2014年8月8日、「理化學(xué)研究所の笹井芳樹副センター長(zhǎng)が自殺を図り、現(xiàn)在、病院で治療を受けている」―今月5日午前、パソコンで仕事をしていた私は、インターネットで流れたニュースに目を奪われた。私は仕事の手を止めて、「自殺未遂」の続報(bào)が出てくることを念じた。だが20分余りして入ってきたニュースは「死亡を確認(rèn)」とのものだった。私は手元の原稿を書き続けることができなくなった。（文：陳立行（チェン?リーシン）日本在住研究者、日中社會(huì)學(xué)會(huì)會(huì)長(zhǎng)）

【その他の寫真】

私は笹井氏とは専門も違うし、個(gè)人的な付き合いもない。メディアでの報(bào)道以外の唯一のつながりは、私のよく知る日本人2人が笹井氏の高校時(shí)代の同級(jí)生だということくらいだ。6月に會(huì)った時(shí)も彼らは、STAP細(xì)胞論文をめぐる騒動(dòng)の渦中に置かれた笹井氏を心配していた。

先端科學(xué)成果の報(bào)道はほとんどの人にとってニュースの1本に過ぎず、関心は通常高くない。だがSTAP細(xì)胞の報(bào)道は當(dāng)初から多くの一般市民の関心の的となった。筆頭著者の小保方氏が「若く美しい女性博士」だったからである。メディアでは小保方氏の日常生活やファッション、バッグのブランドなどが細(xì)かく報(bào)じられ、高校時(shí)代の同級(jí)生にも取材の手が伸びた?？茖W(xué)成果の報(bào)道は完全に質(zhì)を変えてしまった。だがそれから2カ月も経たないうちに、STAP現(xiàn)象の再現(xiàn)性に疑いがあるとの報(bào)道がインターネットから流れ始めた。ネイチャーに掲載された論文に複數(shù)の不適切な畫像があったとの報(bào)道が出始めると、再生科學(xué)をまったく知らない人でもが論文の信ぴょう性を話題にするようになった。小保方氏の共同研究者もメディアの注目を集め始めた。

先端科學(xué)分野での競(jìng)爭(zhēng)の激化に伴い、各國(guó)では盜作や捏造などの重大事件が増加している。2005年には、韓國(guó)ソウル大學(xué)の黃禹錫（ファン?ウソク）教授がES細(xì)胞論文での捏造などでメディアの批判を受け、行政処分の対象ともなった。最近は黃教授の米國(guó)での特許申請(qǐng)も話題となった。STAP事件の調(diào)査では、笹井副センター長(zhǎng)は実験の操作やデータ?畫像の処理に直接參加してはいなかったことが明らかとなっており、責(zé)任があるとすればせいぜい指導(dǎo)?監(jiān)督の責(zé)任があるにすぎない。

だがSTAP事件の日本メディアの注目や報(bào)道はもはや、研究論文の不正や科學(xué)検証の過程を問題とするものではなくなっていた?？茖W(xué)の內(nèi)容では読者や視聴者の目を引くことはできないと分かっているからだ。注目を集めるためにまず、理化學(xué)研究所が槍玉に上がり、國(guó)家一流の研究所であったはずの同研究所が、巨額の研究費(fèi)を獲得するためには手段を選ばない研究組織として報(bào)道された。笹井副センター長(zhǎng)と小保方氏の人材採(cǎi)用や研究支援をめぐる関係も、事実無根のエピソードで意味ありげに描かれた。次に笹井氏の大學(xué)時(shí)代の戀愛話にまで報(bào)道は及び、笹井氏の高校時(shí)代の同級(jí)生が當(dāng)時(shí)の人柄や交友関係についてのインタビューを受けたりもした。小保方氏の採(cǎi)用過程や2人の觸れ合いなどにも焦點(diǎn)が當(dāng)てられ、「ノーベル賞受賞者の山中伸彌教授をライバル視した野心家で、學(xué)生時(shí)代の失戀によって美人博士を?qū)檺?放任することとなった」という笹井像が作り上げられ、大衆(zhòng)週刊紙のほとんどが事件の報(bào)道を繰り返した。

科學(xué)研究の過程における成功や失敗には偶然の要素は排除できない。STAP現(xiàn)象が悪意の捏造だったのか偶然の現(xiàn)象だったのかはまだ科學(xué)的に結(jié)論付けられていない。理性的に考えれば、科學(xué)的な成果は実験の繰り返しによって実証する必要があるが、それには時(shí)間と靜かな環(huán)境、平常心が必要となる。商品利益を追求する墮落した日本メディアの圧力の下、一般の庶民だけでなく、一流の科學(xué)機(jī)構(gòu)である理化學(xué)研究所までもが、持つべき理性を失ってしまったのかもしれない。

日本の多くの一流の學(xué)者は、研究分野で卓越した成果を持つだけでなく、日常の仕事の中でも魅力的な人柄を見せる人が多い。私は2011年から世界社會(huì)學(xué)會(huì)組織委員會(huì)の委員として、日本の著名な社會(huì)學(xué)者と仕事をする機(jī)會(huì)に恵まれてきた。そうした人と親しく付き合う中で分かったのは、優(yōu)秀な日本の學(xué)者は目標(biāo)達(dá)成のために共同で知恵を絞りさまざまな方法を検討し、努力をやめることがないということだ。例え成功しなくても、手段を選ばず何でもやることは決してしない。問題が起こったら勇気を持って責(zé)任を取る。日本では、利益を得るために成功を焦り、手段を選ばず、責(zé)任を負(fù)わないような人は、學(xué)術(shù)分野のトップに立つことはできないし、ある分野をリードするような人物にもなることはできない。

STAP細(xì)胞論文をめぐる騒動(dòng)は、その端緒から今回の悲劇に至るまで、メディアの墮落によって社會(huì)が理性を失い、科學(xué)成果を科學(xué)的な態(tài)度で評(píng)価する理性的な軌道を外れたことを示している。理性の中で羽根を伸ばすはずの科學(xué)者が、理性を失った社會(huì)を前に取った選択は、日本だけの悲劇ではなく、世界の科學(xué)界にとっての損失となった。（提供/人民網(wǎng)日本語版?翻訳/MA?編集/武藤）