11月5日に予定される米國の大統(tǒng)領(lǐng)選挙まで1カ月を切った。民主黨カマラ?ハリス副大統(tǒng)領(lǐng)、共和黨ドナルド?トランプ前大統(tǒng)領(lǐng)の有力候補(bǔ)2人の支持率は拮抗（きっこう）しており、選挙當(dāng)日まで予斷を許さない緊迫した展開が続きそうだ?！弗ⅴ弗ⅳ畏櫋工我朁c(diǎn)からは、英國に続いて、アングロサクソンの大國にインド系のトップが誕生するかに関心が集まる。そして懸念されるのが、2021年1月にトランプ支持派によって引き起こされた國會(huì)議事堂襲撃事件のような、民主主義を否定するトラブルの再発だ。

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ハリス氏當(dāng)選なら初ものずくめ

8月から9月にかけてロサンゼルスなどを訪れたエコノミストによると、大統(tǒng)領(lǐng)選は大変な盛り上がりの中で展開されているらしい。9月10日の両候補(bǔ)によるテレビ討論の際は、空港はじめ市內(nèi)各所でパブリックビューイングが実施され、多くの有権者が熱心に見入っていたという。日本でも、9月に自民黨総裁選、立憲民主黨代表選が行われたが、參加できるのは國會(huì)議員のほかは黨員など黨の関係者だけ。全有権者が投票できる米國の大統(tǒng)領(lǐng)選挙とは、國民の関心や熱気という點(diǎn)で違いが出るのはやむを得ない。

良く知られているように、ハリス氏はジャマイカ出身（アフリカ系）の経済學(xué)者の父親と、インド出身の科學(xué)者の母親の間に生まれた。その意味ではアフリカ系とも、インド系とも言える。アメリカの大統(tǒng)領(lǐng)は長く白人男性に限られていたが、2009年（選挙は08年）にアフリカ系のバラク?オバマ氏が就任してその伝統(tǒng)は破られた。もしハリス氏が當(dāng)選したら、初の女性大統(tǒng)領(lǐng)となるのはもちろん、初めてのインド系大統(tǒng)領(lǐng)になる。

インド系といえば、今年7月まで英國の首相を務(wù)めたリシ?スナク氏（保守黨）を思い出す。経済政策の失敗によりわずか1カ月半で退任したリズ?トラス氏の跡を襲って、22年10月に首相に就任。両親は共にインド系で、英國初の非白人首相となった。今夏の総選挙で保守黨が大敗したため1年半余りの在任にとどまったが、長く英國の植民地だったインドから首相が生まれたのは畫期的な出來事と言っていいだろう。そして、もし米國でハリス氏が當(dāng)選したら、アングロサクソンの二大大國である米國と英國にインド系のトップが生まれることになる。

トランプ氏のルール破り

ただ、インド系だからこその理由で、ハリス氏の資質(zhì)を疑問視する向きが一部にあるという。ご承知のように、インドにはカーストと呼ばれる身分制度が存在する。バラモン（司祭）、クシャトリア（王侯?士族）、ヴァイシャ（庶民）、シュードラ（隷屬民）の四つに分かれているが、ハリス氏の母親は最上位のバラモン階級(jí)の出身。したがってハリス氏もバラモン階級(jí)の意識(shí)や環(huán)境のもとで育ったため、「上から目線」が目立ち、一般人を見下したり、庶民感情に無頓著だったりするという。

私はこの指摘が正當(dāng)なものかどうかは分からない。しかし、ハリス氏の資質(zhì)が疑問視されるなら、トランプ氏はどうなのか。大統(tǒng)領(lǐng)経験者で初めて複數(shù)の罪狀で起訴され、不倫口止め事件では有罪判決も受けた事実についてはとりあえず橫に置いておく。私が何より危機(jī)感を覚えるのは、彼が民主主義のルールを守ろうとしない點(diǎn)だ。

4年前の大統(tǒng)領(lǐng)選、ジョージア州でジョー?バイデン氏に僅差で敗れたトランプ氏（當(dāng)時(shí)は大統(tǒng)領(lǐng)）は、敗北を認(rèn)めずに州務(wù)長官に電話して投票結(jié)果を覆すよう求めたと伝えられる。また、上院議長でもあるマイク?ペンス副大統(tǒng)領(lǐng)（當(dāng)時(shí)）に、バイデン氏の勝利を認(rèn)めないよう圧力をかけた。さらに21年1月6日には、「選挙結(jié)果を盜まれた。議事堂へ行こう」などと支持者をあおり立て、國會(huì)議事堂襲撃という前代未聞の大事件を引き起こした。

選挙結(jié)果の尊重は、民主主義の基本中の基本というべきルールだろう。それを平気で破ろうとするトランプ氏がまたも共和黨の候補(bǔ)になったことが、私には信じられない。巖盤支持層と言われる白人労働者層はともかく、米國の知識(shí)人と呼ばれる人たちの一部も、そうしたルール破りを不問に付している事実は全く理解できない。それとも、私の民主主義への理解が間違っているのだろうか。

映畫「シビル?ウォー」が訴えるもの

そうした中、10月初めに気になるニュースが流れた。バイデン大統(tǒng)領(lǐng)が、「（選挙戦が）自由で公正なものになると確信しているが、平和的かどうかは分からない。トランプ氏のこれまでの発言や、前回の大統(tǒng)領(lǐng)選挙の結(jié)果が気に入らなかったときの発言は非常に危険だ」と語ったという（ワシントン4日発ロイター電）。意訳すれば、トランプ氏が敗れた場(chǎng)合、4年前のように選挙結(jié)果を覆すよう畫策したり、國會(huì)議事堂襲撃事件のような暴動(dòng)をあおったりする可能性があるということだろう。もちろんバイデン氏は、ハリス氏の援護(hù)射撃の一環(huán)としてトランプ氏を批判しているわけで、多分に政治的発言だが、現(xiàn)職大統(tǒng)領(lǐng)が大統(tǒng)領(lǐng)選を前にルール破りへの懸念を公言するというのは異常だ。

10月4日に日本で封切られた映畫「シビル?ウォー　アメリカ最後の日」を鑑賞した。米國で半年前に公開された映畫が、日本ではなぜ大統(tǒng)領(lǐng)選直前に封切られたのかはよく分からないが、カリフォルニア州とテキサス州が同盟して連邦政府と戦うという構(gòu)図は現(xiàn)実的とは言い難く、いかにもフィクションという感じがする。しかし、それは大した問題ではない。この作品が訴えるのは、現(xiàn)実の米國で社會(huì)の分?jǐn)啶羁袒筏皮辍ⅳ饯欷┝Δ涡惺工税k展する危険性が排除できないという點(diǎn)だろう。

同盟軍（映畫では「西部勢(shì)力」と呼ばれる）と連邦軍の戦いの描寫は生々しく、観客は自分が銃撃戦に巻き込まれたような錯(cuò)覚を覚える。ネタバレになるので詳しくは書けないが、アジア系のジャーナリストが射殺されるシーンは衝撃的だ。そして最後は、首都ワシントンで戦車や裝甲車を動(dòng)員した激しい市街戦が展開される。

今年の大統(tǒng)領(lǐng)選後、この映畫のような內(nèi)戦が起きることはないだろう。しかし、たとえ小規(guī)模であっても、4年前のように選挙結(jié)果を覆そうとしたり、暴力に訴えたりする場(chǎng)面は見たくない。それは民主主義への信頼を低下させ、世界的に民主主義勢(shì)力の退潮を招きかねないためだ。選挙が平和的に行われ、どちらが勝とうとも秩序だった形で新大統(tǒng)領(lǐng)が就任することを願(yuàn)うばかりだ。

■筆者プロフィール：長田浩一

1979年時(shí)事通信社入社。チューリヒ、フランクフルト特派員、経済部長などを歴任?，F(xiàn)在は文章を寄稿したり、地元自治體の市民大學(xué)で講師を務(wù)めたりの毎日。趣味はサッカー観戦、60歳で始めたジャズピアノ。中國との縁は深くはないが、初めて足を踏み入れた外國の地は北京空港でした。