「本貫は?」の質(zhì)問(wèn)で感じた韓國(guó)と北朝鮮の想像以上の距離

北岡 裕    2023年9月20日(水) 10時(shí)0分

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韓國(guó)ではある年齢を過(guò)ぎた人なら自分の本貫を知っているが、北朝鮮では本貫は廃止されているという。寫(xiě)真は平壌。

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いつかの訪朝に備えて韓國(guó)語(yǔ)教室に通い始めた。先生と自己紹介をする。名前、経歴、職業(yè)と続き、大事なのが年齢の確認(rèn)だ。

その他の寫(xiě)真

「何歳ですか?」「何年生まれですか?」と聞くより、「私は1976年生まれですが、あなたは何歳ですか?」という聞き方がよりよい。先生は女性で私と同世代だが、若干年下ということがわかった。もちろん授業(yè)中はお互いに敬語(yǔ)を崩すことはないが、韓國(guó)人と知り合った際、早い段階で年齢の上下はお互いオープンにするとよい。

禮儀に加えて、年上の人に対しては敬語(yǔ)で、年下であればぞんざいな言葉(パンマルという)で話さなければならない。この縛りが北朝鮮も韓國(guó)も厳格なのである。偶然にも年齢が一緒であればお互いにパンマルで気楽に話すことができ、リラックスした関係でいられる?!袱⊥?jí)生だ!」と相手が気づいた時(shí)の喜びはちょっと大げさなくらいだ。

目の前に現(xiàn)れた人にどう接し話し、どう付き合うべきか。値踏みするというと少し違うかもしれないが、相手と自分の位置を早々に確認(rèn)、確定させないとむずむずと落ち著かなくなってくるようなのだ。韓國(guó)ドラマでも言葉使いは場(chǎng)面転換の有効なツールである。例えば何かにつけて反目し合っていた刑事2人の言葉がパンマルに切り替わる。共闘し大きな敵を倒す。逆もある。久しぶりに會(huì)った別居中の夫婦。妻に未練のある夫は今まで通りパンマルで話し、妻は終始丁寧語(yǔ)で話す。2人の冷え切った関係、後戻りできない狀況を言葉使いで演出する。日本のドラマでもありがちなシーンだが、その後の展開(kāi)を見(jiàn)ると言葉使いの違いは想像以上の距離となっていると感じることが多い。

ヘダンファ館(現(xiàn):柳京館)の利用料金案內(nèi)表?!咐谩工夏悉扦膝ぅ瑗螭日iむが北ではリヨンとなる(赤線部分)。営業(yè)案內(nèi)は奉仕案內(nèi)となり、まるで表現(xiàn)が違う(青線部分)

自分よりはるかに年上の人であっても、年齢の話はよい話題になる?!赶陇蜗⒆婴纫痪wだね」という言葉が出たらチャンスだ。特に女性であればほぼ100パーセント息子自慢が始まる。「ソウル大學(xué)を出て、サムスングループに勤めていて…」などと自慢げに話し始めたら、「ほう!」「それは素晴らしい!」と少し大げさに合いの手を入れてみよう。やがて「なんだか日本人の息子が出來(lái)たみたいだよ」と女性も破顔。もう少しだけ調(diào)子に乗って「オモニム(お母さま)!」と呼んでみるとまんざらでもない様子で、痩身な私を見(jiàn)て「アイゴー、日本の息子よ。たくさん食べなさい」と初対面の女性に定食のお勘定をもってもらったことが過(guò)去何度もある。

朝鮮民族は名字の種類(lèi)が少なく、約300種といわれている。そして偏りがある。金氏だけで約20%。トップ5の金、李、樸、崔、鄭で50%近くになる。そして下の名前が2文字でフルネームが合計(jì)3文字の人がほとんどだ。尹錫悅大統(tǒng)領(lǐng)も金正恩総書(shū)記もそう。ドラマ「愛(ài)の不時(shí)著」で有名になった俳優(yōu)のヒョン?ビンは少し珍しい例だ。困るのはビジネスの席で、名刺交換してもまず1回で名前を覚えられない。でも相手は韓國(guó)語(yǔ)が出來(lái)る日本人だと覚えているので、2回目は「おお!韓國(guó)語(yǔ)の出來(lái)る北岡さんじゃないですか」となる。一方こちらはこの人誰(shuí)だっけ?李さんだったか金さんだったか…?と慌てることになる。

ところが金氏にもいろいろあるのである。例えば安東金氏、全州金氏という存在がある。安東、全州の部分を本貫という。日本の上杉家(山內(nèi)上杉家、扇谷上杉家など)や藤原四家(北家、南家、式家、京家)を思い浮かべる人もいるだろうか。

最近、韓國(guó)ドラマで気に入った俳優(yōu)がいるとウィキペディアで調(diào)べてみるのだが、みな本貫が書(shū)かれていることに気づいた。韓國(guó)語(yǔ)教室の先生に本貫を聞くと、「私は〇〇崔氏です」と即、答えが返ってきた。なんでも小學(xué)生になる前から祖父母に「あなたは〇〇崔氏」だと教えられ、族譜(系図)を持って自分がどこにいて何代目にあたるのかも教え込まれてきたという。

この先生に限らずほぼ誰(shuí)でも、ある年齢を過(guò)ぎた韓國(guó)人なら自分の本貫を知っている。初対面の人に名前を聞く時(shí)は本貫も同時(shí)に確認(rèn)する。同じ姓の場(chǎng)合は特にそうだ。戀愛(ài)?結(jié)婚対象から外さねばならなくなるからである。

韓國(guó)では97年の憲法裁判所の違憲判斷までは、親等上問(wèn)題がなくても同じ本貫同士の結(jié)婚は出來(lái)なかった。近親婚とみなされていたのである。そのため同姓の気になる異性がいたら早々に本貫を確認(rèn)して將來(lái)の悲劇を防いでいた。韓國(guó)語(yǔ)教室の先生に「今は韓國(guó)で同じ本貫同士の結(jié)婚は法的には問(wèn)題がないようですが」と問(wèn)うと、「駄目なんです。気持ち悪い」と言う。今も特に年配の人の反対があることも多いと聞く。生理的に気持ち悪い、またタブーとして根強(qiáng)く殘っているということだろう。

実はこの本貫を確認(rèn)する質(zhì)問(wèn)はある程度年齢を重ねた男性に効く?!副矩灓虾韦扦工?。ご先祖さまはどんな方だったのですか」と聞くと、何代前の祖先は両班(いわゆる王朝の官僚、役職者、支配層)で、何代前の祖先は宮中で高い地位の職を務(wù)めていて…という自慢話がとうとうと始まるので、「ほう!」「それは素晴らしい!」と合いの手を入れると、「あなたは日本人なのに、本貫なんてよくご存じですね。よくわが國(guó)のことを勉強(qiáng)されていますな??证烊毪盲俊工趣胜?、以降かわいがられることになる。

こうして韓國(guó)では自己紹介から懐に飛び込む術(shù)を心得ていたのだが、北朝鮮ではどうか。「出張先は北朝鮮」(呉英進(jìn)著?西山秀昭訳?作品社)という本に興味深いシーンがある。

作者の呉英進(jìn)氏は2000年に朝鮮半島エネルギー開(kāi)発機(jī)構(gòu)(KEDO)の韓國(guó)人技術(shù)者として訪朝。北が獨(dú)自開(kāi)発した黒鉛減速爐(核兵器の原料のプルトニウム生産が容易)の凍結(jié)、解體を條件に、軽水爐(核兵器原料のプルトニウムの生産が比較的困難で、國(guó)際的にチェックしやすいメリットがある)の建設(shè)に攜わった。作者の呉英進(jìn)氏は、北朝鮮側(cè)の現(xiàn)場(chǎng)監(jiān)督の呉氏に本貫を聞くが、要領(lǐng)を得ないやりとりに困惑する。欄外には朝鮮戦爭(zhēng)後すぐに本貫を廃止したと注意書(shū)きがある。にわかには信じがたく、知己のある在日コリアンの研究者に聞くと、「北朝鮮本國(guó)では本貫は舊時(shí)代の良くないものという扱いなのです」と言う。実際に私が北に行った際、北朝鮮の人に、韓國(guó)人に聞くように「あなたの本貫はどこですか?」と聞くと、「わからない」と答える人のほか、「本貫って何ですか?」と逆に日本人の私に聞く人まで現(xiàn)れた。北朝鮮における本貫廃止はどうやら本當(dāng)のようだった。

ところで、ここ最近の北朝鮮の報(bào)道や金正恩総書(shū)記の演説で、韓國(guó)のことを「大韓民國(guó)」と呼ぶようになった。これまでは現(xiàn)地で誤って韓國(guó)と言ってしまうと、「南朝鮮のことですよねっ!」と即、注意が入ったものだ。

想像以上の距離ができたと感じている。少なくとも尹錫悅政権と融和的な統(tǒng)一や満足な対話はできないと判斷したのだろう。韓國(guó)人や朝鮮人はよりこの距離感を感じているのではないだろうか。

また、統(tǒng)一の際や統(tǒng)一とはいかないまでもある程度融和的な関係が構(gòu)築された際に南北をつなぐ強(qiáng)い絆、セーフティーネットは家族や本貫によるつながりだと考えていたのだが、北側(cè)では廃止されて時(shí)間がたち、もはや意識(shí)されていないものだとしたらどうだろうか。

今、南北間に橫たわる分?jǐn)啶螠悉舷胂褚陨悉松瞍い韦猡筏欷胜ぁ?/p>

■筆者プロフィール:北岡 裕

1976年生まれ、現(xiàn)在東京在住。韓國(guó)留學(xué)後、2004、10、13、15、16年と訪朝。一般財(cái)団法人霞山會(huì)HPと広報(bào)誌「Think Asia」、週刊誌週刊金曜日、SPA!などにコラムを多數(shù)執(zhí)筆。朝鮮総連の機(jī)関紙「朝鮮新報(bào)」でコラム「Strangers in Pyongyang」を連載。異例の日本人の連載は在日朝鮮人社會(huì)でも笑いと話題を呼ぶ。一般社団法人「內(nèi)外情勢(shì)調(diào)査會(huì)」での講演や大學(xué)での特別講師、トークライブの経験も。過(guò)去5回の訪朝経験と北朝鮮音楽への関心を軸に、現(xiàn)地の人との會(huì)話や笑えるエピソードを中心に今までとは違う北朝鮮像を伝えることに日々奮闘している。著書(shū)に「新聞?テレビが伝えなかった北朝鮮」(角川書(shū)店?共著)。

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※本コラムは筆者の個(gè)人的見(jiàn)解であり、RecordChinaの立場(chǎng)を代表するものではありません。

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