梶田：確かに21世紀(jì)になって、日本人のノーベル賞受賞者が多く生まれています。ただ、そのほとんどの方の研究は20世紀(jì)の、1980年代とか90年代に行われたものだと思います。あるいはもうちょっと前かもしれません。20世紀(jì)の後半は、日本が割と経済的に余裕ができて、研究者も余裕を持って、自由にのびのびと研究ができた時代だったのではないかと思います。ノーベル賞受賞に結(jié)び付くような、一定の成果につなげるためには、長年の地道な研究が不可欠ですが、私の研究生活を振り返ってみても、それが出來た時代でした。

しかし、殘念ながら、日本は21世紀(jì)になって、社會情勢を反映してか、無駄を排除しようという雰囲気が大學(xué)にも入り込んできました。日本では國立大學(xué)が法人化された2004年から2017年までの間に、大學(xué)の運(yùn)営のための基盤的経費(fèi)である運(yùn)営費(fèi)交付金が大幅に削減されています。しかも、日本政府の掛け聲としては、大學(xué)を競爭的な環(huán)境に置いて、それぞれの大學(xué)を競わせることによって成果がより出てくるだろうという、そういう考えに基づく政策をとっているようです。

その結(jié)果、研究者や大學(xué)にいる人間に余裕がなくなり、あまり時間をかけるような研究ができなくなってきています。ですから、今後は、大きい科學(xué)的なブレークスルーはなかなか難しくなり、これまでのようにノーベル賞受賞者を輩出するのは難しくなると思います。

＜日中科學(xué)技術(shù)交流の未來＞

――中國の研究開発のレベルは、経済の発展とともに大きく変わって、研究開発費(fèi)もアメリカに次いで世界第2位になっています。研究者の數(shù)はアメリカを抜いて世界一です。日本と中國の科學(xué)技術(shù)の現(xiàn)狀について、どう考えておられますか。

梶田：おっしゃるとおりで、やはり科學(xué)技術(shù)を発展させるためには、それなりの資金が必要であり、これは殘念ながら避けられない現(xiàn)実だと思います。

中國ですが、科學(xué)技術(shù)に対するお金のかけ方がすごいので、本當(dāng)に驚いています。その規(guī)模は2000年を100としたとき、2015年には10倍以上です。韓國も474と5倍近くですが、日本は106と現(xiàn)狀維持のままです。

日本では、國としてかける研究開発予算が増えていないということは、基礎(chǔ)的な研究あるいは開発で、近年はそれほどいい成績を殘せていないということになると思います。それに比べて中國の場合、研究全體については、論文數(shù)で見てもすごいです。私がやってきたニュートリノ研究でも、中國の近年の活躍には目覚ましいものがあります。

――日本が、現(xiàn)在の中國と科學(xué)技術(shù)協(xié)力を行う必要性を、先生はどう考えておられますか。

梶田：今後は、やはり中國が科學(xué)技術(shù)において重要な國になっていきますので、恐らく日本と中國の科學(xué)技術(shù)の協(xié)力は、これまで以上に強(qiáng)くなるのではないかと思います。

私自身は、スーパーカミオカンデ（1996年稼働）でニュートリノ研究をやってきましたけれど、そこには中國の方にも參加してもらっています。それから今、「重力波」という分野で、新たな裝置「KAGRA」（大型低溫重力波望遠(yuǎn)鏡）を、同じ神岡の地につくっていますが、そこにも中國の複數(shù)の大學(xué)から研究者に參加していただいています。そういうふうに、以前も今も一緒に研究をやっています。日中間での科學(xué)技術(shù)交流は、このまま順調(diào)に進(jìn)んでいくのではないかと思います。

つまり、私たちの分野で言えば、「國際競爭」ではなく「國際協(xié)力」をしなければ次の段階まで進(jìn)めないということがあります。例えば、「KAGRA」は世界トップクラスの重力波観測裝置ですが、こうした施設(shè)は地球上の離れた場所に3臺以上あるのが理想的なのです。そのため、KAGRAは東アジアの施設(shè)として、東アジアの研究者を中心として國際協(xié)力で研究を進(jìn)めるべきです。

――今年の6月、中國から習(xí)近平國家主席が來日する予定ですが、彼が就任後、何度も強(qiáng)調(diào)している言葉が「イノベーション」です。

梶田：習(xí)主席の來日によって、日中の関係が強(qiáng)くなるというのは素晴らしいことです。また、「イノベーション」を強(qiáng)調(diào)され、実際に中國ではどんどんイノベーションが起こっているのは本當(dāng)に素晴らしいことだと思います。（提供/人民日報海外版日本月刊）