長田浩一 2023年9月6日(水) 6時0分
拡大
8月下旬、韓國の2つの主要メディアが、相次いで日本語サイトに自國や北朝鮮の人口減少に関する記事を掲載した。資料寫真。
筆者はこれまで日本の少子高齢化について、何回か當欄で意見を述べさせていただいたが、これは日本に限った問題ではない。最近伝えられた韓國と中國の昨年の出生率は日本を大きく下回っており、より深刻な狀況だ。このままでは人口減を主因に、東アジアの主要3國がそろって衰退に向かう可能性もある。このトレンドを押しとどめる手立てはないのだろうか。
8月下旬、韓國の2つの主要メディアが、相次いで日本語サイトに自國や北朝鮮の人口減少に関する記事を掲載した。中央日報の「大韓民國は完全に終わった…韓國の出生率に米國學者」と聯合ニュースの「韓國と北朝鮮の人口、2070年に計5900萬人臺に減少」だ。
前者は、昨年の韓國の出生率が0.78(前年は0.81)だったと聞いた米國の學者が衝撃を受け、「これほど低い出生率は聞いたことがない」と頭を抱えたという內容。少子化は先進國にほぼ共通してみられる現象だが、先進國クラブと言われる経済協(xié)力開発機構(OECD)加盟國の平均出生率は1.59(2020年)で、1.0を下回るのは韓國だけ。日本の1.26(22年)を大きく下回る。また、このままいけば韓國は2750年には人口減により消滅するとの英オックスフォード大學の試算も紹介している。
後者は、韓國だけでなく北朝鮮でも少子高齢化が進んでおり、2070年には両國合計の人口は5900萬人臺と、21年(7780萬人)から大きく減少するという記事。北朝鮮では、1990年代後半の経済危機で多くの餓死者を出したことなどから少子化が進んでいるという。人口を年齢順に並べた時の中央値である中位年齢は21年時點で韓國が43.4歳、北朝鮮が35.6歳だが、70年にはそれぞれ61.3歳、45.1歳に上昇するとしている。
話は橫道にそれるが、最近、サッカーや野球の代表戦などスポーツの分野で日本が韓國に対し優(yōu)位に立つケースが目立つ。アジア大會のメダル爭いでは、四半世紀にわたりトップ3は中國、韓國、日本の順だったが、2018年の前回大會で日本が韓國を逆転。9月下旬に中國?杭州で開幕する次回大會の韓國選手団の責任者は「(中國、日本に次ぐ)3位を目指す」と発言したと報道されており、今回は始まる前から白旗を掲げた格好だ。こうした狀況について、「韓國の急速な少子化の影響がスポーツの弱體化という形で最初に現れた」とする見方があるという。その當否について私は判斷できないが、一般論として、少子化が進めば若者が減り、社會の活力が失われ、スポーツの競爭力も低下するというのはおおむね間違っていないだろう。そして、少子化の影響はスポーツ以外の分野にも広がっていく。
中國の出生率も低下が続いている。ロイター通信などによると、22年の出生率は過去最低の1.09だった。20年は1.30、21年は1.15だったので、ここ數年の低下は著しい。いわゆる「一人っ子政策」は2015年に廃止され、その後は出産を促進する方向に転換したが、今のところその効果は出ていないようだ。
日本総研は今年3月に発表した中國の少子化に関する調査リポートで、子供を持つ家庭への補助金給付などこれまで実施された出産奨勵策は決定打にはならないとした上で、「上海市の出生率は0.7と、東京の1.12(2021年)を大幅に下回る?!际谢涓邔W歴化が進む一方で、住宅費や教育費の家計負擔が増えることから、中國の少子化は今後一段と加速すると見込まれる」との予測を示した。
世界第2位の経済大國として、米國と世界の覇権を爭う存在の中國だが、こうした少子化は將來の國力にどう影響するのか。フランスの著名な人口學者、エマニュエル?トッド氏は極めて辛らつだ。
「中國に関して言えば…中長期的に見て、出生率の異常な低さからして、世界にとって脅威になることはあり得ません?!瓕恧稳丝跍p少と國力衰退は火を見るより明らかで、単に待てばいい。待っていれば、老人の重みで自ずと脅威ではなくなるでしょう」
いささか厳しすぎる見方のように思えるが、こうした可能性がある以上、習近平政権にとって少子化対策は最重要課題と言えるのではないか。余計なお世話かもしれないが、一帯一路にかまけている場合ではない、と考えるのは私だけだろうか。
臺灣や香港の出生率も1.0前後で推移しており、東アジアの少子化は他地域に比べ突出して進んでいるが、その理由は何なのか。多くの識者が指摘するのが結婚數の減少だ。日本経済新聞の村山宏氏が雑誌「世界」21年8月號に寄稿した論考「いま東アジアで何が起きているのか」によると、中國大陸、韓國、臺灣とも、15年に比べ20年は婚姻件數が3割程度減っており、出生數もほぼそれに比例して減少した。東アジア各國で若者たちが結婚しない背景にはさまざまな経済的、文化的、社會的要因があり、トレンドの逆転は容易ではない。日本でも事情は同じだが、何か手立てはないのか。
筆者は昨年7月の當コラムで、日本の経済的な停滯を打破するには大膽な移民受け入れが最も効果的とする経営コンサルタントの大前研一氏の見解を紹介した。日本人の少子化が止まらない以上、人口を可能な限り維持して経済の縮小を押しとどめるには、移民に頼るほかないというわけだ。
移民というと、アレルギー的に反発する向きも少なくない。しかし今の日本は、われわれが認識している以上に既に「移民國」になっているらしい。宮島喬「『移民國家』としての日本」(22年巖波新書)によると、コロナ前の2010年代後半、新規(guī)外國人入國者數(観光などの短期滯在者を除く)は年平均約43萬人で、「オーストラリア、カナダのそれを超え、イギリスと肩を並べ、フランスの2倍におよぶ」という。出國者を差し引いても毎年20萬人かそれ以上、外國人が増えている計算になる。確かに、筆者の住む東京多摩地區(qū)でも多くの外國人が生活し、日本人と共生している姿が見られる。
もちろん、移民の増加に伴いさまざまな問題が発生するのは「移民先進國」の経験が教えるところ。それを踏まえた上で、國力の低下を食い止めるために一層の移民受け入れ増加に踏み切るのか、それともこれ以上門戸を広げないのか―今のところ大きな爭點になっていないが、近い將來、われわれ自身が選択を迫られるかもしれない。
■筆者プロフィール:長田浩一
1979年時事通信社入社。チューリヒ、フランクフルト特派員、経済部長などを歴任?,F在は文章を寄稿したり、地元自治體の市民大學で講師を務めたりの毎日。趣味はサッカー観戦、60歳で始めたジャズピアノ。中國との縁は深くはないが、初めて足を踏み入れた外國の地は北京空港でした。
この記事のコメントを見る
長田浩一
2022/7/30
Record China
2023/9/5
Record Korea
ピックアップ
we`re
RecordChina
お問い合わせ
Record China?記事へのご意見?お問い合わせはこちら
業(yè)務提攜
Record Chinaへの業(yè)務提攜に関するお問い合わせはこちら
この記事のコメントを見る