米大統(tǒng)領(lǐng)選が終盤(pán)に差しかかる中、民主黨大統(tǒng)領(lǐng)候補(bǔ)となったハリス副大統(tǒng)領(lǐng)が上げ潮ムードに乗っている。最後までこの勢(shì)いが続くかどうかは黒人の支持や移民問(wèn)題が焦點(diǎn)になりそうだ。

人口中絶問(wèn)題では支持伸ばす可能性

「ハリス旋風(fēng)」とも呼ぶべき現(xiàn)象が一段と目立つようになったのは、ハリス氏が共和黨大統(tǒng)領(lǐng)候補(bǔ)のトランプ前大統(tǒng)領(lǐng)との討論會(huì)で「勝利」したと米主要メディアが報(bào)じてからだ。主要世論調(diào)査機(jī)関の調(diào)査ではハリス氏が支持率でトランプ氏を若干リードするケースが増えている。24日にCNNなどが伝えた世論調(diào)査によれば、ハリス氏の支持率は48％でトランプ氏の47％を上回った。ロイター通信と有力調(diào)査會(huì)社IPSOSが23日に公表した調(diào)査結(jié)果ではハリス氏の支持率は50％でトランプ氏の44％を引き離している。今年の大統(tǒng)領(lǐng)選の七つの激戦州を見(jiàn)ると、トランプ氏がアリゾナ州とジョージア州で僅差でリードしているが、他の5州では互角かハリス氏有利という展開(kāi)になっている。

CNNのコメンテーターの一人は「ハリス氏は今後、人口妊娠中絶問(wèn)題をテコにさらに支持を伸ばすだろう」と語(yǔ)っている。人口中絶は今年の大統(tǒng)領(lǐng)選の重要爭(zhēng)點(diǎn)の一つ。ハリス氏はトランプ前政権時(shí)代に米最高裁が人口中絶の権利を認(rèn)めないとしたことを厳しく批判し、中絶権?fù)碜o(hù)の必要性を積極的に訴えてきた。ハリス氏が女性としてこの権利を主張するのは斷然、迫力があり、確かに女性からの支持が一層伸びる可能性は十分ある。

黒人の支持拡大には疑問(wèn)視も

周知の通り、ハリス氏は父親がジャマイカ出身のアフリカ系、母親がインド系で有色人種とあって、とりわけ黒人有権者の間で人気が高いとされている。事実、米主要世論調(diào)査では、ハリス氏は黒人の有権者の支持率でトランプ氏を圧倒的にリードしている。だが、黒人の支持が今後も続くかどうか疑問(wèn)視する見(jiàn)方が出ている。

米有力シンクタンク「ブルッキングス研究所」の研究員は「ハリス氏が大統(tǒng)領(lǐng)候補(bǔ)になった當(dāng)初は黒人有権者の間で副大統(tǒng)領(lǐng)ということ以外、あまり知られていなかったが、徐々にメディアがその人物像を報(bào)じるようになり、一部黒人から反発や批判が出始めている」と指摘する。ハリス氏はかつてサンフランシスコ市の検事を務(wù)め、その後カリフォルニア州の司法長(zhǎng)官になったが、検事時(shí)代に犯罪容疑者に厳しい対応を取り、軽微の罪を犯した黒人容疑者にも容赦しなかった過(guò)去が明らかにされている。

例えば、黒人に対する暴力や差別の撤廃を訴える運(yùn)動(dòng)「ブラック?ライブズ?マター」の指導(dǎo)者の一人はハリス氏の検事時(shí)代の行為を批判し、今後支持するかどうかは同氏の言動(dòng)次第とCNNのインタビューに答えている。さらにハリス氏の夫が裕福な白人であり、夫妻の総資産が700萬(wàn)ドル（約10億1000萬(wàn)円）を軽く上回っていると報(bào)じられたことから「低所得層の多い黒人の仲間ではない」と反発する聲が黒人の間で聞かれる。

移民問(wèn)題でトランプ陣営の攻撃激化も

もう一つ、「ハリス旋風(fēng)」を押しとどめる要因になるとみられるのは同氏の移民問(wèn)題への取り組みだ。バイデン政権下でハリス副大統(tǒng)領(lǐng)が移民政策を擔(dān)當(dāng)したのは誰(shuí)もが知るところ。トランプ陣営はハリス氏の移民対策が完全に失敗だとし、激しく攻撃している。バイデン政権下でメキシコ國(guó)境に押し寄せる不法移民が急増したのは事実。ハリス氏は最近、CNNテレビとのインタビューで不法移民を厳しく取り締まると述べ、従來(lái)の寛容方針を修正したとも受け取れる発言をしている。

だが、トランプ氏はハリス氏が「変節(jié)し、責(zé)任逃れを図っている」と非難。今後、移民問(wèn)題を中心に巻き返し攻勢(shì)に出るとも伝えられる。ハリス氏が自身の副大統(tǒng)領(lǐng)候補(bǔ)に選んだミネソタ州のワルツ知事もトランプ陣営の攻撃の的になるのは間違いない。ワルツ氏は不法移民者に寛大な措置を取ったことで知られている人物だからだ。米國(guó)の有権者の半分以上が移民の減少を望んでいるとの世論調(diào)査結(jié)果もあるだけに、移民問(wèn)題がよりクローズアップされるようになった時(shí)、ハリス氏がどのように対応するかが注目される。

また、ハリス氏がバイデン大統(tǒng)領(lǐng)のイスラエル支援策を基本的に支持していることから、パレスチナに同情的な若者の支持が減少するとの指摘もある。「ハリス旋風(fēng)」が本當(dāng)に11月5日の大統(tǒng)領(lǐng)選投票日まで続くか、まだ不透明要素が多いようだ。

■筆者プロフィール：山崎真二

山形大客員教授（元教授）、時(shí)事総合研究所客員研究員、元時(shí)事通信社外信部長(zhǎng)、リマ（ペルー）特派員、ニューデリー支局長(zhǎng)、ニューヨーク支局長(zhǎng)。