中國(guó)では今年になり、チベット自治區(qū)ニンティ市ポメ県內(nèi)で樹(shù)高が36階建てのビルに相當(dāng)する101.2メートルのイトスギが確認(rèn)された。世界で樹(shù)高が最も高い北米のメタセコイアに次ぎ、アジアでは最も高い巨木だ。このような巨木からどのような秘密が読み解けるのか。中國(guó)メディアの中國(guó)新聞社は、この巨木を調(diào)査確認(rèn)したチームにも加わった福建農(nóng)林大學(xué)の王孜準(zhǔn)教授に事情を?qū)い亭?。以下は、王孜?zhǔn)教授の言葉に若干の説明內(nèi)容を追加するなどで再構(gòu)成したものだ。

過(guò)去の環(huán)境を知り將來(lái)の予想に役立つ巨木

人類(lèi)が巨木の発見(jiàn)と研究を始めたきっかけの一つは、米國(guó)が1890年にセコイア國(guó)立公園を設(shè)立したことだった。100年以上が経過(guò)した今、巨木研究は非常に整った體系を持つようになった。

巨木は森の健康のバロメーターだ。巨木の存在は、森が完全な狀態(tài)であり、人手が入っていないことを示す。だから、巨木の保護(hù)の研究は、森全體を守る研究でもある。

また、數(shù)十メートルの巨木には數(shù)十種類(lèi)の植物が著生していて、獨(dú)特の生態(tài)群落を形成していることが多い。巨木に付隨する各植物には高さによる気溫や水分の変化により、ちょうど山岳植物のような垂直変化が生じる。巨木の環(huán)境多様性や、植生の垂直変化を知ることで、多くの謎を解くことができる。

巨木には環(huán)境や気候変動(dòng)の「目盛り」も殘されている。一般的に、樹(shù)高が70メートルを超える樹(shù)木が巨木と認(rèn)められるが、ほとんどの巨木は樹(shù)齢が數(shù)百年で、中には1000年以上に達(dá)するものもある。巨木は長(zhǎng)い生涯の間に、気候の寒暖の変化や降水量の増減などを経験してきた。巨木にはそれらの痕跡が殘されている。その痕跡を調(diào)べることで、巨木が生きてきた歴史的環(huán)境を逆算し、そこから未來(lái)の気候変化の傾向を推測(cè)することができる。

中國(guó)の巨木研究は出遅れたが現(xiàn)在では急速に発展

中國(guó)の巨木調(diào)査は出遅れた。最も早く認(rèn)定された「中國(guó)で最も高い木」は日本統(tǒng)治時(shí)代の臺(tái)灣で確認(rèn)された樹(shù)高80メートルのタイワンスギだった。しかし、このスギは伐採(cǎi)されてしまったので、記録として信頼性に欠ける。中華人民共和國(guó)成立後には雲(yún)南省南部などに生える望天樹(shù)と呼ばれる樹(shù)木が巨木の代名詞になった。望天樹(shù)はフタバガキ科に屬する木で、英語(yǔ)では「スカイツリー」と呼ばれることもある。しかし長(zhǎng)年にわたり望天樹(shù)の調(diào)査研究は行われなかった。

中國(guó)人研究者が初めて巨木の本格的な調(diào)査研究を?qū)g施したのは、1973年の第1回青海チベット高原総合科學(xué)調(diào)査研究だった。高さ70メートル以上の多くの巨木が記録され、一部の木では果実や種子の標(biāo)本が作られた。中國(guó)人研究者はすでに、チベット南東から雲(yún)南北西地區(qū)に異常に巨大な樹(shù)木が存在することに注目していたが、道具と技術(shù)に限界があり、正確な高さを測(cè)定することは困難だった。またこの研究以降、中國(guó)の巨木研究はしばらく途絶えることになった。

臺(tái)灣では2017年ごろから巨木の調(diào)査が活発化した。科學(xué)者とボランティアが共同でレーザーレーダーと木登り技術(shù)を利用して中央山脈の巨木を調(diào)査したところ、84.1メートルのタイワンスギが発見(jiàn)された。大陸部でも同年には巨木の科學(xué)調(diào)査が始まり、約3年間で72メートルのタイワンスギ、76.8メートルのブータンマツ、83.4メートルのトウヒの仲間が発見(jiàn)された。そして今年になり、100メートルを超える高さの樹(shù)木が確認(rèn)された。樹(shù)高がより高い巨木の発見(jiàn)が続いていることは、中國(guó)の巨木研究が急成長(zhǎng)期に入ったことを示している。

今年になり樹(shù)高101.2メートルの巨木が発見(jiàn)された森では、100メートルを超える巨木が2本以上あり、90メートルの巨木は25本が確認(rèn)された。また木に登って調(diào)査したところ、木の表面で高等植物約46種が発見(jiàn)された。著生植物のうちラン科植物は8種類(lèi)で、新種2種が発見(jiàn)された。その他にも特色のある著生植物は多く、今後の分析が待たれる。

101.2メートルの巨木の樹(shù)齢は約1450年と推定された。もう1本の100を超す巨木は約1400年だ?，F(xiàn)場(chǎng)の狀況からして、この森にはさらに高い樹(shù)木が存在する可能性がある。

巨木については多くの謎が今も未解決

巨木の科學(xué)的調(diào)査のためには木に登る必要もある。もちろん木を傷めないように細(xì)心の注意が必要だし、いくつかの方法も確立されている。例えばロープの使い方などだ。また樹(shù)上には何も殘さない。

木の梢（こずえ）、つまり上端部にまで上ることはできない。一般的には3メートルから5メートル手前までしか登らない。しかし樹(shù)木の最上部の樹(shù)冠層と呼ばれる部分は、樹(shù)木の科學(xué)的研究の焦點(diǎn)の一つだ。直接には登れないとすれば撮影するしかない。また巨木の全容も記録したい。かつて、この撮影が実に難題だった。

その方法とは、映畫(huà)の撮影で使われていた撮影機(jī)のレールシステムを設(shè)営し、大型カメラを移動(dòng)させて撮影するものだった。米ナショナルジオグラフィック誌が資金提供したセコイアなど北米の何本かの巨木の撮影は、この方法で実施された。半月から1カ月程度の期間がかかり、100萬(wàn)ドル（2023年11月の為替レートで約1億5000萬(wàn)円）もの費(fèi)用が必要だった。

しかしドローンの技術(shù)が進(jìn)歩したことで、巨木の全體像の撮影は劇的に変化した。かつては數(shù)十人のチームを必要としたが、現(xiàn)在では優(yōu)秀な操縦者が1人、ドローン1機(jī)、バッテリー數(shù)個(gè)があれば、半日で終わらせることができる。

ただしそれでも、容易でない部分は殘る。森林に生える巨木を撮影するので、ドローンが周?chē)欷螛?shù)木に接觸しないで上昇できる「天に抜ける穴」を探さねばならない。操縦者には高い技量が求められる。ドローンを墜落させてしまうことは、よくある事故だ。また、光線(xiàn)の具合や濕度も撮影に影響する。もやがかっていれば、撮影には不向きだ。ポメ県內(nèi)での巨木の撮影では、めったにない晴天に恵まれた。

樹(shù)木がどこまで高くなれるかには、幹の強(qiáng)度と樹(shù)木の生體機(jī)能によりどれぐらいの高さまで水を?qū)盲堡椁欷毪韦?つの條件が関係する。だから、巨木には「限界」がある。巨木がどのように高さ100メートルまで成長(zhǎng)するのか、巨木の最上部が水不足の狀態(tài)にどのように適応するのか、著生動(dòng)植物がどのような生活習(xí)性を持つのかなど、巨木については多くの謎が、今も解明されていない。

これらの巨木を自然と調(diào)和する狀況で生かし、その生息地を守るためには、生物多様性の研究を強(qiáng)化することが重要だ。そこで気になることがある。數(shù)年前からチベット南東地區(qū)を中心とする巨木が生育している地域で、年間降水量が明らかに低下傾向にあることだ。各國(guó)は人類(lèi)運(yùn)命共同體の理念を堅(jiān)持し、肩を並べて地球という「わが家」を守り、古い巨木の生長(zhǎng)により適した生態(tài)環(huán)境を維持せねばならない。（構(gòu)成 / 如月隼人）