運転チップの分野で多くのポジションを占めているが、それらは量においてであり、質(zhì)を伴っていない。エヌビディア、クアルコム、テスラと競爭するレベルにはないと記事は冷靜に認(rèn)めている。しかし、システム融合はチャンスとみて、黒芝麻智能の上場など、業(yè)界では大規(guī)模投資が続いている。それに最先端のロジック半導(dǎo)體でTSMCを追いかけるより、自動車に注力した方がより現(xiàn)実的だ。中國企業(yè)の強みは、ジャッジが速く、どんどん実裝していくパワーにある。この突破力は局面を一新させる可能性を秘めている。

■筆者プロフィール：高野悠介

1956年生まれ、早稲田大學(xué)教育學(xué)部卒。ユニー株（現(xiàn)パンパシフィック）青島事務(wù)所長、上海事務(wù)所長を歴任、中國貿(mào)易の経験は四半世紀(jì)以上?，F(xiàn)在は中國人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中國最新のB2Cビジネスと中國人家族について、ディ－プな情報を提供。著書：2001年「繊維王國上?！箹|京図書出版會、2004年「新?繊維王國青島」東京図書出版會、2007年「中國の人々の中で」新風(fēng)舎、2014年「中國の一族の中で」Amazon Kindle。