「寫真はドキュメンタリーとアートの中間でありたい」と考える寫真作家?珈琲海岸（カーフェイハイアン）は、「ドキュメンタリーの記録性を信じない」「アートにつきものの作為と苦悶を好まない」という理由で、寫真の持つ効能をどちらかに絞ることを拒否している。そんな彼が発表した連作「魔界」には、どのようなメッセージが込められているのか？

身の引き締まるような清冽な冷気を感じさせる、北國(guó)の自然を?qū)懁筏匡L(fēng)景。舞臺(tái)となっているのは中國(guó)北部の聖山?長(zhǎng)白山のふもとに流れる［女乃］頭河。清朝を興した愛新覚羅家の始祖を産んだ仙女の母乳が川になったとの伝説がある美しい河川だ。

作者はこの川を魔界と呼んでいる。毎年11月を過ぎ、気溫が零下20℃を下回るころ、川の両岸は真っ白な樹氷に囲まれる。早朝になると一帯は霧に覆われ、川面からは立ち枯れの木々が覗き、神秘的であるとともに妖しげな空気を放つ。しかし、「魔界」という呼び名にはもうひとつ理由がある。この風(fēng)景が決して自然によって形作られたものではなく、人間の所業(yè)によるものだからだ。

この河の朝霧は、上流にある火力発電所から流れてきた熱水から発生したもので、川面に立つ枯れ木は人間による伐採(cǎi)の痕跡、あるいは環(huán)境の変化によって枯れてしまったものである。川の近くには不動(dòng)産開発プロジェクトが進(jìn)行中であり、數(shù)年後にはこの“魔界”の風(fēng)景も消えゆく運(yùn)命にある?！改Ы纭工趣いΡ眍}には、自然のもたらす神秘的かつ霊的な風(fēng)景と、人類の愚行に対する風(fēng)刺の二重の意味が込められているのだ。（文/山上仁奈）

●珈琲海岸（カーフェイハイアン）

中國(guó)のフリーカメラマン。5歳で暗室での現(xiàn)像作業(yè)に觸れ、失敗に終わるも、30代で一眼レフでの撮影を正式に始める。寫真愛好家サイトや自身のホームページで発表する作品が人気を集めている。思考や理性ではなくインスピレーションを重視しており、作品の解釈も見る人それぞれに任せるスタンスだとしている。代表作に「魔界」「迷境」「色と情感」など。