八牧浩行 2014年11月10日(月) 17時44分
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10日、安倍晉三首相は中國の習(xí)近平國家主席と北京の人民大會堂で25分間會談した。両首脳は日中間の関係改善を目指すことで一致。尖閣諸島をめぐる対立や、安部首相の靖國神社參拝などで冷え込んだ日中関係を改善する契機になろう。寫真は北京?人民大會議堂。
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2014年11月10日、安倍晉三首相は中國の習(xí)近平國家主席と北京の人民大會堂で25分間會談した。両首脳は日中間の関係改善を目指すことで一致。尖閣諸島をめぐる対立や、安部首相の靖國神社參拝などで冷え込んだ日中関係を改善する契機になると期待される。7日両政府間で取り決めた「日中政府合意文書」が基になっているが、焦點の尖閣問題や靖國參拝問題では玉蟲色の感は否めない。雙方が自らの解釈にこだわれば、新たな火種に発展する懸念もありそうだ。
【その他の寫真】
首脳會談で安倍首相は「中國の平和的発展は好機であり、世界第2、第3の経済大國として協(xié)力し、地域の平和と繁栄に向けて両國で責(zé)任を果たしていきたい」と表明?!鸽O國同士、個別の問題はあるが、全般的な関係を損なうことは避けるべきだ」と関係改善を呼びかけた。習(xí)氏は「戦略的互恵関係に従って日中関係を発展させていきたい」と言明?!钙胶蛧窑趣筏皮蔚坤驓iんでほしい」と求めた上で、「今後も関係改善のための努力をしていく」と答えた。
歴史認(rèn)識問題を巡っては、習(xí)氏が「中國13億人の國民の感情の問題だ」と強調(diào)、首相が靖國神社參拝を控えるよう暗に求めたという。習(xí)氏は「歴史を直視して未來に向かうことが重要だ」と強調(diào)。植民地支配と侵略を謝罪した「村山談話」の継承を求め、首相は「安倍內(nèi)閣においても歴代內(nèi)閣の歴史認(rèn)識を引き継いでいる」と応じた。
共同聲明や共同記者會見は開かれなかったため、日中政府合意文書が今後に大きな意味を持つが、外交文書特有の、どちらにも都合よくとれるあいまいな形となっている。特に中國側(cè)が首脳會談開催の條件としていた、首相が靖國參拝を控えることの確認(rèn)と尖閣諸島を巡る係爭が存在することーの2點(2項目目と3項目目)については、きわめて微妙な言い回しだ。
◆日本側(cè)は「フリーハンドを確?!?/p>
日中政府合意文書(日本語版)は以下の4點である。
一、「雙方は、日中間の4つの基本文書の諸原則と精神を順守し、日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認(rèn)した」
4つの基本文書とは(1)1972年日中共同聲明(田中角栄首相、周恩來首相=國交正?;瘯r)(2)78年日中平和友好條約(主権?領(lǐng)土保全などの相互尊重などを確認(rèn))(3)98年日中共同宣言(江沢民主席來日?平和と発展のための友好協(xié)力パートナーシップ構(gòu)築)(4)2008年日中共同聲明(「戦略的互恵関係」推進で合意)―のこと。このうち、「戦略的互恵関係」は安倍首相が第一次內(nèi)閣時に初の訪問國として北京に行き、合意への道筋をつけたもので、安倍首相の思い入れは強い。
二、「雙方は、歴史を直視し、未來に向かうという精神に従い、両國関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認(rèn)識の一致をみた」
首相の靖國參拝を抑止したい中國とフリーハンドを保ちたい日本のぎりぎりの妥協(xié)の産物。「靖國」の言葉は使用しないものの「政治的困難」と置き換え、「克服することで若干の認(rèn)識の一致を見た」との表現(xiàn)で抑止されるとの意向をにじませた。日本側(cè)は「若干の」は極めて狹い範(fàn)囲である、として一致しない點が多かったことを表し、フリーハンドは確保されたとの判斷だ。
三、「雙方は、尖閣諸島など東シナ海の海域において近年、緊張狀態(tài)が生じていることについて異なる見解を有していると認(rèn)識し、対話と協(xié)議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構(gòu)築し、不測の事態(tài)の発生を回避することで意見の一致をみた?!?/p>
尖閣諸島を巡る領(lǐng)有権について日本政府は「歴史的にも國際法的にもわが國固有の領(lǐng)土であり、領(lǐng)有権問題は存在しない」と繰り返してきたが、文書には「近年、緊張狀態(tài)が生じていることについて異なる見解を有していると認(rèn)識」と記され、対立があることを認(rèn)めるような內(nèi)容となった。日本側(cè)は尖閣を巡る「異なる見解」が「緊張狀態(tài)が生じている」にかかっていると指摘するが、中國側(cè)は尖閣問題で日本が初めて歩み寄ったと評価している?!讣忾w」の具體名を中國が盛り込むことを強く要求したとされ、この項目では中國側(cè)が都合よく解釈できる余地を殘した。
尖閣問題についてトウ小平氏は將來の対立を恐れて棚上げとしたが、日中両國はその対立と軍事衝突の危機に直面して問題を「解決しない解決」、すなわち「先送り」とした。首脳會談では「先送り」を関係改善の糸口とするという絶妙な結(jié)果が導(dǎo)かれた。安倍首相と習(xí)主席が係爭回避でぎりぎりの選択をしたことになる。
四、「雙方は、さまざまな多國間?2國間のチャンネルを活用して、政治?外交?安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構(gòu)築に努めることにつき意見の一致をみた」
この項目は雙方が一致できる當(dāng)然の文言が盛り込まれ、首脳會談でも再確認(rèn)された。
4項目の合意文書の日本語版と中國語版には、同じ內(nèi)容を語感の違う言葉で表現(xiàn)している部分がある。両政府は合意を優(yōu)先し、あえて文書に雙方が都合良く解釈できる余地を殘したようだ。これは日米間などの外交文書によくあることで「外交修辭文學(xué)」とも言われている。
◆中國各紙は「譲歩勝ち取る」
実際、8日付の中國主要紙を見ると、共産黨機関紙の人民日報は、合意文書について「2國の関係を良好な発展の軌道に戻すために必要な一歩だ」と評価する解説記事を掲載。合意の解釈には日本側(cè)と差があり、日中両政府が「初めて釣魚島問題を文字で明確なコンセンサスにした」との意義を指摘。國際情報紙、環(huán)球時報は社説で「靖國神社には言及していないが、『政治的困難を克服する』(との合意)は明らかに安倍首相の參拝を束縛する」と主張した。両紙とも領(lǐng)土と歴史認(rèn)識の雙方で中國が譲歩を勝ち取ったとの認(rèn)識を示している。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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