中國の新エネ車販売臺(tái)數(shù)が過去最高に、値下げ合戦にトヨタやベンツを巻き込みデフレ経済を推進(jìn)か

高野悠介    2024年6月26日(水) 8時(shí)30分

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中國で新エネ車の値下げ合戦が起こっている。

中國の5月の一定規(guī)模(年間売上高2000萬元)以上の工業(yè)企業(yè)による付加価値額は前年同月比5.6%増だった。新エネルギー車(EV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車)や3Dプリンターが好調(diào)だったという。新エネルギー車は販売も好調(diào)だが、それは中國経済にとって本當(dāng)に良いことなのだろうか。実情を見ていこう。

5月の新エネ車販売臺(tái)數(shù)は過去最高

中國乗用車市場信息聯(lián)席會(huì)によると、中國の2024年5月の乗用車市場は芳しくなく、販売臺(tái)數(shù)は前年同月比3%減の168萬5000臺(tái)だった。しかし新エネルギー車に限れば、過去最高の79萬臺(tái)で、同17%増だった。5萬臺(tái)以上販売したのは4社で、BYDが33萬488臺(tái)、テスラが7萬2573臺(tái)、吉利汽車が5萬8673臺(tái)、長安汽車が5萬5800臺(tái)だった。

テスラを除けば、外資系はフォルクスワーゲン合弁の上汽大衆(zhòng)が1萬2393臺(tái)、一汽大衆(zhòng)が6564臺(tái)、ゼネラルモーターズ(GM)合弁の上汽通用が5296臺(tái)、トヨタ合弁の一汽豊田が5242臺(tái)と微々たるものだ。

確かに販売臺(tái)數(shù)は過去最高を記録したが、在庫はさばけていない。ちょうど1年前の6月の記事に「23年第1四半期(1~3月)の新エネルギー車の販売臺(tái)數(shù)は148萬臺(tái)だが、自動(dòng)車保険契約を締結(jié)し、実際に世に出た車は122萬3000臺(tái)で、殘りの25萬7000臺(tái)は在庫となった。そして23年6月には106萬臺(tái)に積み上がった。これらは各社の公開情報(bào)であり、実際の臺(tái)數(shù)はそれ以上であることが多い」とある。そしてこれ以來、在庫に関する新しいデータは出ていない。24年6月の直近の記事でも、この106萬臺(tái)を最新の統(tǒng)計(jì)として利用している。同記事は、政府補(bǔ)助金が段階的に打ち切られるにつれ、ユーザーにとって新エネルギー車の魅力は減少したが、それより過剰生産の問題の方が大きいと指摘する。政府支援と需要増加期待によるセールス見通しが楽観的すぎた。伸び率は期待に屆かず、大量の在庫車が倉庫に滯留した。解消には値下げしか方法はない。

テスラが値下げ競爭を開始

価格戦はテスラに始まった。23年1月1日に期間限定で「Model 3」「Model Y」の購入者に対し、6000元(約12萬円)の値引きに加え、4000元(約8萬円)の自動(dòng)車保険補(bǔ)助を付けた。さらにその1週間後に3萬6000~4萬8000元(約72萬~96萬円)と定価の13.5%もの値引きを行った。同年11月からは次の大幅値下げに備え、小幅な値上げを繰り返す。そして24年1月1日に保険補(bǔ)助6000元に加え、低利融資などの金融支援で最高2萬3000元(約46萬円)の優(yōu)遇措置を?qū)g施。その2週後に1萬1500~1萬5500元(約23萬~31萬円)の値引きを発表し、前年のパターンを踏襲した。

さらに、4月21日に全車種を1萬4000元(約28萬円)値下げした。これは消費(fèi)者に刺さり、5月の販売臺(tái)數(shù)は前年同月比30%増の5萬5000臺(tái)となった。1~5月の累計(jì)でも0.5%減とほぼ前年並みに戻した。

BYDは値下げ余力に富む

BYDは春節(jié)(舊正月)後に「電気は石油より安い」というスローガンを掲げ、価格競爭に挑んだ。まず新型プラグインハイブリッド車「秦PLUS栄耀版」「駆逐艦05栄耀版」を発売したが、前モデルより平均2萬元(約40萬円)安かった。これで秦PLUSハイブリッドモデルが7萬9800元(約160萬円)から、EVモデルが10萬9800元(約220萬円)からと、手の屆く価格になった。テスラにはない大衆(zhòng)向けモデルの大幅値下げだ。長安、哪吒、五菱など他の國內(nèi)ブランドもすぐ追隨した。

メディアはBYDの値下げ理由として、原材料コストの削減、販売規(guī)模拡大効果、舊モデル生産ラインのコスト回収とその後の柔軟な調(diào)整、競爭激化に伴う戦略的調(diào)整、事業(yè)戦略と生産能力計(jì)畫などを挙げた。つまり値下げ余力があったという主張だ。

BYDの5月の販売臺(tái)數(shù)は前年同月比38.1%増の33萬1800臺(tái)で、1~5月の累計(jì)では前年同期比26.8%増の127萬1300臺(tái)だった。他に、ファーウェイ(華為技術(shù))系の鴻蒙智行のほか、シャオミ(小米)、蔚雷、小鵬、理想などの新勢力も好調(diào)だった。新エネルギー車市場の回復(fù)は明らかだと報(bào)じられたが、過剰生産と在庫については觸れていない。

値下げの波はトヨタやベンツにも波及

新エネルギー車の値下げ合戦はマーケティング戦略変更などのきれいごとではなく、在庫圧力から始まった。補(bǔ)助金の打ち切りとその波及効果だ。それが外國ブランドにも影響を及ぼし、トヨタやベンツが大幅値下げに踏み切ったことがメディアをにぎわせている。

ベンツは數(shù)年前にエントリーモデルを発売した。7人乗りコンパクトSUVのGLBシリーズだ。當(dāng)初は31萬1900~36萬7900元(約624萬~736萬円)だったが、現(xiàn)在は販売店によっては17萬9000元(約360萬円)まで下がっているという。もともとベンツにしては中途半端なポジションの車で、価格競爭に飲みこまれやすかった。

トヨタは看板車種のカムリを値下げした。これまで17萬1800~20萬6800元(約344萬~414萬円)だったのを、新型ではガソリン仕様を13萬9800元(約280萬円)から、ハイブリッドを14萬9800元(約300萬円)からに変更した。チップ構(gòu)成をグレードアップし、運(yùn)転サポート機(jī)能も強(qiáng)化されていた。この値下げは大きな波紋を呼んだ?!袱猡Ε岍`カーによる獨(dú)占的な価格設(shè)定は通用しない」「傲慢なトヨタの鼻はへし折られた」などと報(bào)じられた。

新エネ車がデフレ経済のけん引車に

中國の工業(yè)生産をリードしてきた新エネルギー車だが、実際は過剰生産に伴う在庫過多から値下げを余儀なくされている。今年に入り、內(nèi)燃エンジン車にも波及し、自動(dòng)車業(yè)界全體がデフレスパイラルに入った。歐米には追加関稅を課せられ、輸出もままならない。公稱106萬臺(tái)のままの在庫も気になる。このままでは産業(yè)としての付加価値を棄損するばかりだ。工業(yè)生産ではなく、デフレ経済のけん引車になってしまった。減産は避けられそうにない。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大學(xué)教育學(xué)部卒。ユニー株(現(xiàn)パンパシフィック)青島事務(wù)所長、上海事務(wù)所長を歴任、中國貿(mào)易の経験は四半世紀(jì)以上。現(xiàn)在は中國人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中國最新のB2Cビジネスと中國人家族について、ディ-プな情報(bào)を提供。著書:2001年「繊維王國上?!箹|京図書出版會(huì)、2004年「新?繊維王國青島」東京図書出版會(huì)、2007年「中國の人々の中で」新風(fēng)舎、2014年「中國の一族の中で」Amazon Kindle。

※本コラムは筆者の個(gè)人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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