中國では2022年12月に、人の移動(dòng)などを厳しく制限していた新型コロナウイルス感染癥対策が大幅に緩和された。そのことで、外食企業(yè)などを含む飲食産業(yè)は大いに盛況となり、2023年の売上高は過去最高の5兆2000億元（約115兆円）に達(dá)した。一方で、ある産業(yè)分野が極端な盛況を示せば、その後には成長(zhǎng)が鈍化することも珍しくない。中國の飲食業(yè)はその後、どのような狀況になったのか。本稿は、上海に拠點(diǎn)を置いて市場(chǎng)分析や総合コンサルティングを営む上海嘉世営銷諮詢有限公司（MCR）による「飲食業(yè)界市場(chǎng)分析リポート2024」の主要部分をまとめたものだ。

【その他の寫真】

1．外食企業(yè)の回復(fù)の度合いは分極化

2023年には生産と生活が回復(fù)し、消費(fèi)促進(jìn)政策が奏功したこともあり、中國各地で飲食産業(yè)が活況を呈した。特に年初には景気の回復(fù)期待があり、2－3月の飲食企業(yè)の登記數(shù)は前年同期を上回った。しかし、その後は徐々に2022年の前年同月に近い水準(zhǔn)まで下落した。一方で、登記抹消になった企業(yè)が5月以降に急増した。消費(fèi)の回復(fù)が弱い狀況にあって、新規(guī)店舗の存続力が劣っていることが反映されたとも言える。

飲食企業(yè)の1店舗當(dāng)たりの売上高は2019年の水準(zhǔn)まで回復(fù)しなかったが、上場(chǎng)企業(yè)はいずれも店舗數(shù)を積極的に増やしたために、多くの企業(yè)では売上高全體が2019年より大幅増になった。例としては百勝中國、海底撈、絶味、奈雪、九毛九集団などがある。

一部企業(yè)は2023年に回復(fù)力が乏しかった。例としては呷哺呷哺集団、周黒鴨、海倫司がある。利益の回復(fù)の分極化も目立つ。百勝中國、海底撈、九毛九集団の純利益は2019年同期を上回った。海倫司と奈雪的茶は黒字転換を果たした。その他の企業(yè)の純利益は新型コロナウイルス感染癥の出現(xiàn)以前の狀況に回復(fù)していない。

2．飲食企業(yè)は引き続き店舗數(shù)増加

2023年にはほとんどの外食上場(chǎng)企業(yè)は店舗數(shù)を増やし続けた。例えば絶味、ケンタッキー、周黒鴨、ピザハット、奈雪的茶、太二、湊湊などだ。これらのブランドは感染癥以前に比べて増加幅が大きく、店舗數(shù)が2倍ないし3倍になった企業(yè)もある。

一部の企業(yè)は2021年まで急ピッチで出店したが、2022年と2023年には調(diào)整した。海底撈や呷哺呷哺、海倫司などだ。店舗の調(diào)整はこれらの企業(yè)に大きな閉店に伴う損失をもたらした。

2023年の消費(fèi)環(huán)境は、その後の出店計(jì)畫にも分極化をもたらした。一部企業(yè)は従來の出店ペースを維持した。絶味やケンタッキー、ピザハットなどだ。一部企業(yè)は比較的慎重な姿勢(shì)を堅(jiān)持しており、海底撈や海倫司、習(xí)黒鴨などのように出店計(jì)畫を下方修正した企業(yè)もある。

3．高級(jí)飲食店業(yè)界に重圧

高級(jí)飲食業(yè)界は人件費(fèi)の高さ、家賃の高さ、利益の低さなどの苦境に直面しており、イノベーションによるモデルチェンジとアップグレードの実現(xiàn)が急務(wù)だ。経済情勢(shì)が全體として良好とは言えず、飲食業(yè)界の価格競(jìng)爭(zhēng)はますます激しくなっている。飲食消費(fèi)では上下への二極化が発生し、価格帯の主流は、顧客が低料金で食の必要を満たせる「必需性」の領(lǐng)域に向かい始めた。消費(fèi)者は出費(fèi)にますます慎重になっており、高品質(zhì)かつ費(fèi)用対効果のよい飲食店が第一の選択になった。

中國の飲食業(yè)上場(chǎng)企業(yè)の2024年1月の累計(jì)売上高は前年同月と比べて橫ばいの154億元（約3400億円）だった。前月比では15．9％増だった。

2023年には春節(jié)（舊正月）の直前の會(huì)食で小さなピークが発生したことで、1月には多くの上場(chǎng)外食ブランドの店舗の売上高が前月比ではやや好調(diào)だったものの、前年同月と比べれば橫ばいだった（2023年の春節(jié)は1月22日、2024年は2月10日）。2024年第1四半期（1－3月）の展望では、2023年1－2月には外出規(guī)制が緩和されたことで「反動(dòng)としての好調(diào)」が発生したことや、2023年下半期に多くのブランドで価格をある程度下方修正したことを考えれば、多くのブランドの飲食店が前年同期比で伸び悩む可能性がある。

4．チェーン化率には依然として大きな上昇の余地

中國の飲食店のチェーン化は2018年以來、加速し続けてきた。「2023中國飲食加盟業(yè)界白書」によれば、中國の2022年の飲食店チェーン化率は19％にまで上昇した。しかし米國でのチェーン化率が54％であることと比較すれば、中國の飲食店チェーン化率には依然として大きな上昇の余地がある。

中國には一線都市と二線都市以外にも、人口規(guī)模が大きく巨大な伸びしろのある三線以下の都市が多くある。一、二線都市の飲食消費(fèi)市場(chǎng)がここ數(shù)年でほぼ飽和狀態(tài)になったことから、飲食業(yè)界では三線以下の都市での発展がより注目されるようになった。一、二線都市で先行したチェーン化率の上昇はここ數(shù)年來、三、四線都市へと段階的に波及する傾向を示している。

注：

一線都市や二線都市とは、中國でよく用いられる都市の分類。ただし、分類が確定されているわけではなく、記述によって違いがある。一線都市は北京や上海など中國全國に強(qiáng)い影響を及ぼす都市、二線都市は一線都市に準(zhǔn)じる広域に強(qiáng)い影響を及ぼす都市。三線都市以下は、地方都市と考えればよい。

5．食の安全への疑念に対応する必要が

2023年にはさまざまな食品偽裝のニュースが報(bào)じられ、食の質(zhì)に対する中國國民の疑念は間違いなく高まった?！甘长伟踩录工韦饯欷兢欷问吕尉唧w的狀況は異なるが、売り手が利益追求のために消費(fèi)者の利益や食の安全を顧みなかったという構(gòu)図は同じだ。

アンケート調(diào)査によれば、職を持つ人の中で食の安全の問題を心配する人は、一線都市では56％、二線都市では53％、三線都市以下では39％で、大都市であるほど食の安全に懸念を持つ人が多い。年代別では1980年代生まれが54％、1990年代生まれは54％で、2000年以降に生まれた人は45％だった。

6．飲食業(yè)は今後5－10年における希少な成長(zhǎng)分野

飲食業(yè)は依然として、今後5－10年における希少な成長(zhǎng)分野だ。ただし現(xiàn)在は、全體としての伸びがやや鈍化していると同時(shí)に、新業(yè)態(tài)や新ジャンルの出現(xiàn)が相次いでいる。飲食業(yè)企業(yè)は、ジャンルの選択や販売経路の掌握などの能力がより厳しく試されている。

販売経路からいえば、大手ブランドは経営が堅(jiān)実で、はっきりとした成長(zhǎng)を維持している。一方で、サムズ?クラブ、ハンバーガーチェーンの塔斯汀、カフェチェーンのラッキンコーヒーなどのトップブランドが次々に登場(chǎng)している。急成長(zhǎng)するブランドが続出していることは、飲食企業(yè)には構(gòu)造的なチャンスがあることを示している。

7．飲食業(yè)界のサービスの質(zhì)向上ではAI技術(shù)が有効

中國では極めて多くの産業(yè)分野で、人工知能（AI）技術(shù)およびデジタル技術(shù)全般の活用が、生き殘りと成長(zhǎng)のために有効とされている。消費(fèi)者を顧客とするto Cの分野では、畫一な商品を大衆(zhòng)向けに販売するのではなく、新技術(shù)を投入して個(gè)別の顧客の要望に細(xì)かく対応する「少衆(zhòng)」向けの展開が極めて有望なビジネスモデルとされている。そこで、飲食産業(yè)の場(chǎng)合に、AI技術(shù)により何が実現(xiàn)できるかを考えてみた。

1）メニュー提案

AIGC（人工知能による生成コンテンツ）技術(shù)により、顧客の好みや食事制限、偏食を分析して個(gè)別化されたメニュー提案を行うことができる。このことを、顧客満足度の向上と売上高の増加につなげ、さらにはブランドロイヤルティーを向上させることができる。

2）予約と配送サービス

AIGCによってオンライン予約やデリバリー注文に対応し、顧客からの質(zhì)問に答え、正確な配送時(shí)間を示すことができる。顧客はAIGCを利用したチャットを通じて、利便性の高い予約を享受することができる。

3）カスタマーサポート

AIGCはオンラインのカスタマーサービス擔(dān)當(dāng)者として、よくある質(zhì)問への回答、サポート、顧客の問題解決を行うことができるので、顧客満足度の向上と潛在的な問題の抽出と解決に役立てることができる。

4）プロモーションとマーケティング

飲食企業(yè)はAIGCを利用して顧客とのやり取りや対話を行い、キャンペーンやクーポン、新商品の提案などの情報(bào)を提供することができる。このような個(gè)別化されたマーケティング戦略により、さらに多くの顧客を呼び寄せることができる。

5）従業(yè)員の育成

AIGCは、メニュー、食材、栄養(yǎng)情報(bào)、飲食物の知識(shí)などに関する従業(yè)員の教育に使うことができる。従業(yè)員はAIGCと対話することで知識(shí)を増やすことができる。

8．飲食業(yè)界が直面する四つの試練

今後について、より大きな期待を持てる飲食産業(yè)ではあるが、楽観視できない問題にも多く直面している。そこで、飲食業(yè)界が抱える問題を整理してみた。

1）新たな外食ブランドの出現(xiàn)による競(jìng)爭(zhēng)激化

飲食業(yè)界は參入障壁が相対的に低く、市場(chǎng)の拡大により新たなブランドが次々に登場(chǎng)して業(yè)界の競(jìng)爭(zhēng)激化に拍車をかけている。同じ業(yè)界內(nèi)の競(jìng)爭(zhēng)者は多く、市場(chǎng)シェアは分散している。技術(shù)の革新も絶え間がない。伝統(tǒng)的な飲食企業(yè)にとって國際的な飲食ブランドの參入は市場(chǎng)競(jìng)爭(zhēng)を激化させることもあり脅威だ。

2）各種コストの増大

食材や調(diào)味料など原材料価格が上昇。経済発展に伴い従業(yè)員の報(bào)酬要求が高まり、人件費(fèi)も上昇している。光熱費(fèi)や設(shè)備関連費(fèi)用なども増大している。大都市の一等地では、物件の賃貸料と人件費(fèi)の上昇が飲食企業(yè)の運(yùn)営コストを増加させ、労働市場(chǎng)の変化も招いている。

3）健康的な食生活の志向と食の安全の問題

消費(fèi)者はますます食事の健康と栄養(yǎng)バランスを重視して、食品添加物や防腐剤などに対する懸念を強(qiáng)めている。飲食企業(yè)にはより自然で安全な食品を提供することが求められている。慢性病の増加は、低油、低塩、低糖質(zhì)料理への需要を後押ししている。食品安全事故が頻発したことが消費(fèi)者の食の安全に対する信頼の低下を招いている。行政による食の安全に対する監(jiān)督管理が強(qiáng)化されていることもあり、飲食企業(yè)は自主規(guī)制とリスク管理を強(qiáng)化せねばならない。

4）技術(shù)革新によるマーケティングの複雑化

大量情報(bào)のインターネット時(shí)代において、いかに効果的にブランドマーケティングを行い、ブランドの知名度と評(píng)判を高めるかは、飲食企業(yè)が直面することになる重要な問題だ。ソーシャルメディアとネット有名人による経済効果の上昇は、飲食企業(yè)にマーケティングとブランド構(gòu)築の新たな手法を提供しているが、同時(shí)にマーケティングのコストと複雑さも増加している。

9．飲食企業(yè)が特に注目する五つのトレンド

市場(chǎng)経済の本質(zhì)の一つは、それぞれの事業(yè)者に自己責(zé)任が付きまとうことであり、各事業(yè)は自らの判斷と決斷によってより良い明日を築こうと努力する。しかし業(yè)界全體を見れば、今後についてどのような流れが発生しているかが分かる。そこで、飲食企業(yè)が特に注目する五つのトレンドを挙げてみよう。

1）絶え間ないイノベーションでブランドの「記憶ポイント」を創(chuàng)出

飲食企業(yè)はここ數(shù)年來、革新を通じて消費(fèi)者にとってのブランドに対する「記憶のポイント」をもたらすことを試みている。例えば、目新しくて面白くて注目を集める料理や差別化されたサービス、非常に特色のある店舗のデザインや、他社とは大きく異なるブランド名やブランドロゴだ。

2）飲食に新たな體験を追加

もはや「満腹感」と「味」だけでは、新たな世代の顧客の求めの全てを満たすことはできない。そのため飲食に新たな體験を追加する手法が試みられている。文化と旅行、社交、蕓能、ゲームなどのような追加體験で、好き嫌いの多い消費(fèi)者をよりよく満足させることができる。

3）飲食業(yè)界に「スーパーマーケット風(fēng)」が吹く

倉庫式焼肉、コンビニ式火鍋、菓子卸売市場(chǎng)、セルフ式ビストロなどが出現(xiàn)している。名前がスーパーマーケットに似ているだけでなく、體験感もよく似ている。開放された食品棚、倉庫式陳列、小売商品のような包裝などの斬新な消費(fèi)體験が多くの若者を引き付けている。

4）飲食のチャンネルが「ダブル」から「マルチ」へ

一部の飲食ブランドは過去1年の間に、それまでに成立していた「店舗での飲食＋デリバリー」の方式に、さらに動(dòng)畫配信を追加することで「店舗での飲食＋デリバリー＋ティックトック」という提供品のマルチチャンネル化を成立させた。

5）科學(xué)技術(shù)による労力の削減

多くの飲食企業(yè)はすでに技術(shù)手段を?qū)毪工毪长趣堑昱nの運(yùn)営を強(qiáng)化し、運(yùn)営効率を高め始めている。一部の飲食企業(yè)はすでにロボットを店舗に導(dǎo)入して、バックヤードや接客の人による仕事の一部を代替している。（翻訳?編集/如月隼人）