「権力闘爭」と言えばそれまでだが、習(xí)総書記の共産黨政権の存続に対する強(qiáng)い危機(jī)感の表れと理解することもできる。江元総書記は天安門事件をきっかけに中央政界入りしたわけだが、上海で活動していたために中央政界に強(qiáng)い基盤がなかった。そのため、かなり露骨な「利益誘導(dǎo)」で地位を固めた。その結(jié)果、江元総書記につながる人脈からは「腐敗問題」を起こす者が続出した。

胡錦濤前書記の最大の特徴は、開明的な傾向の強(qiáng)い中國共産主義青年団（共青団）の指導(dǎo)者を務(wù)めた経験のあることだ。胡前書記を中心とする人脈は「団派」などと呼ばれている。事務(wù)処理能力が抜群で、外交では強(qiáng)引な手法を控えるなどの傾向があった。問題は「迫力不足」で、胡錦濤政権に対しては「結(jié)局は何もやれなかった」との批判も発生した。江元総書記の一派ほど多くはないが「腐敗問題」を起こして失腳した人物もいる。

◆孫政才氏は重慶市書記を解任、レースから完全脫落か

先ほど、中央政治局非常務(wù)委員で60年代生まれの人物として、孫政才、胡春華両氏の名を挙げたが、孫氏はすでに「常務(wù)委員入り」のレースからは脫落したと見られている。7月15日までに、孫氏が重慶市委員會の書記を解任されたことが明らかになったからだ。孫氏の異動先は明らかにされておらず、「失腳」との見方が出た。一部メディアは、孫氏が「妻の腐敗に関連した」疑いのために北京市內(nèi)で取り調(diào)べを受けていると報(bào)じた。

重慶市委員會の書記は難しい立場だった。同市で2007年から共産黨委員會書記を務(wù)めた薄熙來受刑者は、2012年2月に失腳。罪狀は職権亂用だったが、背後には薄氏が習(xí)近平政権の発足を阻止しようとした権力闘爭があったと見られている。

その重慶市への赴任には當(dāng)初から「孫政才いじめ」との見方もあったほどだ。そして、中國共産黨中央は2016年ごろから、重慶市の共産黨幹部について薄熙來時(shí)代からの「思想の遺毒が殘っている」と複數(shù)回にわたり批判していた。孫氏の「次期政権へのレース」からの脫落は、習(xí)近平政権のシナリオ通りの感すらある。

◆習(xí)近平「子飼い」の陳敏爾氏がさらに浮上

孫氏の後任には、中國共産黨貴州省委員會書記だった陳敏爾氏が就任した。陳氏は1960年生まれで、習(xí)近平総書記の腹心の1人。2015年には貴州省委員會書記に就任していた。

陳氏の現(xiàn)在の黨內(nèi)地位は中央委員會委員で、孫政才氏や胡春華氏よりも1つ下だ。しかし次期政権?fù)?dān)當(dāng)者を目指すレースで、このことは本質(zhì)的な障害にはならない。5年に1度の黨大會で1段ずつ昇格し、定年制限で阻まれる前に「常務(wù)委員」の地位を獲得するのは極めて困難であり、実際には胡錦濤前総書記も習(xí)近平現(xiàn)総書記も中央委員會委員から「中央政治局非常務(wù)委員」を抜かして同常務(wù)委員に「飛び級」しているからだ。

したがって、陳敏爾氏が今年秋の黨大會で「次期政権の擔(dān)當(dāng)者」として中央政治局常務(wù)委員に就任する可能性はかなり高いと考えられる。

◆元ロケット科學(xué)者の張慶偉氏は「ポスト習(xí)近平」のダークホース

もう1人、注目すべき人物は、現(xiàn)在は中央委員會委員である張慶偉氏だ。張氏は元ロケット科學(xué)者で、中國の宇宙開発や恐らくミサイル技術(shù)の向上でも、最も大きな功績を殘した人物のひとりだ。2011年には政界に転じ、2012年1月から河北省長を務(wù)めた後、17年4月1日付で黒龍江省委員會書記に就任。6月には同省人民代表大會主任も兼任することになった。