昨年2月3日には、河北省ケイ臺(tái)市（ケイ＝刑のへんにおおざと）巨鹿県の三昌スキー場(chǎng)でコースの崩落事故が発生し、5人が負(fù)傷したが、巨鹿県安全生産監(jiān)督管理局が調(diào)査したところ、そのスキー場(chǎng)は開(kāi)業(yè)したばかりで、建設(shè)?運(yùn)営に関する手続きを何ひとつ済ませていなかった。事故が発生したコースも、足場(chǎng)を組んだだけの間に合わせのものだったことが判明している。

【安全対策と救助體制の立ち遅れも】

胡楊さんにとって不幸中の幸いだったのは、コースの端から數(shù)十センチ手前で體の回転が停止したことだ。もう少し勢(shì)いが強(qiáng)ければ、コースから飛び出して、7、8メートル下まで転落していただろう。

だが、誰(shuí)もが彼のように幸運(yùn)なわけではない。太舞スキー場(chǎng)で事故に遭った10歳の男児の場(chǎng)合、発見(jiàn)時(shí)にはコース右側(cè)の崖下に倒れていた。のちに、子どもの父親である関さんはネット上で、スキー場(chǎng)に潛むさまざまな危険性を糾弾する文章を発表した。

なかでも最も関心を集めたのが防護(hù)ネットの設(shè)置についてだ。2005年公布、2013年改訂の「中國(guó)スキー場(chǎng)管理規(guī)範(fàn)」第28條は、「危険源が明らかに露出する?yún)^(qū)域」および「コース脇が急峻な地形となっている?yún)^(qū)域」にはネットを取り付けなければならず、「ネットの高さは1．5?2メートルとすること、通常オレンジ色とし、支柱は弾力性があること、ネットと障害物との間に一定の安全距離を設(shè)けること」と規(guī)定している。

関さんは「息子が事故を起こした場(chǎng)所は地勢(shì)が険しく、崖下にはごつごつした石や木片などがむき出しになっていたが、スキー場(chǎng)はコース両側(cè)にネットを設(shè)置せず、鉄骨と木材でできた、衝撃を緩和できない柵しか取り付けていなかった。柵の金屬支柱に衝突すれば、重傷を負(fù)いかねない。しかも、柵の下側(cè)と雪面との間に1メートルも隙間があり、事故後の現(xiàn)場(chǎng)検証で、息子はこの隙間からコースを飛び出し、崖下に墜落したことがわかった」と指摘する。

コース両側(cè)に防護(hù)ネットを取り付けるべきかどうかについては、業(yè)界內(nèi)でも議論が存在する?！缸匀护尉坝Qを臺(tái)無(wú)しにしてしまうので、必要以上のネットは設(shè)置すべきでない」「どこもかしこも防護(hù)ネットで隔離しなければならないというのは、自然に親しむというこのスポーツ本來(lái)の意義と合致しない」とする意見(jiàn)が一方ではある。

他方、「中國(guó)ではスキーはまだ新興スポーツで、滑る人もその時(shí)一回かぎりの人や初心者が中心。技術(shù)レベルも高くない。コースやゲレンデ設(shè)計(jì)ではそうしたことを考慮すべきであり、安全に配慮すればネットは必要」という意見(jiàn)もある。

議論の分かれるところだが、相次ぐ事故の発生を受け、河北省體育局は2017年2月、「河北省スキー場(chǎng)安全管理規(guī)範(fàn)（試行）」を打ち出した?，F(xiàn)在、崇禮の各スキー場(chǎng)は規(guī)定に沿って區(qū)域に応じたネットを設(shè)置、カバー率はほぼ9割に達(dá)しており、一部危険區(qū)域では二重に取り付けられている。

2017年10月の「中國(guó)スキー場(chǎng)管理規(guī)範(fàn)」の二次改訂では、ネット設(shè)置を強(qiáng)制的な義務(wù)とはしていないものの、「ネットはスキーヤーの保護(hù)にきわめて重要であり、スキー場(chǎng)は実況に照らし、設(shè)置をしなければならない」との文言が追加された。また、ネットを取り付ける危険區(qū)域についての提言も付け加えられている。

問(wèn)題は事故防止の面以外にも存在する。取材中しばしば耳にしたのは、國(guó)內(nèi)のスキー場(chǎng)が救助活動(dòng)の面で海外に比べ大きく立ち遅れているという聲だ。

中國(guó)では、規(guī)定に従って各スキー場(chǎng)がパトロール救助隊(duì)を配備しているが、統(tǒng)一された基準(zhǔn)や運(yùn)用規(guī)範(fàn)がないため、救助水準(zhǔn)にばらつきがある。太舞スキー場(chǎng)の事故では、関さんはスキー場(chǎng)の救助方法に重大な問(wèn)題があったとして、こう訴えている。「息子は衝撃でヘルメットが壊れ、頭頸部に重傷を負(fù)っていた。このような負(fù)傷者を救助する場(chǎng)合、まず頭頸部を固定してから移動(dòng)させるべきなのに、今回の救助では必要な固定措置が採(cǎi)られず、そのままエアボートに載せられ、延々とコースを滑って下山した。この間に揺すぶられたことで二次損傷を引き起こした可能性が高い。発見(jiàn)された當(dāng)初、息子は呼吸もあり、痛みを訴えることもできていたが、麓で待つ救急車に到著したときには、すでに心肺停止?fàn)顟B(tài)だった」。胡楊さんが救助されたときの狀況も同様で、固定や応急措置はおこなわれなかったという。

【インストラクターの処遇改善と技術(shù)向上も急務(wù)】

スイスのスキー産業(yè)専門(mén)家で『國(guó)際スキー場(chǎng)レポート』の著者、ローラン?ヴァナ氏によれば、スキー場(chǎng)のハード面での安全対策はもちろん重要だが、「より肝心なのはスキーヤーへの教育だ」という。

しかし、大衆(zhòng)スポーツとしてのスキーの登場(chǎng)が比較的遅かった中國(guó)では、教育や訓(xùn)練を擔(dān)うはずのインストラクターが軽く扱われてきた。2013年1月に國(guó)家體育総局が「高危険性スポーツ種目経営許可管理弁法」を公布し、そのなかで初めてスキーを「危険性の高いスポーツ」として取り上げ、「経営者は経営期間中に規(guī)定數(shù)を下回らない社會(huì)體育指導(dǎo)員と救助員を配置するものとし、當(dāng)該職員には有資格者を登用しなければならない」と定めた。

北京市スキー協(xié)會(huì)の李暁鳴主席は、「厳密に言えば、それまではスキー場(chǎng)に対する管理規(guī)範(fàn)がなかった。2013年より、スキー場(chǎng)は5人以上の有資格インストラクターを備える場(chǎng)合にかぎり開(kāi)業(yè)できるとする明確な規(guī)定がようやくできた」と語(yǔ)る。

中國(guó)でスキーインストラクターになるには、「社會(huì)スキー指導(dǎo)員」の認(rèn)定資格を取得する必要がある。これは人力資源?社會(huì)保障部と國(guó)家體育総局が発行する就労資格証明書(shū)だが、「中途からその道に入った」インストラクターでも、數(shù)日間研修を受ければ試験に合格できる。